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仕事ならどんなに興味がなくても、興味のあるフリをしろ
前の会社の先輩に言われて、印象に残っている言葉。
僕は根本的に働くことが好きじゃない。
「好きじゃない」というのは≒「興味がない」とも言えると思う。
誰でも好きなものには興味があるし、興味があるものが好きなのだ。
コミュ障だけど口だけは回る不思議なタイプである僕は、興味がなく好きでもない仕事も口先でうまく誤魔化してきた。
でも、やっぱりそれはどこかで限界が来る。
前の会社では営業をやっていたけど、やっぱり顧客の情報を調べる人ほど成績が出せるのだ。
口先だけではお客様の要望に合った製品を出すのが限界で、それ以上の商材を売るには相手のニーズがわかるような情報を自分で取りに行く必要がある。
僕はそれができなかった。
なぜなら仕事に興味がなかったからだ。
興味がないものなんかいちいち調べたくない。
口先だけでも最低限の成績は出していたし、僕はそれ以上望まなかった。
けど、大きな商談で上司と同行した日。
ふとした会話が、僕の考えを変えた。
「oil、お客様の情報って調べてある?」
「はい。〇〇〇〇をやってる会社です。
今日会うのは取締役の人で、決裁権もお持ちです」
「他は?」
「○○は導入済です。
〇〇は他社と契約したばかりなので提案できません。
基本の商材は全部ヒアリングしてます」
いくら仕事に興味がなくても、これぐらいはやる。
僕は情報を簡潔に伝えた。
すると、上司は少し何かを考えるような顔をした。
「…お客さんの名刺情報ある?」
僕が社内システムから名刺情報を呼び出すと、上司は食い入るように画像を見つめた。
「…ホームページには書いてない業態も持ってるな。
太陽光発電のパネル整備やってるって書いてた?」
「いいえ」
初耳だ。ホームページには書かれていなかった。
「あと、これ。
お前、ちゃんとイジった?」
上司が指し示したのは、名刺に書かれたキャラクター。
都道府県の名前を冠したゆるキャラだ。
でかでかと書かれているのに、僕は存在に気付いてもいなかった。
「いいえ」
「これが書いてある理由、考えてみ。
この県に縁があるか、本人がここ出身とかだろ。
お客さんと仲良くなるチャンスじゃん」
「はい、すみません」
「…お前さ、仕事に興味ある?」
上司の口調は、責めるでも怒るでもない。
本当に単なる質問だった。
だから、僕もありのままに答える。
「正直、そんなに」
それを聞いて上司はやっぱりな、という顔をした。
「別に興味持たなくてもいいよ。
でも、最低限興味あるフリはしなきゃダメ」
「フリ、ですか?」
「フリでもいいのよ。
興味あるフリしているうちに本当に興味出てくることもある。
そうなったら儲けもんだし、ダメだとしてもフリしないよりは全然良い」
「…なんでですか?」
「相手がお客さんでも上司でも、結局大事なのは見え方だから。
全く興味がないより、興味があるフリをするだけでも少しはマシに見える。
仕事には興味あるフリしといた方が得するぞ」
この考えは、未だに僕の中に生きている。
今も、興味がない仕事にも興味があるフリをしている。
僕は結構頑固な性格だ。
好きじゃないものを無理矢理好きになるなんてできない。
そんな僕のことをわかっているからこそ、上司はあの言葉をくれたんだと思う。つくづく、僕は周囲に恵まれている。
仕事を好きになれないことに、僕は苦しんでいた。
仕事のことを好きで、やりがいを感じていることが世の中では正義と言われるからだ。
でも、別に無理に仕事を好きになる必要はない。
フリだけで良い。この言葉に僕は救われた。
誰がどう自分を見ているかわからないし、フリをする事で本当に少し興味が湧くこともある。
仕事を好きにならなくて苦しんでいる人がいたら、是非参考にして欲しい。
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