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小説、漫画、アニメーション、ビデオ・ゲームなどの表現に対する読解を主に書いています。 …

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小説、漫画、アニメーション、ビデオ・ゲームなどの表現に対する読解を主に書いています。 わたしが公開している記事や下書きは、一部でも全文でも、複製や転載に許可は要りません。

最近の記事

作・どのみち孤独、漫画「猫の無関心」を読む

・ せこは一人の男子に、付き合って、と言い寄られるが、相手のほうに向きもせず、猫を撫でながら、いらない、猫のほうが可愛いから、と断る。 そのことを聞いたうづらは、よく話していたから、今度こそ付き合うと思っていた、と驚く。せこは猫を抱きながら、話していただけで興味はない、猫は可愛いけど人間は愚かで嫌い、と答える。 せこの猫好きは昔からで、小学生の頃に、道路の脇で死んでしまった子猫を見てからだ、とうづらは思い返す。せこは抱いている猫を、触ってみな、とうづらに向ける。うづらは

    • 「死にたい」考

      死にたい、と言う人がいる。SNS以前の時代なら、その言葉は、随分と身近な人か、とても有名な人の言うものしか、人々は聞くことがなかったはずだ。 それが今では、よく知らない人の言う「死にたい」まで、人々は聞けるようになった。みんな、身近でなくても有名でなくても、誰でも電子的な通信ないし出版放送に手軽気軽に参加でき、言葉を、不特定多数を相手に、届けたり受け取ったりできるようになったからだ。 そして、世の中には案外と「死にたい」と言う人が、ごろごろと転がっていることに気付かされる

      • 作・どのみち孤独、「ともだちになった魚」を読む

        ・ リコは、学校で飼育していた金魚の、どすこい金太郎が死んでいることに気付く。花壇に墓を建てて金太郎を埋葬したリコは、わたしもつらいが小学生だから授業を受けに行かねばならない、と墓前で話す。 教室へ向かいながらリコは、自分が餌の量を間違えていたことが金太郎の死因ではないか、と考えている。そして、わたしがもっとしっかりしていれば、と悔いながらリコが席に着いた時、その後ろを、手足が生えてランドセルを背負った魚が通り、リコの隣の席に着く。リコは魚に向かって、なんだおまえ、気持ち

        • 作・on、漫画短編集「あと少しで人魚姫」を読む

          ・あと少しで人魚姫人間と人魚のハーフである主人公は、人間として生きてきたが、17歳になったら、人魚になるかも知れなかった。姉も兄も人魚にならなかったので、自分も人魚にはならない、と思っていたが、下半身には人魚化の徴候が現れ出していて、それを主人公はいくつもの絆創膏を貼って隠している。 ある日、主人公の意中の男子である日高は、主人公と一緒に下校して浜辺を歩いていると、下半身が絆創膏だらけであることを心配する言葉を掛けてくる。主人公は、今は格闘技に嵌まっている、と誤魔化す。

        作・どのみち孤独、漫画「猫の無関心」を読む

          作・どのみち孤独、「喋るエビフライ」を読む

          ・ 森林の中の小川に立つ主人公は、継父とはぐれながらも、夏休みの自由観察を片付けるために、面倒臭さを押して、適当に観察対象を採取してさっさと帰ろう、と捕り網を構える。 主人公の足許には、死んだ両親に、いつか二人のような素敵な家族を見付けるために旅に出る、と誓うエビがいる。主人公はそのエビを捕まえる。そこへ、はぐれた継父が現れ、あちらに大きいカブトムシがいたことを伝え、観察対象にどうか、と訊くが主人公は、今捕まえた、喋るエビを見せ、観察対象を既に手に入れたことを伝える。

