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「ヘッドフォンで耳を塞ごうとするキャラA→しかしいろいろあってヘッドフォンを付けられなかったり、ようやく付けてもすぐに外してしまったりする」という展開によって、「A=世界に背を向けようとするがそれができない=どうしてもダークサイドに堕ちられない善良な人間である」と暗示する ~アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」の場合

かのんの妹「(かのんの言動を見て)まだ受験の失敗引きずってるの?」
かのんの母「繊細だから……」

アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」(第1話)




◆概要

【「ヘッドフォンで耳を塞ごうとするキャラA→しかしいろいろあってヘッドフォンを付けられなかったり、ようやく付けてもすぐに外してしまったりする」という展開によって、「A=世界に背を向けようとするがそれができない=どうしてもダークサイドに堕ちられない善良な人間である」と暗示する】は「キャラの感情などを暗示する」ためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」(第1話)

▶1

本作の主人公は、かのん(女子)。


第1話冒頭、かのんは中学3年生だ。

・Step1:彼女は明るく元気で快活で、そしてメチャクチャに歌が上手い。ギターも弾ける。「同級生の憧れの存在」「クラスの中心人物」といった感じで、キラキラ輝いている。

・Step2:なお、将来の夢は「結ヶ丘女子高等学校の音楽科に進み、歌で皆を笑顔にすることです!」らしい。


ところが高校受験当日、

・Step3:かのんはガチガチに緊張し、歌唱の実技テストで大失敗してしまう。当然ながら結果は――不合格


で、高校1年生になったかのん。

・Step4:彼女はすっかり荒んでいた

・Step5:家族に対しては「フン!うるせいやい!」といった感じで悪態をつく。また、「歌で皆を笑顔にする」という夢にも背を向けており、「フン!歌なんて忘れて新しいことにチャレンジするんだい!」なぞと言ったりするという具合だ。


▶2

上述の通り、周囲の人に対しても、自分の夢に対しても心を閉ざしてしまったかのん。

そんな彼女を象徴するアイテムがヘッドフォンである。

かのんは第1話序盤からヘッドフォンを首にかけ、隙あらばそれを耳に当てようとする。「耳を塞ぐ」という行為によって「心を閉ざしていること」を暗示しているわけだ。


――が、ここでご注目いただきたいのは「かのんがいつもヘッドフォンで耳を塞いでいること」ではない。

その逆だ。

「かのんがヘッドフォンで耳を塞ごうとする→しかし、いろいろあって塞げない」「かのんがヘッドフォンで耳を塞ぐ→しかし、ゆえあってすぐに外してしまう」という展開こそがポイントだ。


<例1>

高校の入学式に向かうかのん。

彼女はヘッドフォンで耳を塞ぎ、「フン!何が春よ!何が新学期よ!皆浮かれちゃってさ!」といった感じのやさぐれた表情を浮かべて通学路を歩いていく。

が、神様は意地悪だ。

かのんは、中学時代の同級生にばったり遭遇してしまった。

元同級生たちは気まずそうだ。受験に失敗してしまったかのんに対して、何と声をかけていいのかわからないのだろう。

かのんも顔が引き攣る。ううっ、過去の自分を知っている人とは会いたくなかった……。が、彼女はすかさずヘッドフォンを外し、そして笑顔になった「私は受験に失敗しちゃったけど、もう気にしていないよ!」「むしろ気楽でいいかな、なんてね!ハハッ!」「いやぁ、志望校に進学できた人はさすがに輝いているなぁ!」。ハイテンションなトークでこの場を乗り切ろうという作戦だろう。

――「かのんよ、お前はこういうやりとりが嫌だからこそヘッドフォンで耳を塞いでいたのではないのか?だのに、なぜ外した?外しちゃダメだろ……。元同級生には気づかなかったフリをしてやりすごせばいいのに」と苦笑してしまった鑑賞者は少なくないだろう。


<例2>

高校入学後、かのんはクゥクゥという同級生に付きまとわれることになる。

クゥクゥ曰く「かのんさんの歌声は素晴らしい!一緒にアイドル活動をしましょう!」。かのんは逃げる「私はもう音楽なんてやらないわよ!」。だがクゥクゥは諦めない。

音楽を忘れて新しい道に進もうとしているかのんにとっては、まったく迷惑な話である。

ところがある日の夕方、かのんがヘッドフォンを耳に当てようとした時のことだ。ふいにクゥクゥの歌声が聞こえてきた。ボイストレーニングをしているようだ。かのんは思わず手を止め、その歌声に耳を傾ける。そして「クゥクゥちゃん、頑張ってるんだな」なんて考える。

――「かのんよ、そこで手を止めてしまってはヘッドフォンを常備している意味がないぞ!」とツッコんでしまった鑑賞者は多いと思う。


<例3>

第1話終盤、いろいろあってかのんはヘッドフォンを外す。

そしてクゥクゥのもとに駆け寄ると「やっぱり私、歌が好きだ!」と宣言した。彼女は「もう1度歌に向き合おう」「クゥクゥとアイドル活動に挑戦してみよう」と決意したのだ。

――「やっぱり自分の気持ちに嘘はつけないわけだね」と微笑んでしまった鑑賞者は少なくないだろう。


▶3

とまぁこのように、かのんは友人を無視することができない。

努力する人を放っておくこともできない。

そして自分の気持ちには嘘をつけない。

要するに、彼女はダークサイドに堕ちることができない。サニーサイドを歩むべき人間なのだ。

――ヘッドフォンというアイテムによってそれが伝わってくる。


つまり、【「ヘッドフォンで耳を塞ごうとするキャラA→しかしいろいろあってヘッドフォンを付けられなかったり、ようやく付けてもすぐに外してしまったりする」という展開によって、「A=世界に背を向けようとするがそれができない=どうしてもダークサイドに堕ちられない善良な人間である」と暗示する】というテクニックである。


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