「己の信念に従って動く部下→上司は部下が自由に動けるように、上層部をごまかしたり、ペコペコ頭を下げたりして時間稼ぎをする」というシーンを描く ~特撮ドラマ「ウルトラマンZ」の場合
◆概要
【「己の信念に従って動く部下→上司は部下が自由に動けるように、上層部をごまかしたり、ペコペコ頭を下げたりして時間稼ぎをする」というシーンを描く】は「読者・鑑賞者に好かれるキャラ、共感されるキャラ、応援されるキャラ」を作るためのアイデア。
◆事例研究
◇事例:特撮ドラマ「ウルトラマンZ」(第20話)
▶1
本作の主要キャラの1人・ヘビクラ(男性30代)。
彼は、地球防衛軍日本支部の対怪獣特殊空挺機甲隊「STORAGE」の隊長である。隊員たちをまとめ上げ、巨大ロボを駆使して、日夜怪獣と戦っている。
ある日ふいに、
・Step1:M1号という巨大怪獣が出現した。
・Step2:M1号は元々は人間サイズの怪獣だった。サル程度の知性を持っているようで、人類と友好関係を築いていた。ところが、とある事故で巨大化してしまったのだ。
・Step3:したがって、STRAGEの隊員たちは口々に訴えた「M1号に敵意はない!」「元のサイズに戻す薬を開発する時間がほしい!」「M1号を殺すのはおかしい!」。
・Step4:とはいえ、いまのM1号はデカい。超デカい。40mはあろうかという怪獣だ。敵意の有無に関わらず、人間を踏み潰したり、街を破壊したりするおそれがある。その存在自体が脅威と言わざるを得ない。というわけで、STRAGEに命令が下った「M1号を速やかに駆除せよ!」。
こうして、
・Step5:上層部と隊員たち(=部下たち)の板挟みになったヘビクラ。
・Step6:だが、ヘビクラはすぐに腹をくくった。彼は隊員たちに宣言した「ロボを使って、M1号が市街地に接近するのを食い止めよ。そしてその間に特効薬を開発せよ!」「ただし人間の生命が何より重要だ。M1号が市街地まで1000mの距離まで接近したら、その時は容赦なく駆除する!」「上層部の方は……俺が何とかする!」。
かくして作戦開始。
・Step7:一部の隊員は、特効薬の開発を急ぐ。また、一部の隊員はロボに乗り込み、M1号が市街地に近寄るのをどうにかして防ごうとする。
・Step8:だが、なかなか上手くいかない……。M1号はじりじりと市街地に接近していった。市街地まであと1900m!
・Step9:と、その時だった。ヘビクラのデスクの上の電話が鳴った。相手は上層部だ。ヘビクラは受話器を掴むと、叫ぶように「はい、すみません!順調です!」。……もちろん嘘である。実際にはちっとも順調ではないが、隊員たちが試行錯誤する時間を稼ぐために嘘を吐いたのだ。
その後も、
・Step10:隊員たちは奮闘する。しかし、やはり難しい。M1号はさらに市街地に近づいていった。市街地まであと1700m!
・Step11:というわけで、再び電話が鳴った。ヘビクラは受話器を取って「はい!はい!すみません、はい!はい!すみません……いえー、もう!迎撃準備は万端です!」。……これまた嘘である。迎撃準備なんてちっともしていない。
さらにその後も、
・Step12:隊員たちは精一杯努力する。だが苦戦。M1号はどんどん市街地に近づいていった。市街地まであと1500m!
・Step13:かくして、またまた電話が鳴った。ヘビクラは受話器を取って「はい!すみません!すみません!はい!」。ペコペコ頭を下げる。
とまぁそうこうする内に、
・Step14:特効薬が完成。隊員たちの努力の甲斐あって、M1号を元のサイズに戻すことに成功したのだった。
▶2
ご注目いただきたいのは、ヘビクラの対応である。
ヘビクラは受話器を取る。
「早く戦闘を始めろ!」「ミサイルを撃ち込め!」「さっさとM1号を殺せ!」と上層部が催促してきているのだろう。
そんな上層部に対して、ヘビクラは嘘を吐く。ペコペコと頭を下げる。おそらくは胃を痛めつつ。……すべては、部下たちが己の信念に従って動く時間を稼ぐためだ。
自分が防波堤になり、部下たちが動き回る時間を作るその姿!
「まさに上司の鑑だ!」「中間管理職の鑑だ!」「こんな人の下で働きたい!」と好意を抱いた鑑賞者は少なくないだろう。
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