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【諸悪の根源は見えないアイツ】〜パクりパクられ抗争〜

雨の日に、ある娯楽施設を訪れた。
短時間しか滞在しない予定だったので、傘はキーロックを使わずに、傘立ての端に置いた。

帰るとき、自分の傘を探すが、なくなっていることに気付く。
「くそ、やられたかあ」
盗まれたことに苛立ちながら、僕が傘を置いていた一角の隣に雑多に置いてあったビニール傘を掴み、その場を出た。
僕の傘はわりと新品だったのに、今手にしている他人の傘がボロいことにも苛々した。

家に帰ってビニール傘をしまうときにふと思った。
このビニール傘の持ち主も、自分の傘が盗まれてしまい、他の人の傘を盗むことになっただろう。
それまで被害者気分だった私は、そのとき初めて加害者になっていることに気づいた。
自分が傘を盗んだことを仕方のないこととして正当化していた。

この場合、負の連鎖を止めるには、誰かがズブ濡れで帰るしかない。
もしくは、最初のひとりが傘を盗まなければ、こんなことは起きない。

諸悪の最初の一手を誰も打たない。そんな世の中が実現する日は来るのだろうか。


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