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君の運命の人は僕じゃない〜Official髭男dism「Pretender」



先日の「Cry Baby」に続いて、
Official髭男dismの曲をもうひとつレビュー。


選曲に今更感満載なことはツッコまないでください。

「Pretender」は
、ご存知の通り2010年代のJ-POPシーンを代表する名曲。

この曲を契機に、ヒゲダンは一躍音楽界の主役となった。

正直、僕はこの3年ぐらいで
聴いた全楽曲の中でもこの曲が一番好きかもしれない。

この曲の一番すごいところは、31歳の僕にさえ”ノスタルジックさ”を感じさせることだと思う。

この曲、聴けば聴くほど「懐かしい」という感情が湧き出てくる。
比較的最近の曲であるにも関わらず、
まるで学生時代に聴いていた思い出の一曲で
あるかのように錯覚させられるのである。


多分、この”ノスタルジー”を想起させるポイントになっているのが
イントロだと思う。
これがあることで曲のど頭から「懐かしい…」という感情が浮かぶ。
このアルペジオによるイントロを思いついた時点で、
99%勝ち確な感じがする。
この破壊力抜群のアルペジオをAメロ途中からバックで
入れてくるのも心憎い。


歌詞はJ-POPにはよくある
悲恋モノだが、この歌詞に漂う
ちょうど良い草食男子感がなんとも良い。


何もしないというわけではなく、
グループで遊んだり食事に誘ったり
なんとなく行動を起こしてはいるものの相手にされないというシチュエーション。

Aメロの
「ラブストーリー」「予想通り」
「アイムソーリー」「いつも通り」の
勝手知ったる韻踏みも心地よい。

Bメロでリズムが変化し
曲自体は跳ねるように軽やかになるが、
歌詞は全然軽やかにならない。

1番2番共通で、Bメロでは
考えても無駄である
「想像の世界線」を歌っているが、
この部分だけメロディが軽やかであることが返って恋の望みの薄さを表しているように感じる。



そして、「グッバイ」で
一瞬演奏がブレークし
超キャッチーなサビメロに突入。

ここからもキラーフレーズのオンパレード。

まず、

君の運命の人は僕じゃない

という
言い回しが最高。


何が最高かって、「僕の運命の人は君じゃない」
ではないこと。

主語が自分ではなく「君」であることで、逆説的に主人公は
本当は運命の人が自分であってほしいという切ない思いが伝わってくる。

僕にとって君は何?
答えはわからない
わかりたくもないのさ

と続くが、もちろん主人公にとっての本心は
後者の「わかりたくもない」方。
自分が彼女にとって取るに足らない存在であることを自覚しているのだ。

そんな事実よりも、今目の前にいる"キレイ"な君を見つめることで
「エンドライン」を引き伸ばしたい、
なぜなら「エンドライン」の向こうに
君がいないことがわかっているから、
と歌詞が続いていく。


こうやって言葉にするだけでも
切なさヤバくないですか。

で、ここで急に自分の話になってしまうんですが。

僕は学生時代そんなリア充じゃなかったので、
こういう切ない恋愛をほぼしたことがないんです。
だから、この歌詞に自分自身の経験を重ね合せることはできない。



それでもこの曲が響くのは、
こういうシチュエーション自体が青春時代の”憧れ”っぽいからだと思う。
ドラマの「オレンジデイズ」っぽいというか、青春のオーソドックスなイメージというか。



このある種憧れ的な
シチュエーションの歌詞が、ノスタルジーを喚起させる破壊力ある
メロディーに乗っかることでこんな青春があったなあ…と錯覚させられるというか、ウソの美しい記憶を追体験させられるというか。

枯れた青春を過ごした僕のような
人間にも切ない青春があったように思わせてくれる、すごい曲。



まあ、リア充だった人はこの曲に
本当の自分を重ねられるのかもしれないですね。

僕がひねくれすぎなのかもしれないけど。

とにかく、素晴らしいパワーを秘めた一曲です。


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