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【国を持たない最大の民族 クルド人⑤[トルコによる越境軍事作戦 終]】

こんにちは。

ここヨルダンではうだるような暑さも落ち着き、朝晩はとりわけ冷え込むようになりました。
夏場は全く降らなかった雨も、このところ明け方にどっと降り、その激しい雨音に叩き起こされることもありました。
これから2月くらいまでは更に気温は冷え込み、雨の日も増えていくことになります。


それでは、前回と前々回の投稿はこちらからお願い致します。


10月9日にトルコ軍がシリア北東部のクルド人居住区に向けて越境軍事作戦を行ったことについて、これまで数回に分けてまとめてきました。

そして前回の投稿では、米国の仲介でトルコ側が一時的に停戦することで合意に至ったところまでまとめました。

今回はその後の経過について綴っていきます。


【5日間(120時間)の停戦後】

10月17日、ペンス米副大統領がトルコを訪問し、仲介の元で5日間の停戦合意がなされました。

この合意には条件が付けられています。それは、シリア北東部のクルド人勢力が国境から離れることです。

要するに「トルコ軍は一時的に戦闘を中止するが、もし5日間以内に撤退を完了させなければ即時攻撃を再開する」ということです。

トルコのエルドアン大統領は実際に「クルド人部隊が両国の国境付近にある安全地帯から撤退しなければ、軍事作戦の再開も辞さない」と警告を促しています。

ここまでが前回の内容です。

その後、これに対してクルド人側はどう回答したのでしょうか。


【クルド人勢力の撤退】

停戦の期限となっていた同月22日。
シリア北東部のクルド人勢力がトルコとの国境地帯から撤退を完了したという米国の発表を受け、トルコは作戦の終了を表明しました。

また同日、トルコのエルドアン大統領はロシアのプーチン大統領と会談を行い、シリアのクルド人戦闘員を国境地帯から退けるための共同巡視を開始することで合意しました。トルコはこの合意により、安全維持を名目として国境沿いのエリアを掌握し、シリア領内に重要な拠点を確保することになります。

クルド人勢力はこれまで主要拠点としていたエリアからの退去を余儀なくされ、これは自治独立の夢がほとんど潰えたことを意味します。
10月9日に始まった戦闘は終結した形にはなりましたが、シリア国内のクルド人にとって苦難は今後も続いていきそうです。

今回の戦闘では、トルコとクルド人民兵組織の衝突を実質的に抑止していた米軍の撤退が引き金となりました。しかし、シリア北部の油田があるエリアに限っては駐留部隊を残留させています。
IS掃討作戦において、主要な地上部隊として米軍と同盟関係にあったクルド人勢力を裏切ったとして、トランプ大統領は今もなお批判にさらされています。

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