ロック詩人・稲葉浩志(B'z)の歌詞の世界〜ダメ男の恋愛編〜
第一弾はこちら。
稲葉浩志という男は、圧倒的にイケメンにも関わらずなぜか自信のない男の心情をうまく切り取る。
それを松本孝弘が創るメロディに載せる、というのがB'zのベーシックなスタイルなのである。
今回は、そんなダメ男のカリスマ・稲葉浩志の書く自信なさげな恋愛観が炸裂している歌詞をピックアップ。
YOU&I(1995)
いきなりファンしか知らない曲からスタートです。
1995年のシングル「ねがい」の2曲目に収録。
きらいだ あなたといるときの僕がたまらなく情けなくて
曲の出だしから「きらいだ」ですよ。
いきなり自己嫌悪スタート。
いなくなってしまえ 憂欝といっしょに
あなたがいなけりゃ 楽な気持ちになれるだろ
で、サビでは好きな人に「いなくなってしまえ」と口撃。
でもこの気持ちはわからなくもない。
人気がある女子を好きになってしまった時は自分のショボさや嫉妬心が情けなく思えてきて、自分や相手がいっそいなくなればいいのにと思ってしまう。
そんな陰キャラの心情を見事に切り取った歌詞。
TIME(1992)
この曲は最初から最後まで名フレーズ連発なんですよ。
どうすれば時が戻る 眩しい太陽の下で
どれだけ涙流れても 静かに海は広がる
恋人を失ってしまった主人公は、ひたすらにサビで「どうすれば時が戻る」と自問自答。
しかし、どれだけ涙に暮れても目の前には海が広がるだけ。
この無常観がたまらん。
また、名曲具合をグンと引き上げているのがDメロのフレーズ。
逃げ出したくなるような夜に 抱きしめていてくれるのは誰
つまらないことで いっしょに いっしょに笑いあえるのは誰
Jポップにはありがちな「失って初めて気付く」的なフレーズも、稲葉浩志にかかればこんな表現に。「いっしょに」の二段重ねがニクい。
OH! GIRL(1989)
今回紹介する曲の中で最も古いライブの定番曲。
相手が気になる夜の長電話が僕を走らせてる
Oh! Girl まだまだ君を離したくない
アクセルゆるめないで もうすぐ会いにいくよ
彼女が長電話してて電話が繋がらない→相手は誰だ!?まさか男?→車で会いに行くという思考回路。
間違いなく相手はドン引き。これぞ稲葉節。
Last Year 夏は違ったよ 二人今と逆だったね
ジゴロの余裕も今じゃ少しあせりに変わってる
君にのめり込んでる自分に今やっと気づいたよ
どうやら元は主人公側が優位に立っていた恋だけど、いつの間にかのめり込んでしまっていたようで。このダメっぷりがサイコーですよ。
それでも君には戻れない(1991)
なんか古い曲ばっかになっちゃうな。
5thアルバム「IN THE LIFE」の収録曲。
眠れない 日が経つにつれ何も手につかない
Everyday よそ見ばかり事故りそうな DRIVE
ひとりになりたいと 願ってたことが信じられない
やめたはずの煙草にまで手を出す始末
I MISS YOU VERY MUCH
完全にやべー奴ですよこれ。
彼女に家を出ていかれてしまった男は、一人になりたいと思ってたクセに毎日寝不足かつわき見運転で事故寸前。
ここまでは笑える。っていうか多分自業自得。
けど、やめた煙草に手を出してしまうって部分は男の悲哀を感じるねえ。
で、サビがこれ。
綺麗な君だけが スローモーションで笑いかけ
絶えきれないほどの 後悔の波が押し寄せる
別れた後って楽しくて綺麗だった思い出ばっか蘇っちゃうんですよねえ。
で、後悔すると。ほんと男ってバカだ。でもわかってても繰り返しちゃう。
この後に続く「それでも君には戻れない」ってタイトルの連呼がまた切ない。
今回の記事ではB'zのウジウジ系名曲を紹介してみました。
近年はウジウジ系の曲が結構減ってしまったんですが、やっぱこれは稲葉が歳を重ねた影響が大きいんだと思う。
特に2005年のアルバム「THE CIRCLE」以降は人生応援歌的な歌詞が増えたもんな。
ラブソング自体もかなり減ったし、やっぱバンドの音楽性は変わってゆくんだなあ。
まあ、56歳がウジウジした歌詞書くのもどうかとは思うけど。
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