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架空旅行記A#3

アンニョンハセヨー
あの…チェックインしたいのですが…?

私は大して話せもしない
英語で問いかける。
これには理由がある。

韓国語は少ししかわからない。
でもチェックインくらいは出来るかもしれない。
しかし安易に韓国語で問いかけた場合、
向こうも勿論韓国語で応えてくる。
そうするとなんというか身構えてしまい
よくわからなくなるのだ。

なのでお互いの母国語ではない
英語で、チグハグながらも会話していった方が
理解し合える事が多いのだ。

チェックインはPM3:00からなので
こちらに記載して頂いて、荷物は預かります。
とのことだった。
まあそうだよね。
日本でも大体一緒だ。

ウェブ予約をしていたので
私はその画面を見せて
先に宿代の支払いを済ませる。
荷物を預け、荷物用のプレートをもらい
外に出た。

とにかく雨が降ってなくて良かった。
秋口とは言え東京よりも北に位置する
この韓国は若干肌寒い。
雨など降ったらもう凍えてしまう。

ひとまずその辺の路地で
煙草を吸い、何をすべきか考えよう。
うーん、どうしようかな?
腹はまだ減ってないしなぁ。
でも飯かな?
あ、そうだ!
換金しに行こう!

空港でも換金は出来るのだが
そのレートの低さから
いつも街中で換金することにしている。
特にこの明洞はそこそこレートがいいのだ。
円安が続く現在、
少しでも利率は良いに越したことはない。

携帯灰皿で煙草を揉み消し
路地をゆっくりと歩き始める。

いやー、やはり良いな。
どこを見てもハングルだらけだ。
日本語も多く見受けられるが
この雰囲気が良い。

細い路地を抜け
目抜き通りへと出ると
化粧品販売員が次々と声を掛けてくる。
まあパックを主に扱っているような店
なのだろうが
何もおじさんまで捕まえようとしなくても。
そんな事を思いながらすり抜けてゆく。

アディダスやSPAOなどを横目に
目抜通りを横断し、さらに路地を進んでゆく。
街の外れのような場所に
その換金所はある。
緩やかな坂を下りようやく見えてきた。

この換金所はそのレートの良さから
やはり人気があるらしく
短い列が出来ていた。
その最後尾に並び
財布を用意する。
ショルダーバッグに入れた財布とは別に
海外用の財布を用意して
革のウォレットチェーンをつけ
尻ポケットに入れておいた。
パスポートも入る大きめなもので
これがあると大変便利なのだ。

自分の番が来たので
パスポートと現金を渡し
換金してもらう。
やはり今は全然良くはないが
まあこんなものだろう。
他はもっとレートが悪いはずだ。

替えてもらったウォンとパスポートを
財布に仕舞い込み、
再び明洞の街を歩き始める。

韓国の原宿と称されることもあるように
この街には様々な店が
所狭しと軒を連ねている。
一時期はあまり見なくなった露店も
今ではまたたくさん出るようになっていて
活気があっておもしろい。

その露店の出す、どこか油っぽい
香ばしい匂いの中を歩いていると
お腹がぐぅっと鳴っていることに気がついた。
きっとただ消化しているだけなのだろうが
何となく何かを食べたくなってきた。

チェックインまでの時間はまだ少しあるので
うろうろと歩いていると
明洞餃子の路地に差し掛かった。
あ、いいかもな。
ちょうど昼過ぎで空いてそうだし
入ってみるか。

足を踏み入れると左手に券売機のようなものが
あるがよくわからない。
程なくして店員がきて
1人ですか?と聞かれ、そうですと答えると
2階へどうぞ、とのことだったので
階段を上がり2階へと進む。

外からはわからなかったが
やはり人気店、ほぼ満席の状態で
かなり賑わっている。

私は隅の1人〜2人用の小さな席に
案内され、逆の席に鞄を置き腰を下ろす。

メニューを一応見てはみるが
もう決まっているのだ。
ここはカルグクスだ。
カルグクスは手打ちうどんのような
細い麺で、スープも辛いものではなく
とても美味い。
マンドゥも美味いので食べたいとこではあるが
1人では食べきれないかもしれないので
今回はやめておこう。

店員さんを呼び
カルグクスを注文する。
テーブルにあるコップに水を注ぎ
飲みながらまわりを見渡すと
色んな国の人で溢れ返っている。
アジア圏の団体が多そうではあるが
ヨーロッパや欧米の方と思われる団体も
多く見受けられる。
まあやはり人気店なんだな。
と実感していると
カルグクスがやってきた。

大きめの丼に
麺がぎっしりと入り
半透明なスープからは湯気が立っている。
炒められた玉ねぎとニラの上には
そぼろのようなものが真ん中にのせられ、
まわりには三角に折られたワンタンが
四つ等間隔に綺麗に配置されている。
実にいい匂いだ。

今すぐ掻き込みたい気持ちを抑え
私はテーブルに備え付けの容器から
キムチを小皿に取り出す。
そう、このキムチが美味いのだ。
日本のものよりも辛く
ニンニクなどのパンチが効いていて
とにかく絶妙なのだ。

いただきます、と手を合わせ
まずはキムチを一口。
おおー、これこれ!
このパンチですよ!そして後からくる辛み。
濃厚でとても美味しい。

そして丼から麺を手繰り寄せ
ズズズッと豪快に一口。
いやー、至福である。
少し濃いめのスープとこの柔かな麺が
非常にマッチしている。
途中ワンタンやスープ、キムチも挟みながら
ズルズルと食べ進める。

少しお腹が膨れてきたところで
水をごくりと一杯。ふぅ。
麺はまだある。
やはり懸念してた通り量が多かった。
マンドゥを頼まなくて正解だったな。
初っ端から食べきれないとこだった。

その後麺を食べ切りスープもほぼ飲み干し
最後にキムチをもう一度食べ
箸を置く。水を飲み、口の周りを拭き
手を合わせ、ご馳走様でした。

いやー、美味かった。
腹一杯だ。
お会計は注文時に済ませているので
そんなことを思いながら階段を下り外に出る。
この若干の肌寒さがとても心地良い。

さ、もうひとまわり街を巡ったら
ホテルに戻りチェックインしようか。

その前に食後の一服が出来る場所を
探さないとな…。

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