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「悩みが新たな悩みを呼び寄せる」という負のスパイラル!!

実加「お父さんは死んだのに、皆どうしてそんな風なの!?」「人の命ってそんなに軽いものなの?」

特撮ドラマ「仮面ライダークウガ」第8話


◆始まりの悩み


<1>

特撮ドラマ「仮面ライダークウガ」の第7-8話には、

・1:実加(女子中学生)がひどく思い悩む

・2:しかしやがて、五代と一条の言葉に力を得て立ち直る

……というエピソードが登場する。


今回は、このエピソードを詳しく取り上げたい。


<2>

そもそも第1話、実加の父は「未確認生命体0号」と呼ばれる怪物に殺された

第2話には、父の死を嘆き悲しむ実加が描かれている。


そして第7話(作中時間では第1話からおよそ1か月後)……実加はイラついていた

未確認生命体0号はまだ見つからないの!?

警察はちゃんと捜査してくれているの!?


そう、彼女は【警察に対して怒りや不信感】を抱いていたのだ。


<3>

なお、警察やその関係者は全力で捜査を行っている。

だが如何せん、「怪物が次々と出現しては人びとを殺していく」という異常事態が現在進行中なのだ。

警察は目の前の怪物に対処するだけで精いっぱい。

実加の父を殺害して以降姿を見せていない未確認生命体0号を捜査する余裕はない、というのが実情だ。


◆新たなる悩み


<1>

さて、そんなある日のこと。

実加が母と共に上京し、警視庁を訪問した。


実加の父がかつて発掘した<いわくありげな出土品>を持参した。捜査に役立ててほしい」とのことだが、まぁこれは口実だろう。

だって、出土品を警察に提出するだけならわざわざ上京する必要はない。


実加(と母)は、警察の捜査状況を知りたいと思っているのだ。というか、「警察が未確認生命体0号の捜査に全力投球している姿を見たい。見て安心したい」というのが本音だろう。


<2>

ところが……嗚呼、最悪!

ここから悲劇的なすれ違いが積み重なっていく。


まずは警視庁。

実加(と母)に応対したのは一条だ。


一条はクソ真面目な男である。その日も朝から未確認生命体0号を捉えた映像を見返し、捜査のヒントを探していた。

だが、もちろん実加はそんなことは知らない。


それどころかタイミング悪く、実加の訪問と時を同じくして新たな怪物が出現した。急ぎ出動しなければ!かくして一条は、おざなりな対応しかできなかった

実加はそんな一条に不信感を募らせる……。


<3>

続いて、実加(と母)は城南大学を訪問した。

発掘調査の専門家に出土品を見てもらおうというわけだ。


応対したのは桜子である。

彼女は誠実な人間だ。誠意を持って対応した。


しかし残念ながら、彼女は発掘調査の専門家ではない

実加はがっくりうなだれた……。


<4>

続いて登場したのは、我らが主人公・五代である。

彼は心優しい青年だ。

「捜査の役に立ちますよね?」と尋ねる実加の気持ちを汲んで、「絶対に役立つよ!」と大きく頷いた


だがその直後、五代もまた発掘調査の専門家ではないと明らかになる。

かくして実加は「えっ。専門家でもないのに安請け合いしたの?」と落胆してしまった……


<5>

次いで、ジャンがやってきた。

彼こそが発掘調査の専門家だ。桜子や五代はホッとする。


ところが、ジャンは諸々の事情(実加の父が怪物に殺されたこと、実加の心の傷が癒えていないことなど)を知らなかった

しかも、彼はサービス精神旺盛な男だった。

というわけで、「Oh!!」「これは素晴らしい出土品ですね!」「アンビリーバブル!」と満面の笑みで応じてしまった。


……で、ここに至って実加は完全に心を閉ざした

彼女は想う「お父さんは死んだのに、皆どうしてそんな風なの!?」「人の命ってそんなに軽いものなの?」。

そう、【人間の命の重さ】に悩み始めたのだ。


その後、彼女は失踪し、ついには自殺を考えるまでに至る。


◆整理


さて、以上の展開を整理しよう。

・Step1:実加の父が未確認生命体0号に殺される

・Step2:警察の捜査はなかなか進まない(少なくとも、実加にはそう見える)

・Step3:実加は、警察及びその関係者に怒りや不信感を覚える

・Step4:その怒りや不信感を解消しようとして実加が上京

・Step5:一条、桜子、五代、ジャンの言動を見て、実加は人間の命の重さについて悩み始める

・Step6:実加が失踪する


つまり、実加は元々は【警察及びその関係者に対する怒りや不信感】を抱えていた。そしてそれを解消しようとして上京した。ところが怒りや不信感が解消されるどころか、彼女は【人間の命の重さに関する悩み】を新たに抱えてしまったのだ。

そう、<悩みが新たな悩みを呼び寄せてしまった>のである。


◆いくつかのポイント


▶Point1

皆さんもご経験があるかもしれないが……トラブルがトラブルを、不幸が不幸を、そして悩みが悩みを呼び寄せるのは珍しいことではない。「悩みが新たな悩みを呼び寄せる」という展開にはリアリティがある。


▶Point2

キャラをどんどん追い込んでいくことで、「一体どうなってしまうのだろう?」「このキャラは窮地を脱することができるのか?」と読者・鑑賞者をハラハラドキドキさせることもできる


▶Point3

以下、負のスパイラルに陥った実加の心を五代と一条がいかにして癒したのかご紹介しよう。

・Step1:五代が、失踪していた実加を発見。彼は言った「信じて!皆、やる時はやってくれるよ!」

・Step2:間もなく一条も駆けつけてきた。そして微笑んだ「無事でよかった!」


おわかりになっただろうか?

そう、五代の言葉は【警察及びその関係者に対する怒りや不信感】に、一条の言葉は【人間の命の重さに関する悩み】に対応しているのだ(「無事でよかった」という言葉には、「私はあなたの命をそれだけ大切なものだと思っています」という意味が込められていると考えられる)。


実加は2つの<悩み>を抱えていた。したがって彼女が生きる気力を取り戻すには、2つの言葉が必要だった。

五代の言葉だけでは足りない。

一条の言葉だけでも足りなかった。

五代と一条が2人がかりで2つの<悩み>に寄り添ったことで、実加は活力を取り戻したのだ。


◆参考


特撮ドラマ「仮面ライダークウガ」第7-8話について知りたい方は、以下の記事をどうぞ🍎

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