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私の新入社員時代に感じた違和感

見出し画像 : 下関市の梨農園  秋は梨の収穫時期。大事な収穫の際に、新鮮な果実に傷を付けたりすれば、腐ったり、等級が下がったりする恐れもあり、慎重に取り扱う必要があります。

前回は学生時代について書きました。今回は、私が社会人になって感じた違和感を綴ります。

↓前回記事(2020年9月)「私の学生時代の"波"から得た経験」

【私の伝えたい事はこれだ!】

1.理想的な社会人生活と、現実のギャップで新入社員は悩む
2.最初の職場は新入社員の性格やキャリアを左右する大事な場所である
3.新入社員が育つか否かは、環境や風土で決まる

それでは本文を始めます!

【住めば都 郷に入っては郷に従えとは言うが・・・】


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↑ちょっとお堅い町から社会人生活が始まった

・辞令交付から配属まで

大抵の会社では新入社員集合研修が終われば、各々の分野・配属先が告げられ、新天地に赴く。私も、「どの分野になるのかな~」「配属先は街中がいいな~」などと緊張もあり、ワクワクしつつも辞令の交付を待っていた。

順番がきたら、A3くらいの厚紙を研修の研修指導員から受け取って、内容を確認する。まずは分野を確認したが、これも希望した分野ではない・・・  そして配属先、人口4万人の新幹線の駅から2時間程度の距離がある、ちょっとお堅い田舎町だった。おまけに、社員寮はインターネットが無く、風呂とトイレ(和式のみ)は共用・・・・ しかもキッチンもない6畳1間とは・・・  同じ配属先へ一緒に行く同期もいないようだ。

他の同期はどうなんだろう? 「あいつは街中の大きな事業所で、希望どおりの分野か」「しかも、社宅が1LDK オートロックでネット完備で個室付き 同期も多い職場」なんと羨ましい・・・・ 私は田舎で1人、オンボロ社宅で暮らすというのに。ちょっと同期に嫉妬も含め、「お前は好条件で恵まれてるな」と言った。

そんな同期は「すぐに転勤なるさ」と慰めてくれるが、この時点でもうすでに私のやる気は失せており、入社時点での元気な挨拶をする新人とは真逆になっていた。

・配属~見知らぬ街での生活で気づいた事

分野・配属先・居住環境のどれも叶わなかった私は、引っ越しの荷物を新天地の6畳1間で整理し、新生活に必要な物資のリストを作っていた。

配属先の街は物流コストからか食品・家具・ガソリンなどの物価が高く、コンビニも近くにない場所で、学生時代よりかなり不便な生活を強いられる事になった。「地元はもっと便利だったな。下関駅とか小倉に行けばある程度そろうから便利な街だったんだな」と地元の便利さに気づいた。

そう思えば、ますますこの不便でお堅い田舎町から抜け出したいという思いが強い意志となってくる。「ここは私のいるべき場所じゃない。新しく、家具付きでネット完備の社宅に暮らし、ある程度の規模の街で、自分の希望分野で働きたい」。

現実とギャップから、悔しさと現実の理不尽さに矛先の無い怒りと悲しみが生じていた。そして、その分野と環境のミスマッチ状態の打破だけが、新入社員1年目から1年後の転勤まで私のスローガンとなっていた。

【最初の職場は会社の全てである】

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↑この場所から逃げ出したい。そう神社で願った事が何回もあった。

これはなぜかと結論を言えば、新入社員は社会人経験が無い人が大半である。だから、仕事の基本・社会人としての姿勢・会社のスタンスはそこで学ぶことになるからだ。

私の会社では、新入社員に1年ほどメンターのような、教育担当が付く。その人との価値観の共通度がまず大切になってくる。

私の教育担当は配属先の街で育ち、1度は街中の事業所に配属されたがUターンして地元に戻ってきた、10歳年上の人だった。当然地元志向が強く、保守的な土地柄が反映された人だった。上長も、教育担当にその任を一任するようで、当面は教育担当が面倒を見るからと私に告げていた。所内の人間も全員で25人と少数事業所であり、地元の方が多く、平均年齢も50歳近くと年代に偏りがあるようだ。

その後、上長と教育担当から、会社のルール、システムの使い方など業務に必要なノウハウを教わった。それはいいのだが私にとって、「なぜこんな謎ルールがあるのだ?」と疑問を持った内容が4つあった