          作・どのみち孤独、「喋るエビフライ」を読む

          山本さほ作、漫画「いつもぼくをみてる」を読む

          第1話 あいつが町に現れた(第1巻)成人して結婚した吉川(きっかわ)は、妻と一緒に子供靴売り場に寄り、これから産まれてくるだろう子供の靴を買う。そこで妻は、子供の頃に姉の靴を隠してそのまま紛失し、それを嘘で誤魔化したことを思い出す。あの時のことを誰かに見られていたら、という妻の言葉に、吉川は、誰かに「見られていた」自分の小学生時代を思い出し始める。 吉川は友人達と遊ぶための資金に難儀していたところ、神社の賽銭箱の手前に百円玉が落ちているのを見付け、誰にも見られていないことを

          山本さほ作、漫画「いつもぼくをみてる」を読む

          反出生主義とその支持者達についての考察と説明。そして、適切な対処法。

          先ず始めに頭に入れておくべきは、反出生主義は自閉症スペクトラム障害と強い関連があるようだ、ということです。 断っておきますが、筆者は医療医学に詳しい者ではありません。しかし、そこそこの期間、反出生主義者のSNSでの発言を観察してきたことで、そのような感触を得ました。勿論、それは素人判断の域を出ないでしょう。 なので、これから書かれる内容は、素人判断に基づくもの、となりますが、医療行為でもなく医学的評価を下すことでもなく、反出生主義とその思想の支持者達の性質を説明し批評する

          反出生主義とその支持者達についての考察と説明。そして、適切な対処法。

          天海杏菜作、漫画「ゲロクズゴミクソ少女墨田の幸福」を読む

          ・ 主人公は人知れぬ屋敷の中で、吸血鬼に傳いている。吸血鬼は主人公のことを侮って言うが、主人公はそれ以上の言葉で、自分自身を侮って言う。その表情は興奮している。 吸血鬼は美しい処女の生き血を要求する。主人公は、自分も処女だ、と申し出るが、吸血鬼は、美しさがない、と却下する。主人公はしぶしぶ血の調達に行こうとする。 吸血鬼は、司法の行き届いた現代では他人から生き血を集めるのは簡単ではないはず、と考え、どうやって生き血を集めているのか、と主人公に訊く。主人公は、金銭で買える

          天海杏菜作、漫画「ゲロクズゴミクソ少女墨田の幸福」を読む

          倉樹楽作、漫画「紅黄草の盲目」を読む

          ・ ミキは「私の夢」という題名の作文を発表し、幼い頃は漫画の登場人物に憧れたが、今は航空関連の職業人に憧れていることを明かし、空を飛ぶことが夢だ、と話す。 主人公はミキに見惚れ、交際したい、と考えているところで、消ゴムを落としたよ、と後ろの席の女子に肩を叩かれる。その女子は、主人公の肩に妙な硬さがあったことを心配するが、主人公は誤魔化す。 放課後、主人公はミキに、幼い頃のように一緒に下校したい、と伝えるがミキは断る。 その後、主人公は公園で絵を描いている。すると、マコト

          倉樹楽作、漫画「紅黄草の盲目」を読む

          タイザン5作、漫画「タコピーの原罪」を読む

          第1話(第1巻) 2016年のきみへ しずかはタコピーという存在を受け入れるが、タコピーが持つ力が自分を救う、とは信じていない。タコピーは始まりの時間を写真に記録する。やがてしずかはチャッピーを失う。そのことについてしずかは、友達と喧嘩した、と表現する。タコピーは「友達」と和解するための道具を差し出す。しずかは、タコピーの知らない間に、その道具で首を吊って死ぬ。タコピーはその死を取り消すために、始まりの時間に戻り、しずかの傍にいることを決意する。 第2話(第1巻) タコピー

          タイザン5作、漫画「タコピーの原罪」を読む

          タイザン5作、漫画「讃歌」を読む

          ・ 主人公はただ一人、学校に通い、そこにただ一人いる、人造人間の教師から、人類の歴史の授業を受けている。 ある日の下校時、主人公は新人類のタタナに会い、一抱えもの数の果実を貰う。その夜、十年前から更新が途絶えたニュースサイトを端末で閲覧しながら、主人公は貰った果実を食べる。 明くる日の授業の後、主人公は教師に「今日私お化粧してみたんだけど どお?」と訊く。教師は、生殖狙っているのか? 今時流行らないぞ、と素っ気ない。主人公は気落ちしながら、教師と別れて下校する。 帰宅

