写真を撮ると記憶に残りにくい
写真を撮ると写真の記憶が頭に残りにくいという趣旨の論文があったのでメモ(1)。
2013年に行われた調査を見てみると,年間30億以上の写真が撮られており,そのうち500万枚がネット上にアップされています(2)。
写真は過去の出来事を思い出す,有効な手段であるとの認識が多くの人々の常識で(3,4),実際に写真を見ることで過去の出来事をよく思い出せますことが確認されています(5,6)。しかし,普通に観察した対象と写真に撮った対象の記憶に関して調べた実験では写真に収めた場合の方が詳細な記憶を思い出せないという結果が出ています(7)。
今回紹介する論文は見ているものを写真に撮ることで子奥に残りにくくなることを教えてくれます。
2018年のカリフォルニア大学のジュリア・ソアラーらが写真に収めることで記憶が減衰するのかについて調べるために実験を行いました。
実験の対象となったのは51名の大学生でした。
実験参加者はランダムに3つのグループに分け,PC上のに表示された画像を記憶してもらいました。その3つのグループは以下のような違いがありました。
<グループ1>
ただ画像を観察する
<グループ2>
カメラで画像を撮る
<グループ3>
カメラで画像を撮って,その後データを消す
ここではグループ間に画像の提示時間に違いが出ないように15秒という制限時間を設けています。最後に提示した画像の詳細に関するテストを受けてもらい,点数の差を比較しました。また実験参加者に写真を撮る行為の目的についての質問紙にも答えてもらっています。
実験の結果,記憶課題の成績が①ただ画像を観察する場合に成績が高く,他の②写真で画像を撮る場合と③写真で画像を撮って、その後消す場合では成績には違いがありませんでした。
また実験参加者の52%が写真は過去の記憶を思い出す目的として,記憶を助けるために写真を撮っていると回答しました。
この結果から写真を撮る行為は見る対象からカメラへ注意が移行し、その物体の記憶を思い出しにくくなることが分かります。また特筆すべきことはら写真を撮る行為自体が記憶に作用し,写真が残っており後で参照できる状況が記憶に関連しているわけではないということです。
この記憶の減衰した現象はカメラに写真に収めることで記憶に定着させることが出来た感覚を引き起こし,思い出すことが難しくなったのではないのかと考えられています。
(1)Soares, J. S., & Storm, B. C. (2018). Forget in a flash: A further investigation of the phototakingimpairment effect. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 7(1), 154–160.
(2)Schwartz, H. (2013). How many photos have been taken ever?
(3)Chalfen, R. (1998). Family photograph appreciation: Dynamics of medium, interpretation and memory. Communication & Cognition, 31, 161–178.
(4)Harrison, B. (2002). Photographic visions and narrative inquiry. Narrative Inquiry, 12, 87–111.
(5)Deocampo, J., & Hudson, J. (2003). Reinstatement of 2yearolds’ event memory using photographs. Memory, 11, 13–25
(6)Hudson, J. A., & Fivush, R. (1991). As time goes by: Sixth graders remember a kindergarten experience. Applied Cognitive Psychology, 5, 347–360.
(7)Henkel L. A. (2014). Pointandshoot memories: the influence of taking photos on memory for a museum tour. Psychological science, 25(2), 396–402.
■天才科学者はこう考える 読むだけで頭がよくなる151の視点/ジョン・ブロックマン (編集), 夏目 大 (翻訳), 花塚 恵 (翻訳)
■超一流になるのは才能か努力か?/アンダース エリクソン (著), ロバート プール (著), Anders Ericsson (原著), Robert Pool (原著), 土方 奈美 (翻訳)
■最高の脳で働く方法 Your Brain at Work/デイビッド・ロック (著)
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