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「差別的な言葉・表現」を敢えて使って、軽口を叩く ~ドラマ「ウォーキング・デッド」の場合

リック「お前たちはどこで合流したんだ?」

白人のダリル「じつは、ふらふらと走る車を見つけてな。ああいう運転をするのはアジア人しかいないと思ったわけだ」
アジア系のグレン「(笑って)アハハッ!こいつ、よくも言ったな!」

ドラマ「ウォーキング・デッド」(シーズン2の第13話)




◆概要

【「差別的な言葉・表現」を敢えて使って、軽口を叩く】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:ドラマ「ウォーキング・デッド」(シーズン2の第13話)

▶1

本作の舞台は、ゾンビパニックが発生し、人類の文明が崩壊しかけている世界

数少ない生存者は、ゾンビに怯えつつも安住の地を求めて旅したり、生存者同士で助け合ったり、時には殺し合ったりしている。


本作の主人公・リック(40代頃の男性)は、

・Step115人ほどの仲間とともに旅をしていた。

・Step2:しかしある時、ゾンビの急襲を受け、彼らはバラバラになってしまった

・Step3:皆は無事だろうか……?いつかまた合流できるだろうか……?


だがやがてリックのもとに、

・Step4ダリル(40代頃の男性、白人)とグレン(20代頃の男性、アジア系)が連れだってやってきた

・Step5再会を喜ぶ一同。

・Step6:リックが訊いた「お前たちはどこで合流したんだ?」

・Step7:ダリルは言った「じつは、ふらふらと走る車を見つけてな。ああいう運転をするのはアジア人しかいないと思ったわけだ」

・Step8:グレンが笑う「アハハッ!こいつ、よくも言ったな!」。


▶2

ご注目いただきたいのは、「じつは、ふらふらと走る車を見つけてな。ああいう運転をするのはアジア人しかいないと思ったわけだ」というダリルのセリフである。

「アジア人は車の運転が下手」というのはアメリカなどで広く浸透している偏見であり、これはその偏見に基づく人種差別的な発言だ。


いわば――

・例:アメリカ人に向かって「世界のリーダーを気取って偉ぶっているやつを見かけてな。ああいうのはアメリカ人に違いないと思ったわけだ」と言うのと同じ。

・例:イタリア人に向かって「こんなご時世にもかかわらず女を口説いているやつを見かけてな。ああいうのはイタリア野郎に違いないと思ったわけだ」と言うのと同じ。

・例:日本人に向かって「こんな時だってのにメシのことばかり考えているやつがいてな。ああいうのは日本人に違いないと思ったわけだ」と言うのと同じ。

・例:福岡県出身者に向かって「妙にロケットランチャーの扱いに慣れているやつを見かけてな。ああいうのは福岡人に違いないと思ったわけだ」と言うのと同じ。


ではなぜ面と向かって人種差別的な発言ができるのかといえば、もちろんダリルとグレンが極めて親しいからであり、例えば「バーカ!」「バカはおめーだ!死ね!」などと仲間同士で罵り合っているのと変わらない。

要するにこれは【「差別的な言葉・表現」を敢えて使って、軽口を叩く】という技法である。


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