このラスト、許容できる?青春映画「サマーフィルムにのって」感想
こんなに感想を一言にするのが難しい映画も中々ない。
少し前から気に入ってたこの作品が、行きやすい劇場で公開されたので鑑賞。
率直に言って、面白いか面白くないかでいうと面白かったです。
ただ、やっぱ問題はラストの展開ですよね。
ラストがハマる人には傑作、許容できる人には佳作、「??」となる人には駄作に思えるでしょう。
ラストシーンでここまで評価が割れる映画もあまりないんじゃないかな。
観た人がいたら、是非感想を聞かせて欲しいです。笑
STORY:
時代劇オタクの女子高生・ハダシ。
映画部に所属する彼女は、時代劇の撮影を熱望するものの、恋愛映画に夢中の周囲にはまるで相手にされない。
そんな時、ハダシは凛太郎という少年と出会う。
自分の思い描く主人公像とぴったりの凛太郎と出会ったことで、ハダシは自分の描いた時代劇を映画にすることを決意。
個性豊かな仲間たちを集め、初めての時代劇撮影を開始する。
しかし、実は凛太郎はある秘密を抱えていて…
青春要素と映画愛に満ちた作品
この作品、これでもかっていうぐらい青春要素てんこ盛りです。
一夏の青春にみんなで何かを作り上げるって部分は「ウォーターボーイズ」的だし、タイムトラベルやSF要素は「時をかける少女」、映画部っていう意味でいうと「桐島、部活やめるってよ」的なところもある。
キャスト陣を見ると、邦画に散見される古き良きアイドル映画っぽさもあって。
作品そのものが日本の青春映画に対するセルフパロディみたいな側面があるんですよね。
主人公であるハダシ(伊藤万理華)が時代劇マニアという設定もあって「座頭市」や「十三人の刺客」など、往年の傑作時代劇も登場します。
映画製作においてハダシのライバルとなる花鈴(甲田まひる)が撮ってる恋愛映画も、色んな意味で近年の邦画の特徴を切り取ってて面白い。笑
「サマーフィルムにのって」という作品タイトル含め、映画愛に溢れた作品。
スタッフ陣はきっと映画、邦画そのものが好きな人が多いんだろうなーと感じました。
脚本・演出・演技はどれも良し
映画のキモとなる脚本・演出・演技ですが。
個人的にはどれも良かったと思います。
まず、主人公グループのオタ臭さが良いですね。
伊藤万理華ちゃんのキョドり方、デュフり方は素晴らしかったと思います。
初登場シーンの勝新太郎観てる時の感じとか、共感性羞恥を感じる素晴らしいオタクっぷりでした。
メガネでも美少女隠し切れていない河合優実、実はラブコメ大好きな祷キララのキャラクターも愛らしい。
設定的には、女子3人が全員あだ名呼びなのもツボ。
クレジット見てもあだ名しか書いてないんですよね。
当然のようにハダシ、ビート板、ブルーハワイって呼び合うのが良い。本編では描写されていない彼女たちの関係性がそれだけで伝わってくるというか。
ハダシのライバルとなる花鈴も美味しいキャラクターでしたね。
ハダシはリア充である彼女たちを目の敵にして映画製作に取り組み始めるわけですが、結果的には彼女と和解。
なんなら、お互いの作品に影響を及ぼしあったり編集中に一緒に映画を観て語り合ったり、最終的には結構仲良くなってました。
この敵役を悪にしない脚本も現代的でいいなーと思いました。
男性キャストも全員良かったです。
凛太郎を演じた金子大地はとにかくカッコ良い。
目力、殺陣の鋭さ、そして愛らしさ。うまく演じていたなぁと思いました。
今後二枚目のオファーがたくさん舞い込むんじゃないかな。
他に傑出していたのはダディボーイを演じた板橋駿谷。
何がすごいって、「老け顔の高校生」っていう設定がここまでハマること。笑
普通、37歳の役者が高校生役やったら「高校生役やってるオッサン」にしか見えないわけですよ。
それが、彼の場合はちゃんと「老け顔の高校生」に見える。これって何気にめちゃくちゃすごいことだと思います。
役柄的にも、コメディリリーフで美味しいとこ締めてるなーと思いました。
脚本に関しては、とにかくテンポが良いです。
序盤で登場したキャラたちが、割と納得感ある理由で映画の制作スタッフにスカウトされる流れ。
あの感じ、ほんと青春映画の王道って感じで大好きですね。
SF要素も含めてちょっとむちゃくちゃな部分もあるけど、やっぱ映像作品は脚本のテンポが大事。
この作品みたいにテンポが良いと勢いで押し切られます。笑
文化祭をハダシと凛太郎が回るシーンのスローモーションは、それまでテンポが良かった分効果的に機能。
BGMも相まって、ちょっとウルっときてしまいました。
ラストの展開、あなたは許容できましたか?
ここから本格的なネタバレになりますが。
ハダシたちが製作した時代劇映画は無事完成し、上映の日を迎えます。
しかし、最後まで物語の結末を決めかねていたハダシは納得いかず映画の上映を中断。
主人公(凛太郎)と友人(ダディボーイ)が斬り合わない、という結末を決着をつけるように撮り直すといいはじめます。
で、そこから文化祭の舞台上での再撮影が始まるわけです。
このシーンで、伝えるかどうか決めかねていたハダシは、凛太郎に「好きだ」という想いを伝えます。
それを、ちょっとミュージカル風というか前衛的に描いてる。
ここが個人的にはうーん、という。笑
まず、現実的にこの考えるとこの展開はあり得ないですよね。
ややうまくいき過ぎ感はあるものの、ここまでの展開が比較的現実路線だっただけに、余計に。
しかも、途中で花鈴の「最高に胸キュンじゃん」的なセリフのインサートもあるせいで、ほんとっぽさが演出されているのが逆に作用している気がする。
あの状況、普通は他の生徒は訳わからなくて騒ぐでしょう?
ただ、僕は観ていくうちにある程度この展開も受け入れられたんですよね。観た瞬間はキツいな、って思ったんですけど。笑
時間を追っていくうちに、この痛くて恥ずかしいのも青春だよな、と思えたっていう。リアリティもそこまで求めなくていいのかなと。
整合性を考えなければハダシが制服でバンバン殺陣するのはカッコ良いし、凛太郎がハダシの想いをつなぐと決意する展開はエモいし。
最後のバッ、と作品タイトルが出る瞬間もなんかいいじゃないですか。
僕はこの結末を”可”として受け入れました。
だから、この作品を”佳作”だと捉えています。
けど、ここは人によって大いに評価が割れると思います。
ネットでレビューを見ると、比較的好意的に受け止めている人が多くて。
多分、この作品を観に行く層ってまあまあ映画好きかサブカル好き、もしくはキャストのファンだったりするからフレキシブルにこの結末を受け止められるのかなーと思ったり。
そういう意味で、もっと色んな人の感想を見たくなる作品でした。
思いっくそ否定的なレビューもちょっと見てみたいです。笑
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