父のおにぎりと母のなす漬け
母は、若いころ調理師をしていたと聞いたことがある。
遠洋に出る大きな船に乗って、乗組員の食事を作っていたらしい。
お酒を飲んで、おかしくなっている母ばかり見ていた私には、想像ができなかった。
台所に立っていたとしても、くわえタバコとワンカップがお友達。
しかし、ごくごくたまに、バラの花の形に盛り付けてあるハムとか、切れ目がたくさん入って、おしゃれに変化したリンゴとかを目にしたときは、信じてみてもいいのかな、と思ったりもした。
お弁当が必要なときは、たいてい父が作った。