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【本要約】哲学名著の50冊が1冊でざっと学べる

前段

本note記事は、「哲学名著の50冊が1冊でざっと学べる」という書籍を要約したものです。本書は哲学分野で名著とされている書物の要点を、分かりやすく整理し、現代社会を生き抜くために役立つ教養を提供することを目的として作成されています。
本書で、哲学書一つ一つを丁寧に解説していないのは、それは存在さえ知ることが出来れば、後はインターネットや他の解説書などを読めば、知識として手に入るからとのことです。名著のはずなのに世に余り知られていない書物も紹介されているので、本書を読めばどんな哲学書があるのかを網羅的に知ることが出来ます。
しかし、網羅的にどんな哲学書があるかを知る前に、哲学史の全体的な概要を先に知っておいた方が頭に入ってきやすいと本note筆者は考えました。ですので、本書には記載されていませんが、哲学史の概要を筆者が調べたものを先に記述します。その上で本書の要約をお読みいただき、興味がある哲学書に関しては、ご自身で調べていただけたら幸いです。筆者も、これを入り口に興味のある哲学書を調べたり、時には整理したものを別のnoteで起稿してみようかと思っています。

ざっくり哲学史

哲学の誕生は今から約2600年くらい前。哲学が誕生する前までは様々な民族が多種多様な神話を信じていて、それらは矛盾しまくるという状況で、唯一正しいとされる説や神話はありませんでした。その中で異論を唱えた人物が「タレス」です。タレスは神話とかを只信じるのではなく、「ちゃんと考えよう」と唱えたのです。これが哲学の誕生です。タレスは世の中は全て水で出来ていると考えていたようですが、それは当時の社会には受け入れられませんでした。ただ、「世の中を合理的に考える」という試みは、タレスの死後も引き継がれることになりました。
その後、色んな説を唱える哲学者が続出しました。その中でも「デモクリトス」という哲学者は「この世は全て原子で出来ている」と唱えました。これはまさに科学的事実であり、あまりにも時代を超越した天才的な発言です。ただし、これもその時の社会では受け入れられませんでした。なぜなら、哲学者は続出しましたが、どの説も立証しようがないことが民衆にバレてしまったからです。その結果、「ソフィスト」と呼ばれる人達が誕生しました。ソフィストとは最初から正しいことを追求する気はなく、相手を論破することを目的とした人たちのことです。ソフィスト達の演説はとても上手だったので、民衆からも支持されていたとのことですが、それも「ソクラテス」によって、論破されてしまいます。
その方法は問答法というものです。問答法は、対話によって相手の矛盾・無知を自覚させつつ、より高次の認識、真理へと導いていく手法を指します。この考え方は哲学の基礎のようなものになります。その結果、ソクラテスは様々な人の反感を買ってしまい、殺されてしまうのでした。
