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エンジェルブルー

とある天使は大罪を犯した。その罪は重く、口に出すことも、記すことも許されない。天使は神の怒りを受け下界に堕ちた。暗く、欲にまみれた下界と呼ばれる場所には人間が住んでいた。下界を暗くし、戦によって海と大地を殺してきた身勝手な種族だ。そんな世界に堕ちた天使に行き場はない。人里などもってのほかだ。天使は自分が生きられる場所を必死に探した。森はどうだ。枯れた大地に住む猛獣どもは日々飢えていた。それが同族、天使、人であろうとその肉を喰らおうと牙を尖らせる。海はどうだ。海もまた濁り、魚は死に絶え腐臭を漂わせていた。土の中、草木、平地、山、砂漠、堕ちた天使に誰も寄り添う事はなかった。下界を彷徨い、気づけば天使は人里へ降りていた。絶望のあまり、どうなっても良いと考えてしまったのだ。そして、天使は貴族に拾われ弄ばれた。腕を折られるのは当たり前、針を刺されることもしばしば。天使は人間の手のひらに収まるほどの大きさ、扱いは虫と同等なのだ。だが虫と違い天使が死ぬ事はない。例え四肢を失おうともまた再生するか繋ぎ合わせる事ができる。焼かれても、溺れさせても、訪れるのは死ではなく虚無のみ。やがて貴族は遊びに飽き、天使の手足を切り落とし瓶に詰めた。天使は手足を繋ぎ合わせたが、小さい穴に無理やり押し込められたためもう出られる事はなくなった。でもそれでいい、ここが1番安全だ。もう誰にも弄ばれる事はない。天使は観賞用として倉庫に押し込められる。まるで荒屋のように脆い倉庫であった。瓶詰めの棚には目玉や虫、見るにおぞましいものしかなかった。そんな中で、天使は倉庫の隙間から差し込む一筋の光を見た。曇りなき青空だ、かつていたあの世界を思い出す。


もう戻れない事はわかっている。だが天使は贅沢にも、もう一度輝ける日を待った。



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