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創作に行き詰まったら、作中の天気を変えてみよう

創作に行き詰まったら……


エリック・ロス(アメリカの脚本家。代表作は「フォレスト・ガンプ/一期一会」など)が、こんなことを言っています。

(「執筆中、行き詰まったらどうするか?」という問いに対して)私はつまずいたら、よく天気を変えてみますよ。雨を降らせると場面が全く違ったものになりますからね。

※カール・イグレシアス「脚本を書くための101の習慣」から引用。


「創作に行き詰まったら、作中の天気を変えてみよ」……なるほど!


天気を変えてみる(その1)


作中の天気を「晴れ」から「雨」に変えてみる……!

それだけで随分と雰囲気が変わりますよね。

例えば、「とあるキャラが、主人公に会いにくる場面」を考えてみましょう。それが晴れの日なら、まぁどうと言うことはない。

しかし、もしも雷雨なら?

わざわざそんな時に訪ねてくる……これは普通ではありません。何か緊急事態でしょうか?吉報とは思えぬ。主人公の身に不幸が降りかかるのではあるまいか!?緊張感が高まります。読者・鑑賞者も、きっとドキドキしてくれるでしょう。


また、天気を「晴れ」から「雨」に変えることで、「雨」ならではのエピソードを追加することが可能になります。

例えば、

▶ 主人公が、喫茶店に傘を置き忘れる。親切な店員が追いかけてくる。ここから2人の愛の物語が始まる。

▶ 通りすがりの子どもが長靴を履いている。主人公はそれを見て、幼い日のことを思い出し、感傷的になる。

▶ 主人公が朝から片頭痛に悩まされる(雨が降ると頭が痛むという人は少なくありません)。そしてそのせいで、仕事で大きなミスをやらかしてしまう。

……なんて具合です。


つまり天気を変えるだけで、①作中の雰囲気が変わる、②その天気ならではの新しいエピソードを追加できるようになる、というメリットがあるわけですね。


天気を変えてみる(その2)


引き続き考えてみましょう……天気を変えると何が起こるのか?


今度は、「強敵との対決シーン」を例にしましょう。

さぁ、宿命の対決の日がやってきた。泣いても笑っても決着の時です。その時、天気は……?


「対決シーンの天気」と言えば、そう、大体が「雨」「雷」「強風」ですよね。悪天候の中で対峙する2人……確かにカッコいい!

しかしですね、その一方でマンネリという気もする。そこに驚きはありません。

ということで、天気を変えてみましょう。


<案1>

「うららかな春の日、日向ぼっこでもしたくなる上天気の中で対決する」というのは、いかがでしょうか?

「そんなの盛り上がらないよ!緊張感皆無じゃないか!」と思われるかもしれませんが、いやいや、案外と検討してみる価値はあるかもしれませんよ。


というのも……アンドリュー・W・マーロウ(アメリカの脚本家。代表作は「エアフォース・ワン」など)がこんなことを言っています。

物語の中で”対比”というのは極めて重要だと思う。映画の中のキャラクターが悪い報せを聞く時は、例えばパーティーの喧騒の中で聞くのが効果的なんだ。『トト・ザ・ヒーロー』という映画の中でそんな素晴らしい場面があった。主人公の職場で誕生パーティーが開かれていて、皆楽しそうに盛り上がっている。主人公は電話を受けて、誰かの死を告げられる。彼の顔が失意に沈む一方で、皆の愉快な笑いが聞こえる。彼の受けた衝撃が一層深く感じられるというわけだ。

※前掲書から引用。


つまり、「『のどかな日差し』の中で『激しく戦う』」という対比ですね。

この対比(≒ ミスマッチ)が、戦いの凄惨さや苛烈さを強調し、よりインパクトのあるシーンになり得るのです。


<案2>

別のアイデアを考えてみましょう。

「雨」よりももっと激しく……そうだ!「雹(ひょう)」が降る中で対決するのはどうでしょう?


これ、「北斗の拳」のケンシロウ v.s サウザー戦で使われている手法です。


2人の対決を前に、雹が降り始める。傍にいたラオウが不敵な笑みを浮かべて、「フフ……天も宿命の対決に興奮しておるわ!!」。


いやぁ、メッチャカッコいいですね!雹ですよ、雹!まさに「宿命の対決」って感じがするじゃないですか!


<案3>

もう1つの別のアイデアを検討してみましょう。

今度は「雪」です。


例えば……しんしんと雪が降る中、戦いに向かう主人公

「しんしん」というのは「辺りが静まり返っていること」を表現する副詞ですね。

つまりですよ。

辺りは静寂に包まれている。ただただ雪が降るだけ。そんな中、主人公が決戦の地に向かう。……想像するだけで興奮しますね!まさに「決戦の時」という感じです。


これ、時代劇やヤクザ映画でしばしば見かける手法です。

最もよく知られているのは「忠臣蔵」でしょうか。


大石内蔵助率いる面々は、雪の中討ち入りを決行します。


ホラ、雪って白いじゃないですか。

その白さがいいんですよね!

「白 = 混じりけなし」ということで、内蔵助らのまっすぐな覚悟が伝わってくると言いますか……。

間もなく流れることになる血の赤さを連想させると言いますか……。

「白(= 雪)」と「黒(= 夜の闇。討ち入りは夜決行された)」のコントラストが強烈で、この世のものとは思えぬ美を感じると言いますか……。


また、映画「網走番外地 大雪原の対決」にこんなシーンがあります。


敵(ヤクザ)は雪だるまの中に手下を潜ませ、主人公を待ち構えている。

そこへ主人公がやってきた。

嗚呼、主人公はやられてしまうのか……と思いきや、主人公は黙ってドスでぶすり、雪だるまをひと刺し。雪だるまから血が流れ出す。

なぜ主人公が雪だるまの中の敵に気づいたのか、さっぱりわかりませんが(一切説明なし・笑)、とにかくカッコいいんですよ!

これ、天気が「雪」だからこそ生まれた名シーンと言えるでしょう。



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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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