そのソクラテスの思想を受け継いで、さらに昇華させたのが、ソクラテスの弟子であった「プラトン」です。プラトンは「この世は全て自分たちには見ることのできない存在である『イデア』によって作られている」と考えました。これをゲームの世界で例えて説明します。ゲームではキャラクターや世界観の全てはプログラムによって出来ています。このプログラムの存在はゲーム内のキャラクターは認知していません。しかし、確かにプログラムは存在しているのです。ゲーム内キャラクターにとってのイデアは、プログラムのことです。現代を生きる我々の世界も、我々が見ることが出来ないイデアによって作られているということで、哲学をすること、つまり、世の中を合理的に考えるということは、イデアについて探求することと、プラトンは考えたのです。後世の人が、「哲学の歴史はプラトンが言ったことにただ捕捉を入れてるだけのようなもの」と言ったくらい、哲学の歴史においてプラトンの考え方は重要とされています。
しかし、そのプラトンの哲学に匹敵するほどの哲学を生み出した人が、プラトンの弟子の「アリストテレス」です。アリストテレスは「様々なものをじっくりと見て観察すればこの世を知れる」と考えました。現代までに人間は観察をしたり実験をしたりしたことを、データとして記録して、学問を作ってきましたが、その方法を最初に定めた人がアリストテレスです。(当時の哲学を、倫理学、自然科学を始めとした学問として分類し、それらの体系を築いた業績から「万学の祖」とも呼ばれています)
しかし、ソクラテス、プラトン、アリストテレスの哲学も、「イエス・キリスト」の誕生によって進化が止まります。イエスキリストは「この世の全て神が創ったもの」と言い、この思想は歴史上最大級に世間に浸透していきました。キリスト教が布教したことで、哲学は一時、世の中から姿を消してしまいます。それから1000年ほど経った西暦1100年くらい、世の中の常識レベルというくらいキリスト教がヨーロッパで普及していましたが、一方アラビア地域で哲学が盛んになっており、それがヨーロッパに逆輸入される形で、じわじわと哲学が復活していきました。
それから500年ほど経った西暦1600年ころに、「デカルト」が現れました。デカルトはソクラテスの考えた問答法をありとあらゆるものに対して適用し、その結果「この世の中にあるものは、目に見えるものなどさえも含めて、全て嘘か本当か分からない。ただ、この自分の精神だけは嘘ではない、本物だ。この世は自分の精神を根源として出来ている」と考えました。このデカルトの考えを受けて、様々な哲学者が既存の哲学を進化させようとしましたが、根拠が良く分からない理論の飛躍した哲学が数多く誕生してしまいました。(西暦1600年代の哲学が全てそうではなく、本書でも紹介されているような名著も勿論ありますが)
その結果、「カント」が現れました。カントは「認識能力を超越した次元のことは、結局知りようがないので、考えるのを辞めろ。哲学が扱うべき範囲は人間の認識能力が扱える範囲だけだ」と言いました。それを受けて哲学の内容は、現実的で実践的なものとなっていきます。この理論によって哲学の雰囲気は大きく様変わりするので、哲学の歴史は「カント以前」と「カント以後」という言われ方をします。カントは大きな影響力がある哲学者として、名をはせましたが、カントが用意したのはこれからの哲学の舞台であり、実際に世界がどうなっているのかを考えるのは、カント以後の哲学者の仕事でした。いわば、これにより哲学の舞台は確立し、その舞台の上で哲学が取り扱う分野は、無限に広がりを見せることになります。カント以後の哲学は非常にリアリティがあるので、社会に対して並大抵ではない影響を直接的に与えることになりました。

