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ロック詩人・稲葉浩志(B'z)の歌詞の世界〜かわいさ全開青春ソング編〜

稲葉浩志は時に年齢を感じさせないかわいい歌詞を書いちゃう男だ。
幾つになっても母性本能をくすぐるし、青春時代の1ページをしっかり切り取る。

今回は、稲葉が歌詞の世界に青春の1ページを閉じ込めた珠玉の名曲たちを紹介します。

このテーマに関しては特に好きな曲が多く、どんどん記事が伸びていってしまったため以前の記事より曲数が少ないです。すみません。


恋心(KOI-GOKORO)(1993)

シングル表題曲ではないにも関わらず、いつの間にかB'z史上屈指の人気ナンバーになった本曲。
B'zの持つポップさやキャッチーさの要素を全開にした楽曲で、星野源や日テレの桝太一アナウンサーもこの曲を好きと公言している。

そんなこの曲の出だしの歌詞がこちら。

彼女はいつもミルクティー yeah 駅のそばの喫茶店で
新しいシャンプーとリンス そして旅行の計画が話題
話をしたいけど ヤボな性格がばれちゃまずい

完全に会話を盗み聞きしてることはともかく、いかにも青春である。
主人公は好きな人との距離をまだ全然詰めれてないことがわかる。

すこし長めの髪揺らして 泣いているあの娘を見た
なにかな なんなんだろうなベイビー

2番の導入もどうやら盗み見っぽいんだけど、大事なのは主人公がヒロインとの距離を全然詰めきれてないこと。

2番サビ前には

松本に相談しようか、でもたぶんひやかされるからやめとこう

と一転して友情と遊び心の要素が漂うフレーズが登場。
このパートの裏のコーラスは「まっちゃん まっちゃん HELP ME」ですからね。さすがに20代での作詞でしかこの遊び方はできないでしょう。

そんな遊び心溢れるBメロ直後の2番サビ締めでは

ほんとは だれか好きな人がいること 知ってる けれど

と、「好きな人には好きな人がいた」という衝撃の種明かしが待ち受ける。
別段メロディが変わるわけでもないのに、ワンフレーズで曲の雰囲気を変えるのは超絶技巧。

好きな人との関係が進展せず、うっすら誰か好きな人がいるんだろうな〜と気付くというストーリー展開はちょっとback numberっぽい
ただ明確に違うのは曲の締め方、オチの付け方。

つよく抱き合った仲間ともいつかは はなれていくかもしれないけど
二度とは戻らない時間を 笑って 歌って ずっと
忘れない いつまでもあの恋 なくさない胸をたたく痛みを
汗かき 息はずませ走る 日々はまだ 今も 続く

稲葉は「恋心」を持っていた時の痛みや悩み、友達との関係性だったりも全てひっくるめて「二度とは戻らない時間」であるとし、全てを肯定する。
そして今でも必死に生きる日々は続いていく、と歌う。

この恋から人生そのもの、青春時代から今へと一気に世界観を広げる終わらせ方が実に大人っぽいというか、老成されている。
青春の歌でありながら、幅広い層に人気があるのはこの辺にも理由があるのかもしれない。



Warp(2002)

僕の中でB'zの好きな曲TOP3に入るお気に入り曲。
B'zとしては珍しく詞が先に作られた曲というのもこの記事で紹介するのにぴったりだ。

ポップな曲だけどどこか切なさが漂う雰囲気で、「恋心」が高校生なら「Warp」は大学生の終盤とか社会人の初めの方っぽい雰囲気。

3年ぶりに話したって 違和感ないなんて
意外と僕らたいしたもんだ 感心しちゃうよ

理由はわからないが3年ぶりに話すことになった元恋人同士の二人。
しかし、お互いに大きく変わっていないようだ。

最新のNews 移り変わっても 笑える視点(ポイント)は同じ

笑いのツボもお互い変わっておらず、まだ一緒のことで笑える。
移り変わっていく"News"と変わらない"ツボ"を並列させているのも何気にうまい。

ほんの最初の一声で スイッチが入り
時間も距離も あっという間に縮んでゆく

サビでタイトル「Warp」の意味が明かされる、という構成も素敵。
B'zの歌詞にはタイトルそのものか言い換えた単語が登場することが多く、そのものが出てこないというのはかなり珍しかったりする。

君さえよけりゃ あの時の答えを今言うよ
「きらいなわけないだろ」

おそらく、別れる直前に「嫌いになった?」とか聞かれたんだろうか。
主人公はこの言葉を伝えられなかったことが未だに悔いになっているようだ。

2番のAメロでは

忘れ物とりにきただけなのに もう2時間
今頃CD1枚っていうのも変だし

と、3年ぶりの再会のきっかけがCDであることが明かされる。
けど考えてみればCDなんて買うか諦めるか送ってもらえば良いわけで、こんなことで会うことになること自体お互い会うきっかけを探していたことを暗示している。

このむずキュンラブストーリーっぷりで既に名曲なんですが、更にこの曲の名曲度を引き上げているのがギターソロ後のこのフレーズ。

要するに感謝の気持ち忘れて 僕ら 離れ離れになった
もしかしたら 忘れ物ってそれじゃないの?

3年という時を経て、主人公が気づいたのは本当の忘れ物はCDじゃないんじゃないか、という事実。

そして主人公は最後の最後にこういうわけです。

「いっしょにいてほしい」
「ずっと いっしょにいてほしい」

ひょっとしたら、「嫌いなわけないだろ」さえも本当に言いたかった言葉じゃなかったのかもしれない。
3年+2時間以上という時間を経て、ようやく主人公は自分が言いたかった言葉を口にすることができたのである。

うーん、胸キュンだ。


I'm in love?(2003)

あなたの影が夜ごとにあらわれて
はずかしながら睡眠不足の今週の僕

もうかわいすぎるでしょう。当時39歳の人が歌詞書いてるとは思えねえもん。
好き過ぎて寝る前に思い出しちゃって睡眠不足ですよ。これほどまでに純朴な恋の始まりがあるだろうか。

しかし、続く2番は出だしから

人生もちょっとずつ経験を積んでゆけば
やみくもに前にばかり進めなくなる
カレンダーがぱらぱらめくれていって いつしか興奮も冷めるだろう
でももし今日という日でこの世界が 終わるとしたらみんなどうするの?

いきなり人生を考えさせられる歌詞が登場

この様に可愛らしい恋愛ソングだと思わせて後半で世界観を人生そのものにグッと広げるというのは稲葉の得意技の一つであり、一曲目で紹介した「恋心」でも同様のテクニックを使用している。
B'zの二人自体この曲を「恋心の続編的楽曲」と話しており、共通点が多いのも頷ける。

I'm in Love? だれにも言うまい 堤防は決壊しそう
今ならまるで新しい自分になれそうな気がする
始まるかもしれない

曲の締めは「この恋をきっかけに新しい自分が始まるかもしれない」というポジティブな締め方。

「恋心」の頃と比べ、歌詞の内容そのものより具体的な表現が減ったことに稲葉の作詞家としての変化が見られる気がする。


過去の稲葉さん歌詞紹介はこちら。


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