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幸せになれよ、相棒

相棒=一緒に仕事などをする相手。仲間。パートナー。
辞書にそう書かれていた。

今週末、相棒が結婚する。
彼は友達じゃない。
”相棒”という表現がぴったりなのだ。


僕と彼は、大学の部活動で出会った。
僕の一つ下の後輩として入ってきたけど、向こうは浪人していたから年齢的にはタメ。
クセの強いやつで、先輩にもちょっと舐めた口調。
でも、大学の部活動には人一倍真剣で。
スキルが伸びていくのもダントツで早かったし、何より努力する男だった。

僕は、彼を気に入った。
先輩が作ったものであろうと、つまらないものはつまらないという態度。高いスキル。時間を惜しまない姿勢。
一緒に何かを作るにはぴったりだと思った。

僕は、彼と組んで作品を作った。
音声や映像のドラマ作品。
僕が脚本と演出を、彼が撮影と編集を手がけた。
深夜まで二人で議論しながら必死で作り上げた。

大学3年生の頃、二人で作った作品が全国大会で2位になった。
僕らの作品は通用する。そう悟った僕は、部活を引退した次の年も有志として出場した。

結果は部門1位。
でも、狙っていた全部門の中で最も優れている作品に送られる特別賞は逃してしまった。

それでも、その年の僕らは満足していた。
僕は希望していたマスコミ業界への就職のため自主留年することを決めていた。もう一年チャンスはあると思っていたのだ。

僕が大学5年、彼が大学4年の時。
当時持てる力を全て結集した作品を製作した。
二人とも授業ももうなかったから、徹夜して編集した。

約100作品から5作に絞り込まれる予選の通過通知が来た時も、当然だと思った。
過去2回超えていた壁だったし、比べ物にならないぐらいの自信があった。
絶対に特別賞を受賞できる。そう信じて疑わなかった。

大会本選は、ホールの中で上映が行われる。
僕は、特別賞を取った時のコメントだけを考えていた。
はっきり言って、負ける気がしなかった。

でも、僕らの作品は部門2位。
部門別の優勝さえ取ることができなかった。

部門別の優勝作は、6位からの繰り上がり作品。
本来、予選で落選したはずのものだった。
上位5作に残った作品のうち一作に盗作疑惑が浮かんだ作品があり、その作品に代わって本選に上がったのだ。
ちなみに、後から聞いた話では僕らの作品はダントツ1位で予選を通過したらしい。

僕らが作品を出した部門は、ノンフィクションとフィクションが混在する部門。
その予選から繰り上がった作品だけが、ノンフィクション作品だった。

そして、審査員にはドキュメンタリー畑の方が多かった。
それだけの話だ。

それでも、受け入れ難いぐらいに悔しくて。
僕は呆然として、相棒は泣いていた。
彼と知り合って13年が経つけど、彼が泣いているのを見たのはそれが最初で最後だった。


楽しい思い出を分かち合った友達は、それはそれでとても大切な存在だ。
でも、真剣に一緒に何かに取り組んで。
悔しい思いを分かち合った奴は、相棒と呼べる。

幸せになれよ、相棒。
土曜はあの時と180度違う笑顔を見せてくれ。

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