①新入社員は始業の30分前までに着席しておく            
②郵便や宅配処理は自分が出すわけでなくても、新入社員がやる      
③先輩のコップを食洗器に入れ、コーヒメーカを洗って帰る
④飲み会・スポーツ行事は強制参加である事

    これらのルールって「いつの時代だよ」「いくら保守的とはいえ、保守すぎるだろ」というもので、それがこの事業所の伝統となっているようだ。配属先・分野のミスマッチに加え、この教育担当のやり方はかなりやる気を失ってしまう。(負の感情の連続)

「それって強制されるルールじゃないですよね。就業規則にも書いているわけないですし。」と少し突っ込んでみた。そうすると、「いや、これは新入社員はそういうもんだろ」としか返答がなかった。

まず、①始業開始30分前までに来る事。教育者や上長は、確かに30分間までに必ず会社に来ているが、雑談しているだけで時間を潰しており、私とっては「時間の無駄だ」としか思わなかった。それが伝統で、当たり前だからだろう。逆に、私は朝に家で語学の勉強・読書をしたり、ちょっとした散歩をするのが好きで、現在も継続している日課だ。そのルーティンをそれで阻害されるのは自分として、とても遺憾なものだった。業務が始まるまでの時間はプライベートな時間であり、賃金も出ないし、拘束時間ではないというのが大前提だ。

「30分前に来い」というのも理屈は分かる。早く会社に来て雑談などで相互理解を深めるという趣向なのかもしれない。ここで相互の価値観の違いが認識ができていないと今振り返ると思う。

②の郵便・宅配処理。残念ながら、配属先は小さな事業所だったので、総務系(事務・経理)を行う部署がなく(以前はあったが廃止となった)、私の部署(技術系)にその業務が兼任となっていた。もちろん、その部署の社員は全員技術系社員であり、事務系の仕事をするスタンスがない。そうなれば、事務系の仕事は皆、やりたくないわけだ。結果、立場の弱い新入社員に普通の業務に加えて、その業務を押し付ける形態となってしまう。

積極的な姿勢で私が、「先輩忙しそうですから、これやっておきますね!」という風に仕事に取り組むのが、先輩・新入社員・職場にとっても雰囲気を明るくする相乗効果になる。だが、押し付けたい感覚が教育者・上長の言動、顔の表情から読み取れるため、そういう気持ちはなれなかった。

③コップの食洗器への移動、コーヒーメーカーの洗浄は4つの中で最も可笑しな内容だった。終了のチャイムがなる前になると先輩たちは流し台に汚れたコップを置いていく。各自が水でささっと洗って、直接食洗器に入れればいいだけなのに、なぜやらないのか・・・。コーヒーメーカーも、コーヒー会費を払って、コーヒーを飲んでいるわけでないのになぜ一番若いという理由だけでやらないといけないのか。しかもやる時間は、チャイムが鳴った後の終業後。賃金が出るわけでもない。

私がやらなかったら教育担当が、「なぜやらないの?一番若いんだからさ。前の子(以前の新入社員)はやってくれてたよ。君もやるよね?」と言った。以前は女性の事務員さんがいた名残なのかは分からないが、現代においてそれを新入社員にボランティアで尻拭いさせるのか甚だ疑問であった。(ちょっと違うが、性別で役割を押し付けるなんて事も悪式な伝統だと思う)

④飲み会・スポーツ行事は強制参加。この問題は、最近になって世間で議論されるようになった。配属先の事業所では、若手はみんな強制参加で、時には1万円以上の負担がある飲み会もあり金銭的に苦痛だった。1万円もあれば、下関から福岡に十分買い物や・行楽できるし、ライブに1回行ける相当の金額だ。スポーツ行事も、草野球やインディアカなどを強制的に、終業後の2時間ほど週1で拘束される事もあり、大幅な時間のロスとなっていた。私は、「予定があるので参加しません」と言ったが、教育担当や上長は「じゃあさ、幹事になってお金集めて店とか会場決めるのはやってよ」と参加しないかを嫌みのごとく返答された。

これも、所員数が少ない事や地元の人間が多く人事交流(転勤者)の少ない事業所だったが故、それが当たり前と考える人間が多かったことが要因だ。他所から来た人間はそれに疑問を呈す。だけど、幹事にさせて飲み会や行事から逃れられないようにする。それが当たり前と思う価値観は早々に変えられないと思った。

