多様な<謎>で、特撮・怪獣ファン以外も惹きつけよう!!|「SSSS.GRIDMAN」の第1回【覚・醒】を分析する
※引き続き、アニメ「SSSS.GRIDMAN」の第1回【覚・醒】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。
【Point①】多様な<謎>で、特撮・怪獣ファン以外も惹きつけよう
<1>
鑑賞者の興味を惹き、彼らの目を物語に釘付けにして、そしてエンディング・最終回までついてきてもらうために必要なもの……それが<謎>です。
<謎>というのは、
・例1:主人公はこの先どうなってしまうのだろう?生き残れるのか!?
・例2:あんな強敵を相手に、主人公チームは勝てるのか!?いやまぁ勝つんだろうけど……どうやって勝つの!?
・例3:犯人は誰なんだ!?
・例4:主人公はどのヒロインと結ばれるのだろう?
……などなど。
<2>
本話にも、いくつかの<謎>がバラまかれています。
まず何と言っても、
・謎1:裕太はなぜ記憶喪失なのだろう?彼の身に何があったのだろう?
・謎2:グリッドマンとは何者なのだろう?
・謎3:濃霧の向こうの怪獣の正体は?
……この辺りですよね。
さらに、
・謎4:怪獣のフィギュアを作っている謎の人物の正体は?(それがアカネだと明かされるのは第2回。本話では隠されています)
・謎5:その人物の目的は?なぜ怪獣で街を破壊するのだろう?
……といった辺りも気になるところです。
<3>
いかがでしょうか?
「どの<謎>も気になるぞ!早く続きが見たいなー!」とワクワクする方も多いと思いますが……その一方で「正直なところ、あまり惹かれないなぁ」という人もいると思うんですよ。
具体的には、<特撮もの>や<怪獣もの>への関心が薄い層です。
彼らからすれば「んー……巨大ヒーロー?怪獣?よくわからないなぁ」という感じで、上述の<謎>では心が躍らないのです。
<4>
本作は特撮ドラマ「電光超人グリッドマン」を原作に持つ特撮ものであり、そして怪獣ものです。
「これらに興味のない層はそもそもターゲットじゃないやい!見なくて結構!」と切り捨てるのは簡単ですが……しかし、それでは間口が狭まってしまいますよね。
せっかくのアニメ化です。できることなら、特撮や怪獣に興味がない層にも見てほしいじゃないか!
では、どうすればいいのか?
<5>
そこで、この<謎>ですよ!
・謎6:裕太と六花の関係は?六花曰く「ただのクラスメイト。友だちですらない」とのことだが、これは本当か?
つまり、物語早々にこの<青春物語風・ラブストーリー風の謎>を仕込むことで、特撮や怪獣に興味がない層もきっちり惹きつける!
制作者の方がどこまで計算されていたのかわかりませんが(たぶん全部計算されていたのだと思いますが)、これ、じつに巧いやり方ですよねー!
【Point②】違和感のない<解説>が巧い
<1>
多くの物語には、<解説役>がいますよね。
ストーリーの流れや新キャラについて、鑑賞者にわかりやすく解説してくれるキャラのことです。
本話では、内海がこれに該当します。
<2>
まずご注目いただきたいのは、このシーンです。
---
「裕太がアカネからパンをもらう → クラスメイトの問川が誤ってパンを潰してしまう」という出来事があった日の帰り道。
裕太と内海が肩を並べて歩いている。
内海「大変だったなぁ、今日」
裕太「うん。でも、新条さんは優しいね」
内海はムッとした感じで「優しい!?優しいっていうか、憐れみみたいなもんだろ」
裕太はちょっと困惑して「ハハ。そんな線引きしなくても」
内海はさらにきつい口調になって「いや、するね!新条アカネはね、才色兼備、才貌両全の最強女子!クラス全員に好かれるという奇跡みたいな女だよ!」
裕太「……内海も、その新条さんが好きなの?」
内海は途端に取り乱し、口ごもる「いや、俺は別に近寄りがたいああいう感じのあれは別に全然、そう好きとかじゃ、あれじゃないけど……」
---
皆さん、もうお気づきですよね?
そう、内海は新条アカネに恋しているんですよ。
それゆえに、アカネに親切にしてもらった裕太に嫉妬している。だから、ムキになってベラベラとまくし立てる。
そして、それが<アカネというのは○○なキャラなんですよ>という鑑賞者への説明になっているのです。
<3>
続いて、このシーンにご注目ください。
---
裕太がグリッドマンと一体化して、怪獣と戦い始める。
すぐに内海が叫んだ「裕太はいま、グリッドマンになって戦ってるんだ!怪獣からこの街を守るために!」
その直後、パソコン(通称ジャンク)のアラームが鳴り響き、火花が飛び散った。
内海が再び叫ぶ「もしかして、ジャンクとグリッドマンが連動してるのか!?」
---
この内海の理解力の速さ!ちょっと笑ってしまうほどです。
しかし違和感はない。
なぜなら……そう、内海は特撮オタクなのですから。
そして、この内海の解説があるからこそ、私たち鑑賞者(特に特撮や怪獣ものに慣れていない鑑賞者)はすっとストーリーを理解できるのです。
<4>
以上をまとめると、
・1:内海は①アカネに恋しており、また②特撮オタクである
・2:だから、突然多弁になっても、異様に理解力が早くても違和感はない
・3:そんな彼のセリフが鑑賞者への解説になっている
ポイントは「違和感はない」という部分。
というのも、<解説役>の多弁っぷりや理解力の速さは、得てして不自然になりがちなものですからね。
しかし内海に関しては、<アカネに恋している/特撮オタクである>という設定がある。だから違和感はない。
これ、じつに巧いですよねー!
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