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主人公と敵の間に共通点があると、ワクワクしてくる!!|「SSSS.GRIDMAN」の第1回【覚・醒】を分析する

※引き続き、アニメ「SSSS.GRIDMAN」の第1回【覚・醒】を分析します。本記事の前に、以下の記事をご覧になることをお勧めします。


【Point①】主人公と敵の間に共通点があると、ワクワクしてくる


<1>

本作で展開されるのは、

主人公サイド:グリッドマン同盟(裕太、グリッドマン、六花、内海) + 新世紀中学生(サムライ・キャリバー、マックス、ボラー、ヴィット)

敵サイド:アカネ、アレクシス・ケリヴ

……の戦いです。


そしてごく大雑把に言えば、

・主人公サイド:連帯、包摂

・敵サイド:孤独、退屈

……と整理できるでしょう。


<2>

特に本話(第1回)では、この点が強調されています。

まずは、主人公サイドに注目してみましょう。


▶ 例1

本話冒頭、裕太は記憶を失っている。彼は途方に暮れる。

しかし六花や内海、クラスメイトらは、そんな彼を何だかんだ言いながらも温かく受け入れてくれる


▶ 例2

本話では、六花とその母の仲のよさが強調されている。


▶ 例3

グリッドマンと怪獣の戦闘シーン。

・Step 1グリッドマンは裕太と一体化して怪獣に立ち向かう

・Step 2:グリッドマンは苦戦する

・Step 3:そんな中、内海が怪獣の弱点を見抜く。そして、六花がそれをグリッドマンに伝達

・Step 4:六花からのメッセージを受け取ったグリッドマンが叫ぶ「聞こえる……聞こえる……六花と内海の言葉が!」。そしてパワーアップ。一気に怪獣をぶちのめす


ずばりチームプレイの勝利ですね。


<3>

一方、敵サイドはどうでしょうか?


・例1:物語冒頭、アカネはたった1人屋上で佇んでいる。彼女は退屈で死にそうな顔をしている

・例2:(これは第2回で明言されることですが)アカネは自室に引きこもって、怪獣を作っている。部屋には大量のごみ袋。そして、家族はいないらしい


<4>

とまぁ、本作は【主人公サイド:連帯、包摂】と【敵サイド:孤独、退屈】の戦いという構図になっている……ように見えるのですが、しかし。

よくよく考えてみるとそうは言いきれないところがあるんですよね。


だって、裕太は記憶喪失です。自分の名前や住所を覚えていない。六花や内海のことだって忘れている。さらに両親は長期出張中で、自宅では1人ぼっち。いくら周りが優しくしてくれようとも、裕太が孤独であることは間違いないでしょう

また第10回では、グリッドマンも記憶喪失であったことが明かされます。そう、彼も孤独だったのです。


つまりですね、【連帯、包摂】であるはずの主人公サイドの中心人物2人が【孤独】なんですよ!


<5>

嗚呼、このねじれ!

【連帯、包摂 v.s 孤独、退屈】というシンプルな対立に見せかけて、じつは前者の中にも【孤独】があるというこのねじれよ!


【連帯、包摂 v.s 孤独、退屈】というシンプルでストレートな物語も悪くはありませんが……様々な物語を享受してきた昨今の鑑賞者からすれば、どうしたって「安直すぎない?」「もうちょっとひねりがほしいなぁ」「もう少し深みがほしいなぁ」と物足りなさを感じてしまうものです。

それに対して、本作のこのねじれ!


この一筋縄ではいかないひねくれたところが、本作の魅力の1つだと思うんですよね。


【Point②】登場人物と鑑賞者の年齢差を利用した<ジェネレーションギャップネタ>


<1>

本話には、<昔のパソコンネタ>が3度登場します。


・【補足】ジャンク:ジャンクとは、六花の母が経営するジャンクショップの陳列棚に並んでいるPCのこと。ジャンク品だから<ジャンク>。メーカーの正規品ではありません。誰かが自作(改造?)したらしくゴテゴテした作りになっている。なお、グリッドマンはこのジャンクに宿っています。


▶ ネタ①

初めてジャンクを見た内海の感想「へぇー!昔のパソコンってこんなデカいの?この寄せ集め感、まさしくジャンクだなぁ!」


▶ ネタ②

グリッドマンに導かれ、裕太がジャンクの中に吸い込まれる。それを見た六花の反応「昔のパソコンって……怖っ!」


▶ ネタ③

グリッドマンが怪獣と戦う中、ふいにアラームが鳴り響き、ジャンクから火花が飛び散る。その時の内海の反応「昔のパソコンってすげぇなぁ!」


<2>

内海と六花は「昔のパソコンって○○!」と感想を漏らしますが、言うまでもなく、昔のパソコンが総じてゴテゴテしているわけではないし、人を吸い込むわけではないし、もちろん火花が飛び散るわけでもありません。

しかし、内海や六花にはその辺りがわからない。何しろ、彼らは2003年生まれの高校1年生(15~16歳)なんですから!


一方、我々鑑賞者は彼らより年上です。

まぁざっくり見積もって、大体の鑑賞者は彼らより10歳以上年長でしょう。いや……特撮や怪獣に馴染みのある人が鑑賞しているとすれば、中高年層も少なくないと思われます。


だから、私たち鑑賞者は内海と六花にツッコまざるを得ないのです。「それは昔のパソコンの特徴じゃないよ!(笑)」と。


<3>

要するにこれ、登場人物と鑑賞者の年齢差を利用した<ジェネレーションギャップネタ>ですね。


同種のギャグを考えてみると、

・1:ギャルキャラが、ゴムの緩んだ靴下を指差して「おっ!あたし、それ知ってるぜ!ルーズソックスってヤツだろ!昔流行ったらしいじゃん。お前、意外とオシャレなんだね!」と叫ぶ

・2:私たち鑑賞者(特に30代以上の鑑賞者)は、「違うー!それはルーズソックスではない!(笑)彼女はただ貧乏だから靴下を買い替えられないだけだよ!」とツッコまざるを得ない

……なんてのがあるでしょう。


皆さんも、登場人物と鑑賞者・読者の年齢差を利用したジェネレーションギャップネタを、ぜひ考えてみてくださいね!


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