下記から、「哲学名著の50冊が1冊でざっと学べる」で紹介されていた哲学書と、その要点です。本記事で紹介しているのは、著者が哲学書を要約したことをさらに要約した内容だけですので、ポイントだけを読んでも意味が分からないものもあると思いますが、興味ある哲学書があれば、ご自身で調べてもらえたらと思います。

第1章 そもそも哲学って何?
「哲学の誕生」と「神とは何か」を知る名著10冊

『ソクラテスの弁明』(紀元前4世紀)
著:ソクラテス/プラトン
ポイント:自分の「無知」を自覚することが、真の認識に至る道である

『国家』(紀元前4世紀)
著:プラトン
ポイント:国を統治する人物に必要なのは、実在する本質的なイデアの探求である

『形而上学』(紀元前4世紀)
著:アリストテレス
ポイント:形而上学は「存在論」と「神学」という2つの側面を持つ

『人生の短さについて』(49)
著:ルキウス・アンナエウス・セネカ
ポイント:人生が短いのではなく、時間の使い方を知れば人生は長くなる

『ギリシャ哲学者列伝』(3世紀頃)
著:ディオゲネス・ラエルティオス
ポイント:哲学者の個性を伝える逸話や奇抜な言行が、哲学への関心を喚起する

『告白』(397)
著:アウレリウス・アウグスティヌス
ポイント:人間は誰もが罪を犯すが、神はそれを許し、人間もまた回心できる

『プロスロギオン』(1077)
著:アンセルムス
ポイント:理解するために信じることを通じ、神が真に存在することを論証した

『然りと否』(12世紀)
著:ピエール・アベラール
ポイント:「然り」と「否」を両論併記し自由な議論を促す手法は現代でも通用する

『神学大全』(13世紀)
著:トマス・アクィナス
ポイント:「問い」から始まる議論を通じて、キリスト教とアリストテレス哲学を結び付けている

『痴愚神礼讃』(1511)
著:デジデリウス・エラスムス
ポイント:「愚かさこそが人間の本質」という視点からキリスト教と人間を深く洞察している

第2章 どうすれば正しい判断が出来るか?
「理性とは何か」が分かる名著10冊

『エセー』(1580)
著:ミシェル・ド・モンテーニュ
ポイント:モンテーニュは人間理性や判断などを徹底的に疑い、その疑いさえも疑った

『ノヴム・オルガヌム』(1620)
著:フランシス・ベーコン
ポイント:アリストテレスの演繹法に対して、ベーコンは帰納法を提唱し、近代科学の礎を築いた

『リヴァイアサン』(1651)
著:トマス・ホッブズ
ポイント:各人が自由を放棄することによって、各人から独立した強大な国家権力が生まれる

『方法序説』(1637)
著:ルネ・デカルト
ポイント:あらゆる知識を疑った末に行き着いたのが「われ思う、ゆれにわれあり」

『パンセ』(1670)
著:ブレーズ・パスカル
ポイント:人間は「自分は死刑囚である」ということから目を背け、他のことで気晴らしをしている

『エティカ』(1677)
著:バールーフ・デ・スピノザ
ポイント:デカルトの二元論に対し、スピノザは「神が唯一の実体」という一元論の立場をとった

『人間知性論』(1689)
著:ジョン・ロック
ポイント:プラトン以来の生得観念を否定し、心を白紙に例えることで経験論を確立した

『単子論』(1714)
著:ゴットフリート・ライプニッツ
ポイント:世界の見え方は認識主体の立場により異なり、、絶対的な世界認識はありえない

『人間本性論』(1739)
著:デイヴィッド・ヒューム
ポイント:ヒュームの「反理性主義」は、「人間は理性的動物」という当時の常識を否定した

『社会契約論』(1762)
著:ジャン・ジャック・ルソー
ポイント:個人の自由や財産のために社会契約が成立すると、「一般意思」の実現が優先される

第3章 この世の中をどう生きるべきか?
「世界」と「自分」の繋がりが見える名著10冊

『純粋理性批判』(1781)
著:イマヌエル・カント
ポイント:カントは「経験論」を認めつつも、その不備を「合理論」によって補完しようとした

『道徳および立法の諸原理序説』(1789)
著:ジェレミー・ベンサム
ポイント:社会的な善悪を客観的に評価するために考案されたのが「功利主義」である

『精神現象学』(1807)
著:ゲオルク・ヘーゲル
ポイント:難解な本書を理解するには「学の体系第一部」という出版背景を知ることが大切

『意思と表象としての世界』(1819)
著:アウトゥール・ショーベンハウアー
ポイント:意思の特徴は「盲目的であり、最終的な目標をもっていない」こと

『キリスト教の本質』(1841)
著:ルートヴィヒ・フォイエルバッハ
ポイント:「人間の本質」を取り戻すには、「愛」と「感覚」を基本とした人間学の構築が必要

