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「誰がどう見ても嘘だとわかること・でたらめだとわかること」を口にして、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする ~映画「ノッティングヒルの恋人」の場合

書店主ウィリアム「(万引き犯を追っ払った後、接客途中だった女性客のもとに戻って)どうもすみません。お待たせしました」

女性客「(ニコリともせずに)いえ、いいのよ」
女性客「(手にしていた本を示して)この本、盗もうかと思ったけれど止めておくわね」

映画「ノッティングヒルの恋人」




◆概要

【「誰がどう見ても嘘だとわかること・でたらめだとわかること」を口にして、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする】は「魅力的なセリフ、会話」を作るためのアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「ノッティングヒルの恋人」

▶1

本作の主人公は、ウィリアム(男性30代)。

彼は小さな書店を経営している


ある日、

・Step1:ウィリアムが女性客の相手をしていた時のことだ。

・Step2:ふと見ると――店の奥の方で万引きしている男がいるではないか!

・Step3:ウィリアムは「ちょっと失礼」と女性客に言い残し、男の方へ

・Step4:そして彼は「万引きなんて止めてくれ」「本を棚に戻して出て行ってくれ」と穏やかに語りかけた

・Step5:男はそれにしたがう。


間もなくレジに戻ったウィリアム。

・Step6:彼は女性客に謝罪した「どうもすみません。お待たせしました」。

・Step7:すると女性客はニコリともせずに「いえ、いいのよ」。そして手にしていた本を示して「この本、盗もうかと思ったけれど止めておくわね」

・Step8:直後、ウィリアムと女性客は破顔した


▶2

ご注目いただきたいのは、「この本、盗もうかと思ったけれど止めておくわね」という女性客のセリフである。

言うまでもないことだが、これは彼女の本心ではない。彼女は万引きなんて企んでいない。


では、なぜこの女性客はこんなことを言ったのだろうか。

理由は明白だ。

ウィリアムの謝罪に対して「気にしていないわよ」と伝えたかったのだ。そこで【「誰がどう見ても嘘だとわかること・でたらめだとわかること」を口にして、軽口を叩いたり笑いを誘ったりする】という技法を使った次第である。


この技法を使ったことで、「いいのいいの。気にしないでよ!」なんてストレートに言うのと比べて、ぐっと愉快なシーンになったといえるだろう。

また、この女性客がユーモアを解する魅力的な人物だと鑑賞者に伝わるようになった。これは大切なポイントだ。というのも、じつはこの女性客は本作のヒロイン。後々、ウィリアムと恋に落ちるのだ。彼女が魅力的な人間だと早くから鑑賞者に伝えておくことは極めて重要だ。


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