トッド・フィールド監督『TAR/ター』ある指揮者の栄光と没落
<作品情報>
<作品評価>
70点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆
<短評>
おいしい水
ケイト・ブランシェットは言わずもがな素晴らしく、彼女のためにあるような役でした。ジェンダーレスな服装、強気な態度と冷たい美貌。終盤の演技は圧巻です。
演出も非常に研ぎ澄まされています。2時間40分ほどとかなり長いですが、映像的な工夫がそこかしこにあり飽きません。ミステリアスなシーンが散りばめられ、アート系ホラーのような雰囲気があります。現実と虚構をシームレスにつなぐ手腕は流石です。
栄光の頂点にいるリディアが無残に転落していく様を彼女に寄り添って描きます。非常に残酷。同時に彼女が本当にはどういう人物かというのが分かっていき、彼女自身の残酷な性格に困惑させられます。
一方、否定的な意見も少なからず出ているのも事実で、それも分かります。加害者側が男性、被害者側が女性という話は死ぬほどあり、加害者側を女性のレズビアンとすることで面白みを持たせようとしたのでしょう。
しかし、なぜ現実に未だ限られる「レズビアン女性首席指揮者」を性加害の行使者として描かなければいけなかったのでしょうか。これは他の方がブログで書いていたことですが、これは一昔前にあった「ゲイの連続殺人犯」と変わらないのではないでしょうか。
被害者をあまり描かないことでリディアがしてきたことをミステリー的に推理させる、というしかけは面白いです。しかし、加害者に寄り添って描き、しかもそれはレズビアン女性、というのは、逆にそういう存在を特殊視しているようなバイアスを感じてしまいました。
映画としては非常に完成度が高く、芸術的に優れた作品であるだけに、なぜ主人公をこのような人物にしたのかが引っかかってしまいます。素直に褒められない、というのが正直なところでした。
吉原
物語が面白いかどうかはさておき、観てよかったと思える映画ではありました。上映時間が2時間40分もあるため多少退屈に感じることは仕方がないことだと思いますが、思ったより長さを感じませんでした。特に後半は展開が読めないことやケイト・ブランシェットの演技力で圧倒されっぱなしでした。一度じゃ吸収しきれない映画だったので後で再鑑賞したいです。
<おわりに>
ケイト・ブランシェットが圧巻の演技をみせています。完成度が高く芸術的な作品です。
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