夢にまでみた頭料理!-クエをまるごと食べた会-
何を隠そう、俺が食品ロス問題に興味を持ったキッカケはこの『頭料理』だ。
高校生の頃にこの料理を知り
「知らないで捨ててる食材を使った料理ってたくさんあるのでは??」
と思い、今ではそれが生業になっている。
・頭料理とは
この料理を知っている人はごく少数だと思うので説明しますと
大分県竹田市に伝わる郷土料理で、ハタやクエなど大型の白身魚の内臓や皮やアラ、エラなど捨てられがちな部位をメインにした料理です。
各部位ごとに処理が異なりますが、基本的には茹でて三杯酢やポン酢で食べるのが主流。
焼き肉で言うホルモンの魚バージョン的な感じ。
海から遠い竹田において魚は超貴重な食べ物。
しかも身の部分はお殿様やら偉い人の方へ行ってしまう。
そこで考え出されたのが残った内臓やアラを美味しく食べる頭料理だ。
いわゆる庶民だけが知る贅沢品。
魚の内臓で食べれるのは、肝や胃袋、卵、白子くらいだと思っていたが、こんなに細かく種類分けされててエラまで食べると知ったときの衝撃は忘れられない。
大袈裟かもしれないけど、その後の人生を変えた料理だと思う。
・巡り会うまでの長い年月。
が、しかし、しかしだ。
頭料理が食べられるお店は大分県竹田市の極一部だし、一人前では注文ができない事がほとんどだし、魚の仕入れ次第では食べれないし……
わざわざそれを食べる為に行けるほどの余裕は無かったし
クエを買おうにもそんな高級魚をまるっと買うことはかなりハードルが高いし、内臓を使うとなると鮮度や〆などもかなり重要になってくるので、半端な物ではいけないのだ。。。
そんなこんなで何年間も食べる機会が無く半ば諦めて、大分に行く機会あったらいいな~くらいに思っていた。
秋のある日、前に一度食事をしたペルー料理をやっている友人の諸田さんから連絡があった。
「クエを一匹買うんだけど、頭料理してくれない?」という嬉しい誘い。
悶えるほど嬉しい。(力強くガッツポーズ)
色んな所で「頭料理したい!!」って言っててよかった。
その友人がクエを買うに至ったまでの説明をするともう1本noteを書かなきゃいけなそうなので省略しますが、俺が繋いだとある寿司職人との縁だそう。
詳しくは彼がいつかどこかで発信してくれるでしょう。
ちなみにクエは凄腕のモリ付き漁師さんから直送のめちゃめちゃ良い物でした。
・クエの下処理
クエが届いたのは数日前、料理は当日にやる予定なのでそれまで持つように処理をお願いした。
重さは約3.5キロ。普通の魚にしちゃあデカいが、クエにしたらかなり小型な方。
大体10歳ってところかな。
こんなデカいまな板を所有してる家庭はそうそう無い…
皮を残してウロコを削ぐ。
すき引きという仕事。
カレイやヒラメ、ブリなんかもこのやり方をする。
素っ裸。
頭と本体はこの状態でしっかり拭いてキッチンペーパー等で包んでしっかり冷やして保存。
冷蔵庫だけじゃなくて氷を当てるのが大切。
魚自体がもの凄くよいのでしっかり保存すればかなり長持ちする。
流石に凄腕のモリ付き漁師さん。圧巻。
後日談になるが、内臓が入ったままでもしっかり冷やしておけば1週間程度持つらしい…
どんだけ〆と処理の質が高いんだ……
・内臓などの下処理
ご存じのように魚において身以外の部位というのは足が速い。
だから内臓類は冷凍して貰った。
ウロコはすき引きしたのに塩と酒を振って保存。
エラは外して、ビラビラの先を少しだけ切って
水に晒して血を抜く。
胃袋は開いて中をこそげてよく洗い塩を振る。
幽門垂は血を抜いて塩を振る。
腸は開いて中身をこそげて洗い塩を振る。
肝臓は血管を外し血抜きし、あん肝的な調理。
包んで蒸しあげ。
ってとこまで諸田さんにやっていただいた。
すっげ~大変だと思う、ありがとうございます。
もっとデカいサイズならば内臓の1個1個が大きくて分かりやすいのだけど、4キロだと細々とした処理になって大変。
・当日の調理アレコレ
いよいよ当日。
最初は頭の処理から。
皮や唇を削ぎ、頭肉を切り取り、目玉を取り出し、ホホ肉を切り出し、、
肉のついてるカマや頭肉は唐揚げ用に大ぶりに切る。
短くて小回りの効く柳刃包丁が役に立った~
正身は半分を鍋、半分を刺身
骨やアラで肉ががっつりついてるところは唐揚げ
変わった部位は頭料理
太い骨やアラや残りは出汁にと使い分け。
時間があれば骨せんべいなんかもやりたかった…
内臓類は各々茹でたり刻んだりする。
それに関しては後ほど。
二人で同時並行的に進めててもかなり時間がかかる。
ずっと興味があったとしてもやるのは初めてだからね。
・まずはお造りから
今回は諸田さんの家族や友人など合計9名。
食い切れるか不安なサイズでしたが、ちょうど食べきり。
料理は一品ずつ出すスタイルで
刺身→頭料理&手巻き寿司→唐揚げ→クエ鍋→雑炊、の順。
色々な味を楽しめるように、サッパリから少しずつコッテリにしていく。
まずは刺身から。
皮を引いた身、腹側と背側どっちも。
塩とカボスで食べたり、自家製のポン酢を合わせたりと。
歯応えが強くって旨味が濃くて、脂がねっとりしてて、最高だ~!!