          タイザン5作、漫画「讃歌」を読む

          あるびの作、漫画「マユミの肉」を読む

          ・ 「女の子の肉を楽しめる店」に所属する女性の主人公は、同じく店に所属する女性の、マユミを羨んでいる。マユミは可愛く、客へのもてなしが上手く、また客が何を求めているかにも敏い。そして、自分の提供する肉に自信と拘りを持っている。 そんなマユミに、主人公は世話を焼いてもらい、客からの評判を上げる。 マユミは日毎に厚着になっていく。自分の肉体を切り売りして欠損した部分を、隠して着飾り、客の好みに応じるためだ。時には、欠損がはっきり見えるのを好む客もいるらしい。マユミの客は、着

          あるびの作、漫画「マユミの肉」を読む

          すあま作、漫画「憧れに、袖を。」を読む

          ・ 芹那は、学校の内では校則の範囲内で、ロリータファッションを楽しんでおり、学校の外では校則を破って、ロリータファッション専門店で働いている。 主人公は、芹那が美人で優等生だから規範に縛られず、ロリータファッションを着ることも許されるのだ、と思っているが違う。芹那はロリータファッションを楽しむために、上手く世間の規範を掻い潜っている。 芹那も世間の規範からは自由でない。だが、自分の好きな気持ちに正直であるために、自由であろうと努力している。一方、主人公は自ら進んで規範に

          すあま作、漫画「憧れに、袖を。」を読む

          藤本タツキ作、遠田おと画、漫画「フツーに聞いてくれ」を読む

          https://shonenjumpplus.com/episode/3270375685315853257 ・ 冒頭、中学時代から好きだった、と告白する主人公にヒロインは素っ気ない。ただ、告白の曲をYoutubeに投稿したから、それを聞いてから返事をくれ、とアドレスを記した紙を差し出す主人公には、少し面食らった様子だ。 後日、主人公が告白の曲を歌う動画が、揶揄される形で、教室で話題になっている。ヒロインは、動画のアドレスを自分が拡散したことを告げ、ついでに主人公の告白

          藤本タツキ作、遠田おと画、漫画「フツーに聞いてくれ」を読む

          キリエ作、漫画「スターチス」を読む

          ・ 主人公の正体は、何百年も生きてきた、人になり代わる、人ならざる者らしいが、その内面はとても人間臭い。 色々な人間になり代われても、そこに自分は成立しない。成立しない自分など、誰にも愛されないから、死んでしまおう、などと、主人公は考える。 死ぬために出掛けた「天国のような山」で、主人公は、首を吊って死んでいる亜希を見付ける。 主人公は亜希の遺書と記憶を確かめる。亜希は虐められっ子で、弱くて情けない自分ではない、他の誰かになりたくて、なれなくて自死したようだ。 そして

          キリエ作、漫画「スターチス」を読む

          タイザン5作、漫画「タコピーの原罪」第16話を読む

          ・ 時間が戻った先にタコピーの姿はない。だが、タコピーの意思だけはそこにあって、しずかを見守り、話し掛ける。その言葉は、しずかには届いていない。 しずかはタコピーがいたことを覚えていない。しかし、タコピーは時間が戻る前のことを、しずか達と過ごした時間をしっかりと覚えている。 まりなはしずかの髪にドクダミがないことに言及する。それに対し、周囲の女子達は、まりなは何を言っているのか、と怪訝そうだ。 他の女子達が覚えていない、タコピーの存在の痕跡を、まりなは微かに覚えている

          タイザン5作、漫画「タコピーの原罪」第16話を読む