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「『AではなくてBだ』と相手の言葉を訂正するが、じつはAもBも意味は同じ」というボケを使って、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする ~映画「トゥー・ウィークス・ノーティス」の場合

トランプ「(からかうような口調で)聞いたぞ。ついにケルソンくんに捨てられたんだって?」

ジョージ「捨てられてなんかいない。『僕は耐えがたい男であって、彼女はもう僕とは1秒たりとも一緒にいられない』ってことで意見が一致したのさ」

映画「トゥー・ウィークス・ノーティス」




◆概要

【「『AではなくてBだ』と相手の言葉を訂正するが、じつはAもBも意味は同じ」というボケを使って、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「トゥー・ウィークス・ノーティス」

▶1

本作の主要キャラの1人・ジョージ(40代頃の男性)。

彼は、大企業のCEOである。

が、人間的にはかなり問題を抱えており――すなわち、とにかくわがままで自己中心的。そして優柔不断。自分では決められない。加えて、やたら軽薄な野郎である。


いろいろあってある日のことだ。

・Step1:ジョージは、自社の主任弁護士としてルーシー・ケルソンという30代の女性を雇った

・Step2:ケルソンは大変優秀だった。また、面倒見もいい性格だった。

・Step3:というわけで、ジョージはあっという間にケルソンに依存するようになった。仕事はもちろん、プライベートでも甘えまくる!

・Step4:かくしてケルソンは「企業の主任弁護士」というよりも、「公私に渡ってジョージをサポートするスーパーアシスタント」になってしまった。


ケルソンはまじめな女性だ。

・Step5:ジョージの依頼に応えようと奮闘した。

・Step6:だがやがて限界が来た。こんな仕事やってられっか!彼女は辞意を伝えた。

・Step7:ジョージはどうにか引き留めようとするものの、しかしケルソンの決意は固い。やがてケルソンの退任が決まった


そんな中、

・Step8:とあるパーティに参加したジョージ。

・Step9:彼はそこでトランプ(知り合いの経営者)に会った

・Step10:トランプは言った「聞いたぞ。ついにケルソンくんに捨てられたんだって?」。――からかうような口調である。

・Step11:それに対してジョージは「捨てられてなんかいない。『僕は耐えがたい男であって、彼女はもう僕とは1秒たりとも一緒にいられない』ってことで意見が一致したのさ」


▶2

ご注目いただきたいのは、Step10-11のやりとりである。

「ついにケルソンくんに捨てられたんだって?」というトランプの問いかけに対して、ジョージは「捨てられてなんかいない」と応じた。「それは違う」と否定したわけだ。ところがその後に出てきた言葉は「『僕は耐えがたい男であって、彼女はもう僕とは1秒たりとも一緒にいられない』ってことで意見が一致したのさ」。

「ジョージは耐えがたい男であり、もうジョージとは1秒たりとも一緒にいられない」というのは、まぁ要するに「ケルソンに捨てられた」ということであって、つまりこれは【「『AではなくてBだ』と相手の言葉を訂正するが、じつはAもBも意味は同じ」というボケを使って、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする】という技法である。

この技法が使われたことで、自虐的で愉快なセリフになったといえるだろう。


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