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タル・ベーラ監督『ニーチェの馬』白黒映像で紡がれる叙事詩



<作品情報>

「ヴェルクマイスター・ハーモニー」「倫敦から来た男」で知られるハンガリーの名匠タル・ベーラが、ドイツの哲学者ニーチェの逸話を題材に荒野に暮らす男とその娘、一頭の馬のたどる運命を描く。1889年、イタリア・トリノ。ムチに打たれ疲弊した馬車馬を目にしたニーチェは馬に駆け寄ると卒倒し、そのまま精神が崩壊してしまう。美しいモノクロームの映像は「倫敦から来た男」も担当した撮影監督フレッド・ケレメンによる。2011年・第61回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員特別賞)を受賞。

2011年製作/154分/ハンガリー・フランス・スイス・ドイツ合作
原題:A Torinoi lo
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2012年2月11日

https://eiga.com/movie/57189/

<作品評価>

90点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

おいしい水
素晴らしい…感嘆するしかない。これぞ映画の持つ力ですね。
淡々と、白黒で父娘の日常が描かれていきます。しかしある訪問者が来た日から少しずつおかしくなっていって…
まるで世界の終わりを描いているようです。重厚な音楽も相まって鳥肌が立つほど壮大で深淵。
終わり方からして、これはタル・ベーラからの人類へのメッセージなのかと思いました。このまま良くない方向に突き進めば、火のない真っ暗闇になる。犠牲になるのは一般の庶民。そう言っているように思えてならないのです。
音のメリハリ、映像の力をこれでもかと言うくらい感じた作品でした。言葉にならない感覚的な感動が襲ってきます。とてつもない傑作です。

吉原
退屈で地味な作品のようで実は壮大な映画です。人里離れた家に住む農夫とその娘。彼らがすることは毎日同じですが、その日常がどんどん変化していく6日間をじっくり丁寧に描いています。実質6つのチャプターに分かれて展開される映画なので、1日ずつじっくり鑑賞していくと意外と楽しめます。1日1日がすごく重く、この手の映画に慣れていないと全く楽しめないと思いますので、この見方が非常におすすめです。
鑑賞当時、「ヴェルクマイスター・ハーモニー」以外のタル・ベーラ作品を鑑賞したことがなかったのですが、あまりの凄さに圧倒されました。1シーン1シーンが美しすぎます。じゃがいもを剥くシーンが非常に印象的でした。タル・ベーラは上映時間の長さの割にカット数が少ない作品を撮ることで有名な監督ですが、画力が素晴らしく、映像に心を取り込まれてしまいそうになる監督でもあります。「ニーチェの馬」も傑作ですが、「ヴェルクマイスター・ハーモニー」や「サタンタンゴ」も非常におすすめです。

<おわりに>

 鬼才タル・ベーラ監督の壮大な叙事詩です。観る人は選ぶかも知れませんが、観たら圧倒されること間違いないです。

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