これらの①~④は所謂、悪式な伝統である。こういう伝統があると、「この会社はイメージと違うな」「この会社のすべての事業所はそうなのか」と新入社員は思うことになって、早期離職やメンタル不調につながってしまう。実際、私も悩んだ末に配属されて1か月後に2週間くらい休んでしまった。

他の街中の事業所(人事交流が多く、所員数200人以上)の同期に聞いてみると、どうやらそんな事は無く、《朝も好きな時間に出社・郵便処理などは輪番制・コップの洗浄は各自でやる・飲み会や行事は希望参加》と自分の事業所とは真反対だった。

人事交流や、若手が少ない部署では古参の先輩が圧倒的なパワーと主導権を握ることになる。そうすれば、この伝統が会社の当たり前になってしまい、それに疑問を呈さない社員は、それが普通・そんなもんだという文化が形成され、個人の生き方など尊重されない職場になってしまう恐れもある。まず教育担当・上長と私は、仕事の進め方や生き方の根底が違うので、相互にそれを最初に理解し、個人の気持ちを汲み取れる風土へ改善していく必要があったのだ。

【人を育てるのが上手い人や環境って?】

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↑時には力強く牽引し、一方で補機のように後ろから見守るように支えてくれる機関車のような上司は、新入社員にとって最も理想的な上司である。

最初の事業所の教育担当や上長は、私が意見したり質問すると、「そんなことは常識だ」「調べてわからないなら、私もわからない」だったり、この仕事がやりたいと言っても「お前には無理だ。レベルを考えろ」、研修に行きたくても「君はこの仕事片付けてからじゃないとダメ。その代わり私が教育するから問題ない」、ミスしたら「君がちゃんと検討せんからだよ」とすべて否定から入っていた。これらも、人事交流の少ない価値観などから来る、閉塞的な雰囲気によるものだろう。

最初の事業所に配属されて1年半経って、希望通りの場所、そして人数が多く人事交流の多い部署(県を統括する事業所)に転勤となった。(残念ながら分野の移動は叶わなかったが・・・インターネット付きかつプライバシーの守られた社宅となるなど福利厚生も改善され、勤務場所も希望通りでモチベーションはかなり上がった)

転勤した事業所には、悪式伝統のルールは無く、上長も数々の部署を渡り歩いた方でありゼネラリストでありプロフェッショナルだ。社員の教育を担当する専門職に就いている人もいた。

転勤先の上長は、聞き上手だった。まず何を聞いても、反論意見を出しても否定せずに共感の念で意見を聞いてくれた。ここで私は、「経験豊富な人だけあって、それだけの多様な価値感も持っている方だなあ」と尊敬の念を抱いた。新入社員時の教育者や上長と対応が180度違ったからだ。

私が間違っていたり、ミスをしてしまったときも「これは君だけの責任じゃなくて、承認した私の責任だ」と言ってくれたり、飲み会の参加でも「強制参加ではないから参加したい人だけでいいよ。家庭の事情とかもあるからね」、業務分担も「君はこの仕事をしたいって言ってたよね?今回任せてみたいんだけどチャレンジしてみる?」と積極的な提言を私にして頂けた。

それだけではなく上長は、ちゃんと担当する仕事に対して動機付けをしてくれた。上長は「私はこの業務の仕方と、この機械について勉強してほしいと考えている。だからこの担当業務でこの工程を組んだんだ」とちゃんと説明をしてくれる。動機付けがあれば、それに向かって取り組もうという目標が自分自身にも生まれてくるし、向上心ややるきが出てくる。

上長以外の上司も、私が最初の配置事業所の経験もあり、郵便処理や宅配処理のような雑用も1人でやってると、「私手伝うよ」と言ってくれる人も沢山いた。本当に同じ会社なのか・・・・この差は何なんだと思った。

私が仕事でわからない事を聞いたりも気軽にでき、上司が逆にわからない事は私が逆に補足するなど、相互に教え合う文化も形成されていた。

こういう環境が、私の最初の配属先だったら良かった。そう思い、転勤までの1年半はなんだったのか・・・と感じた。

(ちなみに後者の上司は、私が違う分野を目指している事を受け入れ、キャリア相談に乗ってもらえました。そして現在は希望通りの部署で働く事ができています。)

