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不安や喜びを感じるタイミングは、キャラごとにずらす

みのり「あたしね、お兄ちゃんがクウガになるのは仕方がないと思っていた。けど……けどなんか、なんとなく怖いの!お兄ちゃんが、お兄ちゃんでなくなっちゃうような気がして……」

特撮ドラマ「仮面ライダークウガ」(第10話)


◆概要

【不安や喜びを感じるタイミングは、キャラごとにずらす】は、創作の技術の1つである。


私たち人間は、人それぞれ異なるタイミングで喜怒哀楽の感情を抱くものだ。

例えば夏休みの宿題。夏休みの初日から「宿題終わるかなぁ」と不安を感じる子もいれば、夏休み最終日になってようやく「……ヤベ」と不安を覚える子もいる。それどころか、夏休み明けになって教員の顔が引きつるのを見て初めて「あれ。宿題をやらなかったのってそんなにヤバいことだった?もしかして来週までにやればOKとかそんな雰囲気じゃない……?」と慌てる子もいるだろう。

だから、キャラ設定に応じていち早く不安を感じたり、あるいは最後の最後まで不安を感じなかったり、感情が生起するタイミングをずらすのだ。そうすれば物語にリアリティが生まれるだろう。


◆事例研究

◇事例:特撮ドラマ「仮面ライダークウガ」(第1-10話)

▶1

「仮面ライダークウガ」の主人公は五代。彼は第1話で特別な力を得て以降、クウガに変身して怪物と戦うようになった

桜子(五代の友人)は心配で仕方がない。まぁそりゃそうだろう。友人が訳の分からぬ能力を突如獲得し、さらに異形の化け物と命がけの戦いを始めたのだ。気を揉んで当然である。特に第5-6話では、彼女の不安がクローズアップされた。


▶2

五代には妹がいる。みのりだ。

彼女もまた、さぞや五代の安否を気遣っているに違いないと思いきや、じつはそうではない。みのりは「お兄ちゃんの言うことなら間違っていない!大丈夫!」と五代の判断を全肯定、ちっとも不安がっていなかった

第5-6話には、不安で仕方がない桜子をみのりが励ますエピソードも登場する。


▶3

ところがどっこい、第9-10話、突如としてみのりの不安が強調されるようになる

どうやら以下のような出来事が立て続けに起こった結果、みのりは<自分の知っている優しいお兄ちゃん>が消えつつあるように感じ、急速に不安を抱くようになったらしい。


・出来事1:「五代が予想以上に戦いに入れ込んでいること」を知った(自分の誕生日すら忘れて怪物との戦いに入れ込む五代を目撃した/「最近の五代はいつもヘトヘトになって帰ってくる」と人から聞いた)

・出来事2:「(五代ではなくて)クウガ」を目にすることが増えた(クウガの活躍がテレビや雑誌で頻繁に取り上げられるようになった/みのりは幼稚園の先生だ。彼女は園児たちがクウガごっこに興じるのを目撃した)

・出来事3:「五代は誰よりも優しい男で、暴力を嫌っていた。しかしいまや、怪物に対して日常的に暴力をふるっている」ということを改めて意識するようになった(クウガが次々と新しい能力を獲得し、どんどん強くなっていると知った/園児たちがクウガごっこをする中で暴力を働くのを目撃した)


▶4

以上ご説明してきた通り、「五代が訳のわからぬ力を得る → 怪物と命がけの死闘を繰り広げ始めた」という同じ事象を目にしながらも、桜子とみのりは異なるタイミングで不安を感じているのだ。

ここにリアリティがある。


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