見出し画像

ヤクザ映画の主人公を「ラノベ作家」にして、そして「妹好き」にしてみたら……?|『妹さえいればいい。』に学ぶテクニック

名作アニメを研究して、創作に活かそう!

本記事では、「妹さえいればいい。」に【「魅力的なキャラ」の作り方】を学びます。

※「妹さえいればいい。」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。

---🌞---


主人公・伊月はどのようなキャラか?


本作の主人公は羽島伊月

彼は、一見すると平凡な青年に見える。しかしよくよく考えてみると……かなりカッコいい。


本記事では、伊月がどのようなキャラか、その特徴を整理してみましょう。


<伊月の概要>

▶ 性別:男性

▶ 年齢:20歳

▶ 職業:ラノベ作家(3年目)

▶ 交友関係:可児那由多や不破春斗(2人とも作家仲間)、白川京(大学時代の友人。伊月は、大学を中退済み)と親しく付き合っている。


【特徴①】感情を内に隠し、密かに努力する男


伊月は、ラノベ作家としてそこそこの人気を誇っています。しかし、那由多や春斗には及ばない。


特に、那由多!彼女は天才です。

初めて彼女の作品を読んだ際、伊月はあまりの面白さに衝撃を受け、時間を忘れて没頭した。そして読み終わった時には思わず涙を流し、呟いた「格が違う……」。

同じ作家として悔しい!嫉妬せざるを得ない!


しかし伊月はグッと堪えます。泣いたり、喚いたりすることはない。彼らの前では平然とした顔をしている。そして「いつか必ず追いついてみせる」と誓って、今日も1人パソコンに向かう。

つまり伊月は、「感情を内に隠し、密かに努力するタイプの男」なのです。


【特徴②】自分に厳しい男/不器用で、融通が利かない男


伊月は、じつは那由多に恋をしています。軽い気持ちではない。強く愛している。

しかし普段は、素知らぬ顔をしています。


作中一度だけ、そんな伊月が自身の恋心を吐露するシーンがあります。

伊月が、春斗と酒を飲んでいる時のこと。2人とも酔っているように見える。春斗が言った「お前、那由ちゃんのこと好きだろ?なら付き合えよ」。

伊月は話をうやむやにしようとする。しかし春斗の追及に負け、やがて自らの本心を打ち明けた「……ハイハイ、認めますよ。オレは好きだ。好きだし、付き合いたい。ぶっちゃけ結婚したい。だがダメだ。いまはまだ」


伊月曰く、いま結婚するとマスコミはこう報じるだろう「大人気女性作家の可児那由多さん結婚。お相手は2歳年上の同業者の男性」。

何しろ、那由多は大人気ラノベ作家ですからね。那由多と比べると、伊月はマイナー作家に過ぎないのです。

伊月は言う「つまり、いまの俺は『羽島伊月』じゃなくて、『可児那由多の同業者の男性』なんだ。あいつを主人公にした物語の脇役でしかない。それが俺には我慢できない。……主人公になりたいんだ、俺は。いまはまだ何者でもないオレが可児公と対等の主人公になったら、その時はオレの方からあいつに『好きだ』って言う。あいつには悪いが、それまで待っていてもらう」。


伊月は、別のシーンでも似たようなことを言っています。

ある日、人気イラストレーターの刹那が伊月に迫った「先生!なんで新シリーズのイラストを自分にやらせてくれないんスか!」「オレの力不足ですか!?」。

伊月は首を横に振った「違う。オレの作品がお前の絵に相応しくないんだ。オレの小説は、お前の絵に負けている。だからいまはまだ、再びお前とコンビを組むことはできない」。


つまり、伊月は「自分に厳しい男」なのです。あるいは、「不器用で、融通が利かない男」と言ってもいい。

本当は、「那由他と結婚して互いに影響を与え合い、2人で成長していく」という手だってあるのです。刹那に対しても同様です。「二人三脚で成長していく」という道だってある。

しかし、我らが伊月にはそれができない!


【特徴③】不利だとわかっていても、自らの意志を貫く男


ラノベ作家・伊月には、こだわりがあります。「妹」、そして「全裸」です。

彼は「妹/妹もの作品」を愛しており、隙あらば妹をヒロインにしようとする。その上、素っ裸にしてしまう。彼のこだわりは生半可なものではありません。

その結果、しばしば「常人には理解しがたいぶっ飛んだ小説」を執筆してしまう……。


伊月はバカではありません。自分の作品が大衆受けしづらいことは理解しているでしょう。那由多や春斗に勝ちたければ、もっとメジャー感のある作品に挑戦するべきなのです。

しかし、伊月は絶対にこだわりを捨てない。


つまり彼は、「不利だとわかっていても、自らの意志を貫く男」なのです。


まとめ


以上、伊月の特徴をご説明してきました。

彼は、一見するとごく普通の青年に見える。ところがよくよく考えてみると……

▶ 感情を内に隠し、密かに努力する男

▶ 自分に厳しい男/不器用で、融通が利かない男

▶ 不利だとわかっていても、自らの意志を貫く男


こうして見ると、随分と男くさい主人公だと思いませんか?

そうなんですよ!「ラノベ作家」「妹好き」といったポップで現代的な要素をまとっているのでわかりづらいのですが……この伊月という青年、ズバリ「古典的な男らしいキャラ」と言えると思うのです。


例えばヤクザ映画には、伊月のような主人公がよく登場します。

男が惚れる男、やせ我慢をする男、不器用だが芯のある男、下っ端ながら大親分から気に入られる男、自らの信念のためなら命を捨てることも惜しまぬ男……高倉健さんあたりが演じるキャラですね。

逆に言えば、ヤクザ映画の主人公をラノベ作家にして、そして妹好きにすれば、まぁ大体伊月になる。


補足


<1>

「伊月 = ヤクザ映画の主人公にも匹敵する男らしい主人公」と、「『ラノベ』『妹』といったポップな世界観」……ずばり、ミスマッチです。

このミスマッチこれが、本作の魅力の1つと言えるでしょう。


<2>

最終話(第12話)の終盤、伊月が担当編集者と電話で話をするシーンがあります。

担当編集者が言った「おめでとう。きみの作品のアニメ化が決まった」。

伊月は大喜びです。

しかし編集者が続ける「……今回の件はな、他のアニメ企画がポシャったせいで転がり込んできた、言わば代役だ。時間も予算もないし、成功の見込みはハッキリ言って薄い」。

伊月はハッと表情を硬くする。

しかし、すぐに不敵な笑みを浮かべて「それでもアニメ化してほしい」と告げた。曰く「進まなければ見えない景色がある。だったら、恐れずに進むだけだ!」。


「諸手を上げてハッピーエンド」とは言えぬ結末です。伊月の行く先には、暗雲が立ち込めている。……しかしそれでも進む!

ラストシーンでも、やはり伊月の「男らしさ」が強調されていると言えるでしょう。


関連記事


「妹」なら何でもいいのか!?|『妹さえいればいい。』に学ぶテクニック

きみは本当は、「妹になりたい」のでは?|『妹さえいればいい。』に学ぶテクニック

敢えて「悲劇的な展開」を予感させることで、その後の感動を大きくするテクニック!!|『妹さえいればいい。』に学ぶテクニック

どうすれば、キャラの「出オチ」を防げるのか?|『妹さえいればいい。』に学ぶテクニック


---🌞---

関連

---🌞---

最新情報はTwitterで!

---🌞---

 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までご覧いただきありがとうございます! 頂戴したサポートはすべてコンテンツ制作に使います!