「差別的な言葉・表現」を敢えて使って、軽口を叩く ~映画「バッドボーイズ2バッド」の場合
◆概要
【「差別的な言葉・表現」を敢えて使って、軽口を叩く】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「バッドボーイズ2バッド」
▶1
本作の主人公は、マーカス(中年男性)。
彼はマイアミ市警のベテラン刑事である。
いろいろあってある日、
・Step1:悪党との銃撃戦でマーカスが尻を負傷した時のことだ。
・Step2:同僚のマテオ刑事とマルコ刑事(2人ともラテン系)がやってきて、マーカスをからかった。
・Step3:するとマーカスはじろりと2人をにらみつけ、「このラテン野郎どもが!おめーらはリッキー・マーティンのライブにでも行ってろ!失せな!」。
・Step4:その言葉にマテオ刑事はわざとらしく肩をすくめた「またラテン系を差別すんの?」。マルコ刑事も「悲しいねぇ」。
▶2
ご注目いただきたいのは、「このラテン野郎どもが!おめーらはリッキー・マーティンのライブにでも行ってろ!失せな!」というマーカスのセリフである。
リッキー・マーティン(Ricky Martin)とはラテン音楽を代表するアーティストであり、つまりこれは「ラテン系の人 = 誰もがリッキー・マーティン好き」という偏見に基づく人種差別的な発言だ。
いわば――
・例:アメリカ人に向かって「テイラー・スウィフトのライブにでも行ってろ!」と言うのと同じ。
・例:韓国人に向かって「BTSのライブにでも行ってろ!」と言うのと同じ。
・例:日本人に向かって「アニメでも見てろ!」と言うのと同じ。
・例:秋田県出身者に向かって「キリタンポでも食ってろ!」と言うのと同じ。
ではなぜ面と向かって人種差別的な発言ができるのかといえば、もちろんマーカスと同僚が極めて親しいからであり、例えば「バーカ!」「バカはおめーだ!死ね!」などと仲間同士で罵り合っているのと変わらない。
要するにこれは【「差別的な言葉・表現」を敢えて使って、軽口を叩く】という技法である。
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