きみは本当は、「妹になりたい」のでは？｜『妹さえいればいい。』に学ぶテクニック
名作アニメを研究して、創作に活かそう！
本記事では、「妹さえいればいい。」を参考に【妹、妹萌え】について考察します。
※「妹さえいればいい。」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。
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「妹」とは何か？
本作の主人公は、ラノベ作家の羽鳥伊月くん。
彼は、「妹／妹もの作品」を愛しています。「妹／妹もの作品」こそが彼の生きがいなのです。
本記事では前回に引き続き、彼の「妹／妹もの作品」への偏愛っぷりをご紹介しつつ、「妹」や「妹萌え」についてアレコレ考察していきます。
【テーマ①】「妹がほしい」と「妹になりたい」
ある日、伊月くんが仲間たちとゲームに興じていた時のこと（第7話）。彼は、ゲーム内で、友人（白川京）の妹役を担当することになりました。
伊月くんが呟く「オレが妹……」
京「よかったじゃない。あんた、妹バカだし」
伊月くんは戸惑った様子で「いや、待て。オレは妹が好きなのであって、自分が妹になりたいわけではないのだが……」
京「だったら私の年齢を下げる？」
伊月くんは逡巡する「んー……まぁ、これはこれで……」
京が呆れる「……ありなのね、自分が妹になるのも」
とまぁ、こんなやりとりがあるんですよ。
この話はこれ以上掘り下げられることなく、彼らはゲームを続けるのですが……いかがでしょう。これ、なかなか興味深い論点だと思いませんか？
というのも、世の中には「妹がほしい人（いわゆる「妹萌え」）」もいますが、同様に「妹になりたい人」だっているはず。さらに、その両方の欲求を持っている人がいても不思議ではない。
図に整理してみましょう。
またこんなことも考えられます。すなわち……「妹萌え」の中には、「本当に妹がほしい人」だけではなく、「本当は自分が妹になりたい（誰かに愛され、かわいがられたい）。しかし妹にはなれないため、妹を持つことで妹の気分を疑似体験しようとしている人」も紛れ込んでいるのではないか？
あなたが、ご自身の作品に「妹萌えキャラ」を登場させる時には、
▶ このキャラは「妹になりたい」という欲求を持っているか？
▶ このキャラは、本当に「妹が好き」なのか？「妹になりたい」という欲求の代わりに「妹が好き」と言っているだけではないか？
……と考えてみると、ユニークなアイデアが生まれるかもしれません。
【テーマ②】本当は妹がいる
まずは、伊月くんの「妹遍歴」をざっくり整理してみましょう。
・Step 1：彼は、元々「妹もの」のラノベが好きだった。
・Step 2：中学2年生頃、姉のように慕っていた女性に失恋し、その反動で極度の妹好きになる。
・Step 3：高校2年生頃、ラノベ作家としてデビューする。
・Step 4：同じ頃、父が再婚。義母には娘がおり、伊月に妹ができる（名前は千尋）。しかし伊月の父は、「妹」を偏愛する伊月に不安を感じ、「千尋は弟だ」と偽る。
・Step 5：以後、千尋は、伊月の前では義弟を装っている（伊月がいないところでは、彼女はごく普通の女子として生活している）。
※アニメで明言されていない部分（千尋が弟を装っている理由など）は、原作ラノベで補足しました。
つまり……伊月くんは「妹／妹もの作品」を愛しています。そして「オレにも妹がいればなぁ」と夢想している。
ところが、彼には本当は妹がいるのです！
……これ、面白い設定ですよねー！
【テーマ③】ほしいものが手に入った時、人はどうするのか？
ある日伊月くんが、いつものように「妹への愛を前面に押し出した、常人には理解しがたい小説」を執筆した時のこと（第1話）。
担当編集者が嘆息し、呟いた「ハァ。千尋くんが妹だったら、伊月もあんな妹バカにならなかっただろうに。妹さえいれば……。いや、それだと伊月が作家になることもなかっただろうな。難しいもんだ」。
※担当編集者は、伊月同様、千尋の正体を知りません。
また、自著のアニメ化が決まった時のこと（第12話）。
伊月くんは大きなプレッシャーを跳ね除けんとして、自分に向けて呟いた「大丈夫だ、乗り越えれる。なぜならオレには妹がいないからな！妹への渇望がある限り、オレはどこまでもいける！よし、やるぞ！」
……つまり「妹がいないこと／いないがゆえの渇望」こそが、伊月くんの原動力となっているのです。
ところが、嗚呼、彼には本当は妹がいる！
一般論として、「妹がいる人」は妹萌え作品にはハマりません。「妹がいない人」こそ、妹萌え作品を好きになる。現実に妹がいると幻想を抱きづらいんでしょうね。
では「妹好きの人」に、ある日突然妹ができたら（妹がいると判明したら）何が起こるのでしょうか？彼は妹萌えでい続けられるのか？それとも幻想を抱けなくなり、妹萌えではなくなるのか？
面白いテーマです！
※アニメは、「千尋 = 本当は妹」と知る前に幕を閉じます。
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（担当：三葉）
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