『自由論』(1859)
著:ジョン・スチュアート・ミル
ポイント:他人に迷惑をかけなければ、自由に行動してもよいという現代の「自由」は、ミルに源流がある

『死に至る病』(1849)
著:セーレン・キルケゴール
ポイント:実存主義の原則は、人間を「関係」として捉え、それにどう関係するかを問題にすること

『資本論』(1867)
著:カール・マルクス
ポイント:資本主義以後の世界について、社会主義(共産主義)をイメージさせる未来社会像を描いている

『ツァラトゥストラ』(1885)
著:フリードリヒ・ニーチェ
ポイント:根本思想の「永遠回廊」思想と「権力への意志」を理解することが重要

『イデーン』(1913)
著:エトムント・フッサール
ポイント:「現象学的還元」によって普遍的な本質があらわになり、絶対的な認識を得ることが出来る

第4章 いったい自分は何者なのか?
人間の「存在」をめぐる10冊

『物質と記憶』(1896)
著:アンリ・ベルクソン
ポイント:「身体」と「精神」の二元論の困難を、「常識」にもとづく「イマージュ」という概念で克服した

『表示について』(1905)
著:バートランド・ラッセル
ポイント:フレーゲから影響を受けたラッセルは「意義」と「意味」の区別について意見を戦わせた

『論理哲学論考』(1921)
著:ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン
ポイント:形而上学的な哲学思想に代表される「哲学の誤り」を論理的に明らかにした

『存在と時間』(1927)
著:マルティン・ハイデガ
ポイント:「存在の意味への問い」への答えはなく、「現存在の分析」のみが出版された

『存在と無』(1943)
著:ジャン・ポール・サルトル
ポイント:「即自存在」「対自存在」「対地存在」という概念から人間存在の細密な分析を行った

『人間の条件』(1958)
著:ハンナ・アーレント
ポイント:人間の3条件は、時代とともに「活動」→「仕事」→「労働」へと重心が移っていった

『見えるものと見えないもの』(1964)
モーリス・メルロー・ポンティ
ポイント:遺稿では、それまでの「世界内存在」に代わって「存在」が重要テーマと位置付けられた

『正義論』(1971)
著:ジョン・ロールズ
ポイント:リベラリズムの根本問題は、個人への多様性を前提としながら「公正な社会」を実現すること

『狂気の歴史』(1961)
著:ミシェル・フーコー
ポイント:時代により「狂気」がどう扱われていたかを社会全体のレベルで捉えた

『エクリチュールと差異』(1967)
著:ジャック・デリダ
ポイント:「脱構築」は対立構造をひっくり返すのではなく、その根底にある次元を考える

第5章 哲学はどこへ行くのか?
「今と未来」を読み解く名著10冊

『コミュニケーション的行為の理論』(1981)
著:ユルゲン・ハーバーマス
ポイント:社会を変えるためには、コミュニケーションの討議がカギとなる

『言語論的転回』(1967)
著:リチャード・ローティ
ポイント:哲学の諸問題は、言語を改革、あるいはいっそう理解することによって解決できる

『自我の源泉』(1989)
著:チャールズ・テイラー
ポイント:自我を善と結びついているものと捉え、「近代的アイデンティティ」を明らかにする

『帝国』(2000)
著:アントニオ・ネグリ&マイケル・ハート
ポイント:「帝国」とは、世界中でヒト・モノ・カネが移動するグローバルな世界秩序のこと

『地球の洞察』(1994)
著:J・ベアード・キャリコット
ポイント:「再構築主義的ポストモダニズム」は環境保護運動を通じて近代全体を問い直すもの

『シニカル理性批判』(1983)
著:ペーター・スローターダイク
ポイント:批判的な「キニシズム」と嘲笑的な「シニシズム」は区別して考えるべき

『イデオロギーの崇高な対象』(1989)
著:スラヴォイ・ジジェク
ポイント:現実界を直視することがイデオロギーからの解放につながる

『技術と時間』(1994)
著:ベルナール・スティグレール
ポイント:生まれつき欠損的存在である人間にとって、「技術」は必要不可欠である

『有限性の後で』(2006)
著:カンタン・メイヤスー
ポイント:人間の思考から独立した「絶対的な存在」も認識することが出来る

『なぜ世界は存在しないのか』(2013)
著:マルクス・ガブリエル
ポイント:「世界は存在しない」という論理によって、「心の世界」が存在することを証明した


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