フグ的な薄造りにしようと思ったのだが、脂が強くって切るのが大変だった。
お酒は紀土の純米大吟醸から。
うんめ~~~!!!!くはぁ~
この日はずっと日本酒。
色んな種類の美味いのが飲めて幸せでした。
・念願の頭料理
やっと本題。お待たせしました。
様々な部位を一皿に盛り込む。
分かりやすく部位の説明です。
今回は
背身、腹身、ほほ身、腹んぼ、皮身、えんがわ、胃袋、エラ、腸、肝、皮、唇、ウロコ、幽門垂、脳味噌。
で15種類に分けた。
もっと大型だと白子や真子などがはいってたり、皮や身の種類を細分化したりするみたいです。
焼き肉屋さんの牛みたいな種類分け。
・エラ
エラは血抜き後、骨のギリギリで切り外してサッと10秒ほど茹で氷水に落とす。
茹でるとクルッと縮んで綺麗なカール状、別名マツゲと呼ばれるのも納得。
コリコリした食感で、噛むほど旨味が出てくる。
エラってこんな美味いの!?ってなります。衝撃の味。
エラでこの旨味だと他の部位はどうなるんだ??と期待が高まる。
牛のセンマイ刺しに似た食感や味だけど違うんだよな~
エラの味としか言えない。気になる方は食べてみて。
ちなみに、アンコウやタラも食べれます。
鮮度と衛生管理に気をつけてね。
・皮身
刺身で皮を剥いだ部分をサッと茹でて刻んだ。
すき引き後の皮でも充分に食べ応えのあるモチモチ食感。
通常の白身魚は火を入れるとホロホロするのに、クエはモチモチするんです。
これが美味くってたまらない。
・胃袋
中身をこそげた胃袋はしっかり塩をしてから茹でる。
2分ほど茹でて冷水に落とす。
極薄に刻むのが美味かった。
ゴリッゴリのモッチモチ。
いつまでも噛んでいたい旨味爆弾。
これだけで酒がガンガンいけると大好評の部位。
牛ミノ的な旨味もありつつ、アワビのような潮の香りもする凄い部位。
・腸
手前のカボスに乗ってるのが腸。
サッと茹でたはずが崩れちまった…
網に乗せて一瞬茹でるくらいがよさそう。
口溶けのよいホルモン、脂がねっとり濃厚。
ただ、魚臭さは強いので通好みかも。
・肝臓
真ん中の丸い部位。
アルミで巻いてゆっくり蒸して貰った。
サイズが想像より小さかったけどうんまい。
あん肝より味が濃くてクセが強いけど、好き!!
・エンガワ
奥に見える身の部分。
三枚に卸した後の骨からこそげる。
ま、そんなエンガワのとれる魚じゃないからちょっとだけど。
エンガワ系はヒラメやカレイには敵わないな~美味いけど。
身だけでも正身、ホホ肉、腹んぼ、皮身、エンガワと種類が豊富。
・ホホ身&頭肉
好きな部位のひとつで、学生の頃からマグロの頭をよく買っていた。
脂のノリと筋肉の付き具合と柔らかさが絶妙。
モチモチしててしみじみ旨い。
・腹んぼ
腹骨の周りの肉で1番脂の乗っている部位。
コリコリとした食感と濃厚な旨味。
いかにも酒が進む美味さ。
この味の濃さならカボスで〆てもよかったかな~
・皮と唇の煮凝り
顔やカマ、あご裏などの皮を丁寧に削いで煮凝りに。
顔周りだけでも相当な皮があります。
刻みの皮と目玉を酒と水で炊き、ゼラチンを出す、煮詰まったらポン酢と千切り生姜で調味。
エラの裏の皮や唇は厚みがあるゼラチン質でプルプル。
皮だけなのに脂がしっかりだったからポン酢で味付けしたの大正解。
・脳味噌
ひとくちしか無い超貴重部位。
頭を割って掘り出す部分。
これは主催である諸田さんに食べて貰った。
トロや白子的な美味さだそう。。気になる。。
・全てを手巻き寿司
各部位も刺身もそのままで味わったらお次は手巻き寿司に。
好きな部位と野菜を一緒に巻いて味わう。
煮凝りを一緒に巻くとシャリの熱で柔らかくなって、絶妙な味付けになる。
これは良い。今後も使おう。
最初、手巻きにしたいんですって話を聞いたときは、海苔の香りに負けちゃわないか心配だったけど、このクエなら大丈夫。
もう存在感がしっかりいる。海苔にもポン酢にも負けてない。
色んな部位を合わせて挟む楽しさ、良いもんです。
腹が満たされていく~~
・アラとウロコの唐揚げ
漁師さんに直接聞いたオススメの食べ方が
「大袈裟に骨をつけて唐揚げにすんのがうめえ」だそうで
というのも、骨付きの状態で揚げると骨のおかげで身の縮みが防げるし、骨周りは旨いしで、最高なのだ。
