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課長がなすべきことVol.1 : Build strong communication flow -タフなコミュニケーションフローを築く

これは会社員、取り分け中小企業で働く方々で、マネージャーになる方(いわゆる管理職)、目指している方に視点を置くテキストです。

1.新たなコミュニケーションの流れに向き合うべきポイントは?

課長デビューを果たしたその日から自分の下で働く部下を持つことになります。
自分が部下の時代、仕事の指示や報連相は課長と自分の一本線で成されていました。
ところが課長になれば、自分と上司の一本線は変わりませんが、自分とメンバーの線はその人数分生じ、ここに部下時代にはなかった指揮系統が生まれました。
今思えばこの時、先ず、この指揮系統におけるコミュニケーションの流れをしっかりと理解し実行していたら、”PDCAサイクル”を回すという基本マネジメントの実行にもスムーズに馴染めていたかもしれません。
”PDCAサイクル”については後に取り上げて行きますが、組織ではPDCAサイクルにおけるコミュニケーションの流れの質がとても重要りなります。
人間で例えると、この質は血液循環の良し悪しのようなもので、血行不良の主な原因がストレスや運動不足と言われているように、コミュニケーションの流れの質の悪さもこれに似た因子で起こります。
つまり、外から刺激を受けた時に生じる緊張状態を意味するストレスは、外から来る情報に対し「自分に義務が生じるのか?」とどのような情報か常に確認しなければならないという緊張状態に置き換えられます。
次いで、運動不足はコミュニケーション不足、もう少し噛み砕けば組織における情報伝達行動の基礎代謝の悪さに置き換えられるでしょう。
これらのことから指揮系統におけるコミュニケーションの流れの質をより良い状態にするには、情報にスムーズに対処出来るようにコミュニケーション経路を明確にすること、組織コミュニケーションの代謝を促すことがポイントになります。
では、このポイントについて整理します。

2.ハイアラーキーでのコミュニケーションの流れは決まっている

中小企業とはいえ課長という職制に就いていれば階層型組織に属しているでしょう。(この先も記す内容は階層型組織”Organizational Hierarchy”における課長についてということになります。)
よって階層型組織でのコミュニケーションの流れは下方向と上方向、及び横方向となります。
課長である自分を基に階層構造を整理すると、直ぐ上の階層は、企業規模によっては取締役が部門長兼務といった形で上司の場合もありますが部長層が一般的、そして下の階層は課員層として自分の部下のいる層になります。
これら階層におけるコミュニケーションの流れを見てみると、部長層から課長層へ、課長層から課員層への下方向とこれを逆にした上方向、横方向については層を跨ぐ概念はなく1層のみの場合もあれば3層内を同期してコミュニケーションが図られるケースもあります。
このように課長を基準にして原理的に3つのコミュニケーションの流れが存在しています。
次に、企業で仕事をするときに交わされるコミュニケーションにはどのよう種類があるかDo系で挙げてみると、指示する、命令する、通達〃、報告〃、連絡〃、相談〃、提案〃、調整〃、協議〃があります。
ほかにもあるかもしれませんが、言い方の違いでこれらの何れかに属するでしょう。

3.課長を取り巻く3つのコミュニケーションの流れ

さて、次にこれらをコミュニケーションの流れに当てはめてみるとどうなるでしょうか。
先ず、下方向Do系は指示、命令、通達の3つ、これは上意下達として良く知られていることなので、なぜそうなのかは説明するまでもありません。
報告はどうでしょうか。報告の言葉の意味は[ある任務を与えられた者が、その経過や結果などを述べること。-引用: goo国語辞書]なので、任務を与えられる人は部下ですから、部下から上司への上方向です。
提案や相談も上方向になります。それを受けて何かを決定するのが上司だからです。
調整や協議はどうでしょうか。この二つは双方とも意見や主張などを整理し妥協点を見出したり、バランスを取ったりするために話し合う行為、つまり上意下達のような主従関係に則さないので、この2つは横方向に属します。連絡もそのような主従関係には則さず、上司や部下に関係なく誰しも情報を発する側、受ける側になり得ます(ゆえに横方向)。
連絡とは、知らせなければその人が困ることになったり、その人にとって有益になったりする事実情報を知らせることが目的です。
よくスーパーマーケットで「業務連絡、業務連絡○○番です」と放送が流れるケースがありますよね。あれは、雨が降ってきたとか、万引き注意とか、知らせるべき人たちに知らせている行為と言えるでしょう。
かくして、下方向:指示、命令、通達・上方向:報告、提案、相談・横方向:連絡、調整、協議という形でコミュニケーション経路が明確になりました。これらを分かり易く捉えるため図解1で模式的に表します。

