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『パーラー・ボーイ君』Vol.2「ビーフ・チキン君、夢を見る」中編

 今日は12月24日だというのに、ビーフ・チキン君のお父さんは朝から、
「おい! ビーフ・チキン、スポーツ新聞買ってこい!」
 と小銭を投げてよこします。
 ビーフ・チキン君はトレーラーハウスのすぐ近くにコンビニがあるものの、あえて少し離れた場所にある、キオスクまで新聞を買いに行きます。
 そこまで行くと、売店の人が、「どうせ売れ残るから」と、タダで新聞を分けてくれるのです。
 そうして、浮いた小銭をビーフ・チキン君は自分のお小遣いにしています。

キオスク茶色

「本日のメインレースは・・・・・・と」
 盆も正月もクリスマスも、ギャンブルの世界にお休みはありません。お父さんはビーフ・チキン君が買ってきた新聞を広げると、さっそく競馬の予想にとりかかりました。
 そのヨコでビーフ・チキン君はトーストにマーマレードを塗ってかんたんに朝食をすませると、外へ遊びに出ました。

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 街はどこもクリスマス一色。キラキラのイルミネーションと赤と緑のクリスマスカラーに溢れています。
 そんな中、ビーフ・チキン君は悪がき仲間のジェイソン君に出くわしました。

 ジェイソン君はスラム街育ちで、ビーフ・チキン君よりも2つ年上の男の子です。
「おい、ビーフ・チキン! 今日もサンタクロースいじめて遊ぼうぜ!」
 このところ、2人のフェイバリット・プレイは、デパートにいるサンタクロースの格好をして働いている人を捕まえて、攻撃するというものです。

 サンタも人目があるので、うかつに反撃できません。その事を知っているので2人は、カカトでサンタの足の甲を踏みつけたり、ポケットの中にサンマのハラワタをねじ込んだりと、限界ギリギリのかなりキワドイところまでせめていきます。

 しかし、今日はデパートに行くと、すぐに警備員がやってきて追い出されてしまいました。このところ、あまりにも頻繁に悪さをしすぎたために2人は顔を覚えられてしまっていたのです。

「ちぇっ、つまんねーの」
 2人でふてくされて歩いていると、ビーフ・チキン君は文房具屋の前で見覚えのある自転車を発見しました。
「あっ! あれは、パーラー・ボーイの自転車だ!」
 パーラー・ボーイ君はラロッカちゃんと、今夜のクリスマス会で交換するプレゼントを包むためのラッピングペーパーを買いに来ていました。

 店内ではメロンの匂いがする消しゴムをカジるパーラー・ボーイ君のことをラロッカちゃんが、
「おやめなさい」と、たしなめています。
「あのヤロー、なんかムカツク」
 ビーフ・チキン君とジェイソン君は、はらいせにパーラー・ボーイ君の自転車の空気を抜いて、おまけにサドルを外し、かわりにポインセチアを一輪差しました。
 これに味をしめた2人が、調子にのって街中の自転車の空気を抜いて遊んでいると、ふいに後ろから、
「君達なにをやってるんだ!」
 と、声をかけられました、見ると恐い顔をしたお巡りさんが立っています。

 2人は慌てて逃げようとしましたが、かんたんにお巡りさんに捕まってしまいました。

(つづく)

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