奥が骨付きの唐揚げ。
右の白いのが身の唐揚げ。
手前がウロコの唐揚げ。
骨付きのは醤油と酒、身とウロコは塩と酒で味付け。
衣は片栗粉だけ。
シンプルが美味い。
身はもちろん美味いんだけど、骨付きがすんごい。
みんなが骨周りのスジまでしゃぶりつくから静かになったほどの美味さ。
カマ肉の部分が最高だった。こんな美味い唐揚げ知らない。
そして期待以上だったのがウロコ。
マジでやばい。コレと酒の往復が止まらん。
ひ~~~嬉しい悲鳴。
サクサクしたウロコの食感と、モチモチした皮の食感と旨味。
これが合わさって最高の酒のアテ。
ズルい味です。これだしてくれる飲み屋あったら通います。
ただ慣れないと揚げるのが難しい。
ウロコはすぐ焦げるけど、皮に火は入れたい。
程よい弱火加減でサクモチに仕上げたい。
理系兄弟との相性がよかった。
・王様のクエ鍋
クエと言えばやっぱり鍋ですよね。
キングオブ鍋魚。
言わずもがな過去一の鍋だった。
こっちは刺身とは違い皮付きで厚切り。
皮に切れ目を入れておくと食べやすい。
お出汁は、クエの骨やアラ、昆布、白菜の芯、ネギの根、椎茸の軸、人参のヘタなど。
正直煮出す時間が足りなかったけど、それでもめちゃめちゃ良い出汁。
甘くて濃くて染み渡る。
一口お出汁を飲むと
「くっはぁああ~」って声がでる。
ほろ酔いの状態に染みすぎる。心地よい濃厚さ。
驚いたのは身が煮崩れない事。
普通の白身は鍋にしたら崩れがちだけど、クエは火をいれすぎてもモチモチなんです!!なんで!?
どう食べても美味いのすんごい。
このお出汁と日本酒を1:1で合わせたのもヤバかった。
昇天。
白菜や椎茸もいつも以上に美味くなる。
特に出汁を吸った下仁田ネギが最高だった。
・〆は幽門垂まぜ雑炊
さて、鍋の〆は色々ありますが、こんだけ美味い出汁ならやっぱり雑炊ですよね。
ごはんをいれ、沸かしたら残ってたクエの身をぶつ切りでまぜ、溶き卵に日本酒を混ぜてふわっと回しいれる。
そして仕上げにネギと幽門垂。
この幽門垂ってのは胃と腸の間の内臓なんだけど、内臓脂肪がすんごくて、とろけるんです。
卵は半熟、幽門垂は半溶けの状態で頂く。
最高の〆でっせ。
こんな美味いのか?ってくらい最高でっせ。
幽門垂は少し臭みがあったので、ポン酢を少し垂らして。
あぁ、もう食べたい。。。美味かったなぁ、、、
これで食べきり、丸々一匹残さず食べました。
クエごちそうさま!!
ありがとよ。
・初冬の夜長に
食事の最後には手土産で持ってきてくださったロイヤルブルーティーのほうじ茶とTIMIのバスクチーズケーキ。
デザートまで完璧か!!極楽。
美味かったなぁ~
ほうじ茶ってなんだ?ってなった。
こういう気の利いた手土産をもっていける大人になりたいもんです。
お酒もたっくさん飲みました。
写真には無いけど錦鯉とやまとしずくも飲んだ。
白身魚の上品さに合うのもあれば、内臓系の強い味に合うしっかりしたのもあってふわふわ。
久しぶりに終電ダッシュした。。
改めて日本酒が好きだなぁと実感。幸せな時間でした!
・改めて頭料理。
頭料理は大分県竹田で食べられる。
が、提供している店は少ないうえに、少しずつ存在感が弱まってきている様に感じる。
本物の頭料理がいつまで食べられるのか分からないので、近いうちに大分まで行かなくては。
初めてが自分で作った物というのも悪くないが、やっぱり本物を食べてみたい。
そう思いません!?
と言うわけで、誰か一緒に大分まで旅をしませんか。一人じゃ注文できないのよ…
美味しい物巡りましょ。
あと誰か知っていたら、頭料理が食べれるオススメのお店を教えて下さいませ。
微力ながら俺が文化として受け継いでいきたい。
単純に頭料理を作るのも大事だけど、それ以上にその技術や考え方を応用して内臓やエラの美味さを楽しんだり、もったいない精神を料理に活かせたらいいな。
世界は広い、けど日本にもまだまだ知らない美味しい面白い料理がたくさんある。
その中には食品ロス削減のヒントになるものがこんこんと眠っているのかもしれない。
おしまい。
いつもありがとうございます。 書くの大好きだけどやっぱ大変だから、サポートして貰えると持続性が増します。