上記の事から、2つの事業所環境の差は明白である。前者は「人を壊す環境」で、後者は「人の個性を磨き能力を活かせる環境」である。

「人を壊す環境」に蔓延るのは、

・住居環境が十分整っておらず、プライバシー配慮がなされていない   
・職種のミスマッチ 個人の個性やノウハウを生かせない配属
・人事交流が少なく、価値観がアップデートされない環境   
・古い伝統に重きを置いて、新しいアイデアを取り入れない風土  
・個人の生活、人格を大切にしない   
・ペイするだけで、フォローの無い教育方法  
・何事も否定から入り、その課題や問題を否定する言動

人の個性を磨き能力を活かせる環境が持っている事は、

・住居環境が整っており、プライバシー配慮も十分にある
・個人の個性やノウハウが生かせる、その人にマッチした配属
・人事交流があり、日々多様な価値観が常にアップデートされる環境
・伝統と革新を交えて、社員が挑戦しやすい風土
・個人の生活や人格に配慮し、ワークライフバランスが適正である
・個人のレベルに合わせた教育 フォロー研修などの体制がある  
・まずは聞いて情報を共有し、課題をチームで解決していく体制

この環境の違いは、両親の背中を見て育つ子どものように、新入社員の今後の仕事の仕方・言動・性格・後輩育成の仕方にすべて作用してくると考えられる。特に、前者の負の要素が多くなれば多くなるほど新入社員の休職や離職、最悪の場合は自殺にまで発展する場合もある。最初の職場が果たす役割は限りなく大きい。

【まとめ】

これまで書いてきた内容を3つ振り返るが・・・

1.理想的な社会人生活と、現実のギャップで新入社員は悩む
2.最初の職場は新入社員の性格やキャリアを左右する大事な場所である
3.新入社員が育つか否かは、環境や風土で決まる

これらの事を新入社員や若手社員を育成されるときは、念頭に置いて頂ければと思う。きっと、別の視点で物事を見るきっかけとなるだろう。

・もうちょっと書かせて!

「本当に事業所人数と新入社員の離職率は関係しているんだろうか?」「そもそもデータあるの?」そう気になる方もいるかもしれない。

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↑新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)厚労省HPより

厚労省の資料を見ると、やはり事業所の人数が少なければ少ないほど、大卒・高卒就職者に関わらず離職率が上昇していることが分かる。本記事で書いたように、人数が少ない地方の事業所では、上司の価値観の停滞や若者にとっての居住環境の未整備などの課題があるのではないだろうか。

それらを改善し、街中と地方で格差の無い環境をどう整えていくのか。また、多様な価値観や個人を大切にする人材をどうやって育てていくのか。

これらが今後の社会や企業に普遍的に求められ、課題を達成できた企業は離職率が減り、優秀な人材が確保できる。そして課題を達成できない企業は、離職や人材不足の負のスパイラルに陥る。

さらに、今後はIT技術の活用・・・テレワークの推進・・・業務のシステム化・・・難病や障害などを持った人の治療と仕事の両立・・・仕事と育児の両立・・・外国人人材の受け入れ・・・副業の一般化などより企業はさらなる意識改革や技術革新を迫られる。

現在私は、自身が新入社員だった頃の違和感がきっかけで、心理学のセミナーやアンガーマネジメントの習得、キャリアアドバイザーの指導を受けたり、LGBTQIA+の人との対話、外国文化の体験、IT技術の資格やセキュリティノウハウの取得など様々な事柄にチャレンジしている。

たくさんの価値観を受け入れ、形成していく事で他人を尊重できる人間となれる。そして、新入社員のニーズに気づき、自身が管理職となった際にもその考え方が活かせると考えているからだ。

昔は、テレビや新聞などの決められた価値観がスタンダードであったが、令和時代はSNSで情報を得る事がスタンダードとなり、日本国内でも1億2千万の価値観があり、世界では80億もの考え方がある。相互の価値観を認め合い、「聞き上手は話し上手」な人が育ち、ジェネレーションギャップや各々の個人的な事情を理解できる人材が増える世の中になるよう、自らの視点をこれからも増やしていくつもりだ。

★最後までお読みいただき、ありがとうございました。★ 




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