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【週末投稿】つれづれ有用植物#67(アブラナ科ワサビ属:ワサビ)

ワサビは日本原産の数少ない香辛料の一つです。
食べるものが足りない時代に、命がけでいろいろな山の植物を試し、時には命を落とした先人たちの努力や偶然でみつけられたのだと考えていますが、意外にも川辺でピリッと辛い茎は葉を容易に見つけて利用され始めたのかもしれませんね(笑)。

飛鳥時代の遺跡で見つかった木簡にワサビに関する記述がある事から、古くから日本人はワサビに注目していたようです。その頃には既に庭園で野菜や薬草が栽培されていた可能性を示す発見で、木簡はわさびを保管した容器にくくりつけた「ラベル」であったと考えられています。

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本格的に日本で栽培が開始されたのは、江戸時代初期と言われています。美食家で当時としては長生きしたといわれる徳川家康に献上したところ、その風味が大変気に入ったそうで、わさびの葉が徳川家の葵の家紋に似ていることから門外不出にしたそうです。

わさびが現在のように寿司の薬味として使われだしたのは江戸時代の文化・文政年間(1804-1830)のころだと言われています。当時は現代のように冷凍や冷蔵の設備がない時代でした。経験からわさびが食材の生臭みや細菌の増殖を抑えて食中毒の予防することを知って、活用していたと考えられています。

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最近は健康ブームや日本食ブームで寿司を始めとして海外でもワサビのピリ辛を体験できる所が増えてきました(本格派を追求しない多くのお店は、ホースラディッシュという代替植物を利用)。初めて体験する外国の人たちは、すぐに好きになる人も居れば、ツーンとくる刺激を敬遠する方も多い様ですが、ワサビは苦手でも辛い料理自体は好きな人が多い様ですね。嫌いな人から言わせると、蓼(タデ)食う虫も好き好きと言う事でしょうか。

中国で日本食がヒットし需要が伸びている事もあって、ワサビは輸出される様になってきましたが、最近は育成条件が難しいと言われたワサビが海外生産に成功しイギリスやオーストラリア、カナダで栽培が盛んになってきました。

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同じアブラナ科ですが、同じ様に根茎部分を擦ることで、「ツーン」とした刺激臭がする西洋ワサビ(ホースラディッシュ)という安価な作物があり、ワサビの代用にも利用されています(日本では主に北海道で生産)。西洋ワサビと分ける意味でワサビを「本ワサビ」と呼ぶ事がありますが、練りワサビの加工品などは、50%以上ワサビが入っている場合、他の添加物の内容表示をしなくても良い規則になっているので少量(全体の50%未満)の西洋わさびを混ぜても「本ワサビ」と表示できる事に注意が必要です。

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ワサビは細かく擦る事で、酵素が酸素と反応して初めて、独特の香りを作り出します。そのため、よりキメが細かく擦る事が出来る「鮫皮」のおろしが最高と言われています。

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ワサビの清流生育には、気温が8〜18℃、水温は10〜14℃と1年にわたって変化の少ない流水が必要で、この栽培方法を「水わさび」と呼びます。普段お寿司やお刺身の薬味として利用しているものは、この水わさびの根茎部分です。この方法ですと栽培できる場所が限られますし、栽培管理も手間暇がかかります.

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これに対して、直接水を利用しないで、保育から収穫までを畑で行う方法を「畑ワサビ」と呼びます。水ワサビに比べ品質は落ちますが、温度と湿度管理が整えばどこでも栽培することが可能です。ホームセンター等でポット鉢で販売されているのは「畑わさび」になります。

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■合わせて読みたい
#65(アブラナ科セイヨウワサビ属:ホースラディッシュ)

★#46(タデ科イヌタデ属:ヤナギタデ)
Let's Green Life 日本原産のピリ辛ツーン。ワサビ。


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