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放課前

昨日は友達と学校を昼休みに抜け出した。私は腹痛、彼女は頭痛を装って。

遠くで学校のチャイムが鳴った時は2人で笑い出してしまった。彼女が今からタワレコ行っちゃおうよとかなんとか言ってた癖に所持金が200円だったから、家まで40分くらいかけて財布を取りにいった。ずっとくだらない話をした。彼女はガテン系のことをガーデニングが好きなムキムキの人たちだと思っていたらしい。まだ蝉がしつこく鳴いていて、あちこちに彼岸花が咲いていて、夢なんじゃないかなと思った。

彼女が家から持ってきたぶどうジュースとチョコケーキを食べながら駅まで戻った。そして電車を待っている時、彼女が買いたかったアルバムの発売が明日であったことがわかった。「もうほんならイオンとかでいいやろ」「プリクラ撮ろ」って言って改札を抜けた。また笑い出したくなった。彼女は駅に停めておいた自転車の鍵を家に忘れた。まだクラスメイトは授業を受けている。

一軍女子が誰1人といないプリクラコーナーは新鮮だった。猫背で歩く癖を今だけ治した。「どれがいいやろ〜」「ユメコイはバケモンになってまうしな」「全部500円もするやん!」と好き放題言いながら機種を選ぶ。2人でブース内のハート型の鏡で髪型を整えて、シャッターの合間合間に変顔とかしてキャッキャしながら撮った。落書きはあまりしないのがイケてるよねって空気感で、リップとか涙袋とかだけを丁寧に整えていく。爪をデコってるみたいな感覚だった。

ゲーセン前のソファーは何故か寝ている人たちで埋まっていた。「月見バーガーが食べたい!」と言い出した彼女とフードコートまで何故かゲラゲラ笑いながら向かう。マクドのメニューを渡すと「これは私が求めていたものじゃない!」と彼女が言ったので、次はロッテリアに向かう。ロッテリアにお目当てのバーガーがあったものの、もう熱が冷めてしまったようで「また今度にするわ〜」と彼女。こういう気分屋なところがほんっとに可愛らしい奴だなと思った。2人でなんとなく外に出て石の冷たいベンチに座った。

無言のまま流れていく時間も彼女となら苦痛ではない。なんとなく目線があったあと暫くそのままでいて笑い合った時、恋に落ちたのかと思った。全く私は異性愛者ではあるが、この文章は完全な彼女へのラブレターだ。雨が降ってきて、同じ制服の子たちがちらほらと見え始めた。ふたりきりの時間は終わった。帰りの電車の時間を調べる。次第に強まる雨の中、私の頼りない折り畳み傘で駅まで走った。

改札前には同じクラスの女の子たちがいた。私はいつも以上に猫背になる。「絶対サボったのばれたよね」と通り過ぎた後にコソコソ笑い合った。別にどうでもよかったのかもしれない。

「気をつけてね」「また近いうち四条いこ」「バイバイ」

愛おしい逃避行はあっという間だった。

私はヘッドフォンをつけて帰りの電車に乗った。私の街ではそれほど雨が降っていなかった。少しだけ、ほんの少しだけ3連休が嫌になった。

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