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#幻想小説
天地伝(てんちでん) 3-2
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二
登紀子が五つを迎えるころ、原因不明の発熱を起こした。
咳や鼻水などは出ないので、おそらく風邪の類ではないのだろうが、熱を出した時は、しばらく床に伏せってしまう。そのため、守役のわしは座敷を一日中、離れることができなかった。こんな時は、特に思う。人は弱い。
熱に浮かされている時の登紀子は、苦しそうだった。脂汗を額に浮かべ、息も絶え絶えに、目をうるませている。焦
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二
登紀子が五つを迎えるころ、原因不明の発熱を起こした。
咳や鼻水などは出ないので、おそらく風邪の類ではないのだろうが、熱を出した時は、しばらく床に伏せってしまう。そのため、守役のわしは座敷を一日中、離れることができなかった。こんな時は、特に思う。人は弱い。
熱に浮かされている時の登紀子は、苦しそうだった。脂汗を額に浮かべ、息も絶え絶えに、目をうるませている。焦