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図解1のように課長、部下共に発すべき情報を区別して発信することで、受け手の情報に対する認識をアシスト出来ます。
ここで具体例を取り上げてみましょう。
現代社会における仕事の情報媒体は、Microsoft TeamsやSlackといったビジネスチャットツールも導入されつつありますが主流はメールです。
ところでこのメールについて、情報を発信する件数より情報を受信する件数の方が多くありませんか。
上下方向の情報のほかに、自分の仕事に直接関係せず後から読んでも差し障りのない情報など連絡に分類される情報が積み上がって行くのが実態ではないでしょうか。
その中で、上司の指示と部下の報告によるチェーンメールは、自分の仕事に係ることなので読み落としなく循環しなければいけません。
読み落としの予防策について、私の場合はメールの文頭タイトルに【指示事項】、【通達事項】を付け部下への視覚認識をアシストしています。報告はRe.【指示事項】というタイトルで返信されるので、自分への視覚認識にも役立っています。
また、ビジネスチャットツールの一つMicrosoft Teamsの場合、使用経験はまだ浅いものの、仕事に応じてチームチャットを形成でき、コミュニケーションの流れ自体が単位化されることで情報の認識が容易です。
こうしてコミュニケーション経路を明確にすれば、不明確な場合に比べメールでも仕事の優先付けが出来るなど情報への対応がスムーズに進む環境を作れます。

4.課長は伝書バトにあらず

これではまだ、指揮系統におけるコミュニケーションの流れの質をより良くするための前提に過ぎません。
残りのポイントである組織コミュニケーションの代謝を促す作用が必要で、ここで課長のすべきことが、本巻の中で一番重要なこと、かつ課長の腕のふるいどころです。
図解1にあるように課長は自分の上司と部下の間に介在するフィルターの役割を担っています。
これを上下方向のコミュニケーションの流れで解説すると、課長は上からの通達や指示の情報をフィルタリングし、必要な結果を得るためにやるべき自課の仕事は何かをクリアにします。
更にその仕事をフィルタリングして部下への仕事の分担をクリアにし、部下に指示としてアウトプットします。
また、部下の仕事状況を報告により把握し次の指示につなげるほか、課長から上司への報告では部下の報告情報をフィルタリングして上司に報告すべき内容を開示します。
仮に、自課のやるべき仕事が課長の中でクリアになっていなければ部下への指示が曖昧なものになり、ボヤっとした指示が各部下の仕事の境界線を曖昧にしてダブり作業を招いてしまうことも無きにしもあらず。
また、仮にフィルタリングせずに、上司からの指示を部下に丸投げしたり、部下の報告を上司に丸投げすると大混乱に陥りますよね。
例えば4課分を束ねる営業部長が各課に「○○四半期の予算見込みが△10%となるため緊急対策として来月・再来月の予算達成を合算で計画より10%引き上げる、各課は引き上げプランを□□日までに提案せよ」と課長層を無くした状態で部下に通達したらどうなるでしょうか。
部下は誰が何をいつまでにどうすれば?と、これだけでも大混乱ですね。
階層型組織でこれが成り立つのならとっくに広く浸透しているはずです。
実は階層型組織では階層を1つ跨ぐと跨ぐ前の情報量の約3割が失われるそうです(クリス・アージリス,アメリカのビジネス理論家・ハーバードビジネススクールの名誉教授)。
ゆえに課長のフィルターとしての役割は必然なものと考えられます。
かくして、課長は、上司と部下のコミュニケーションを悪流にすることで不要な仕事を生むなどして仕事の能率を低下させないのは当然で、むしろこのフィルターを駆使して部長層や経営層と課員層の間のコミュニケーションの流れが強靭(きょうじん)なものになるよう築いて行かなければなりません。
このようなフィルターとしての役割は課長の裁量です。くれぐれも課長が上司と部下の間の伝書バトにならないよう肝に銘じておきましょう。

The end of Vol.1

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