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<成長>とは何なのか? ~ねねっちとなるっちの成長の軌跡|アニメ「NEWGAME!」に学ぶ

※本記事では、アニメ「NEWGAME!!」(第2期)を分析します。


ねねっち、うみこに自作ゲームを見せる


<1>

本記事では、「NEWGAME!!」に描かれている<成長>について考察する。

すなわち、「NEWGAME!!」では何を<成長>としているのか?どうなった時に<成長した>と言えるのか?


<2>

まずご注目いただきたいのは、第1話中盤の<ねねが、自作したゲームをうみこに見せるシーン>である。

2人はこんな会話をしている。

---

うみこ プログラムは楽しいですか?

ねね わかんない……難しいし……。でも、青っちの気持ちは少しわかった気がする。絵とは違うけど、こうやって形になっていくって面白いし。あっ、あと、『バグ見つからないで~』っていうプログラマの気持ちもちょっとわかった。

うみこは呆れる わからずデバッグしてたんですね……。でも、まったく見つからないと逆に不安になってくるものですよ。

ねね えっ?そうなんですか?

うみこ バグなんてあって当然。それを直しながらよくしていくのが当たり前の流れです。それがないなんてイレギュラーですよ。

ねね そっかぁ。バグがあって当然なんだ。ちょっと安心したかも。

---


「バグなんてあって当然。それを直しながらよくしていくのが当たり前」という精神


ご覧の通り、2人は<プログラマの心得>について話しているのだが……しかし。このやりとりには、もっと深い意味があるのではなかろうか


すなわち、「バグなんてあって当然。それを直しながらよくしていくのが当たり前」といううみこのセリフは、「NEW GAME!!」全体を貫くテーマ(の1つ)だと思うのだ。

以下、詳しくご説明しよう。


「私が拙いからバグが出るんだ。ベテランのうみこさんなら、きっとバグなんて出さないんだろうな」は本当か?


改めて上記のやりとりを確認するところから始めよう。

さて、うみこが「バグなんてあって当然。それを直しながらよくしていくのが当たり前」と言った時、ねねはどのような反応を示したか?

彼女は「えっ?そうなんですか?」と驚き、そして「そっかぁ。バグがあって当然なんだ」とホッしていた


この反応から推測するに、ねねは「私が拙いからバグが出るんだ。ベテランのうみこさんなら、きっとバグなんて出さないんだろうな」と考えていたのだろう。

つまり、ねねは<ベテラン・プロ・大人は失敗しない>と考えていたわけだが……これは幻想に過ぎない


ベテラン・プロ・大人だって失敗の連続


<1>

この手の幻想は、多くの初心者・アマチュア・子どもが抱いているものだ。

彼らは<ベテラン・プロ = 失敗することなくスムースに仕事をこなす>、<大人 = 常に正しく間違えることはない>と考えている。


だが現実は……そんなに甘くはない!

ベテラン・プロ・大人だって、日々苦しみ、失敗を繰り返しながら、それでもへこたれず、いや、時にはへこたれつつもそれでも立ち上がり、試行錯誤し、どうにかサバイバルしているのだ。

初心者・アマチュア・子どもには、それが見えていないだけだ。


<2>

換言するならば……【ベテラン・プロ・大人 = 失敗しない(バグを出さない)】というのは初心者・アマチュア・子ども特有の幻想であり、その幻想を捨てることこそがベテラン・プロ・大人への第一歩と言えるだろう。

そして、<失敗しつつも前進する術(バグを直しながら前に進む術)>を身につけた時、その人は【ベテラン・プロ・大人になった】と言えると思うのだ。


「誰だって失敗する。でも止まるな!リカバリしつつ前進するんだ!」という精神を学び、成長していく物語


で、「NEWGAME!!」である。

改めて考えてみると、本作は【初心者(青葉、ねねら)が、先輩たちから「ベテラン・プロ・大人だって失敗する。でも止まるな!諦めるな!リカバリしつつ前進するんだ!」という精神を学び、成長していく物語】と整理できると思うのだ。


それが顕著に現れているのが、第10話~第11話である。

以下、ざっくりご紹介しよう。


ねねっちの成長、なるっちの成長


<Step1>

第10話終盤。

ねねは、うみこから与えられた課題(迷路風ボードゲームの制作)をどうにか終える。一部挙動に不安はあるものの、「まっ、まぁ、安定していないだけでできることはできるし、これでいいかなぁ……えへへへ」と妥協する。

一方その頃、新作ゲーム「PECO」の制作は佳境を迎え、うみこらは修正や調整に精を出していた。それを見てねねは呟く「修正、修正、修正……プロになってもずっと修正作業なんだなぁ」。ちょっとうんざりした感じだ。


そう、この時点では、ねねはまだベテラン・プロ・大人になりきれていない。だから修正にうんざりして、妥協してしまうのだ。


Step2>

上記シーンの直後、ねねは気づく「あっ!なるっちも、プログラミングが上手くいかず苦戦している!」。そしてねねはホッとする「なーんだ。そっかぁ、なるっちも苦戦しているんだぁ」。

※なる:専門学校生ながら、プログラミングの経験は豊富。ねねとはライバル関係にある。


ねねの視線を感じ取ったなる 何?おかしいの!?

ねねは慌てて いや、そういう意味じゃなくて……なるっちも失敗するんだなぁってちょっと安心して。

なる 失敗はしても、私はその失敗をそのままにはしないし!そこの挙動が不安定なゲームみたいにね。

ねね ……。

なる まさかそのまま提出する気じゃないよね?せっかくそこまで作ったんだから最後までやりなよ。それがプロでしょ?


この後、ねねはなるのアドバイスを受けて、ソースコードを修正・バージョンアップしていく


つまり、ねねは、なるに刺激を受けて、<バグを出しながら前進する>という道を歩み始めたのだ


Step3>

第11話中盤。

うみこ率いるプログラム班に緊張が走った。なるの担当箇所がバグだらけだと判明したのだ!

なるは愕然とする。全身から力が抜ける。「……終わった」。


なるは、まだ専門学校生だ。イーグルジャンプ社の正式な社員ではない。現在試用期間中であり、正式に入社するにはうみこに実力を認めてもらう必要がある。

かくして彼女は焦り、スピードばかりを重視、チェックが甘くなっていたのだ。


なるは俯いてしまう「いままで必死に頑張ってきたのに……」。なるの目に涙が浮かぶ。

とその時、ねねが叫んだ「早く直さないと!」。

なるはハッとする。

ねねは、なるの手を握った「諦めちゃダメだよ!なるっち、言ってたじゃん。『失敗はそのままにしない』って!私、手伝うから!」。なるは、その言葉に力を得て立ち直る。


かくして、2人はバグの洗い出しと修正に奔走。徹夜で作業を続け、うみこらの協力も得て……どうにか修正を完了する。

そして修正を終えた時、うみこはなるに合格を出した。


<成長>とは何なのか?


以上、第10話~第11話のエピソードをご覧いただいた。


ご注目いただきたいのは、<最終的に、ねねとなるがバグを出さなくなるわけではない>ということだ。

だが、問題ない。大切なのは<バグを出さないこと>ではないのだから。

<失敗しても(バグが出ても)諦めない/失敗しつつ(バグを出しつつ)前進する>、これが重要なのだ。これこそが本作の描く<成長>だ。


というわけで、冒頭取り上げた「バグなんてあって当然。それを直しながらよくしていくのが当たり前」といううみこのセリフは、「NEW GAME!!」全体を貫くテーマ(の1つ)と言えると思うのだ



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(担当:三葉)

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