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架空旅行記A#2

機内がガタガタと騒がしくなり
目を覚ます。

何事か?と目を擦ると
どうやら機内食の時間のようだった。

細い通路を忙しなく動き回るCAさん達。
手慣れた様子で次々と配膳していく様を
手際がいいなぁと
惚れ惚れと見ていると
自分の順番がやってきた。

ビーフオアチキン。
まあ大体これだろう。
そんな事を期待していたが
どうやら今はチキンしかないらしい。
まあ仕方ないか。
食べたいものは現地でたらふく食べよう。

ご飯一式を受け取り
私は飲み物にビールをお願いした。
たまの休みなのだ。
もうはじめようではないか。

メイン料理となるお皿のアルミフォイルを剥がす。これは、チキンステーキと、なんだろう?
焼きそば?のような感じだな。
とりあえずビールの缶をプシュッと開け乾杯だ。
ゴクゴクゴク。ああ至福だ。
コップを貰いはしたが
私はいつもコップには移さない。
これは家でも同様だ。
お行儀は悪いのかもしれないが
炭酸の寿命を少しでも延ばしたいのだ。

焼きそばのようなものをひと口。
あ、美味いな、良い味だわ。
チキンも美味いしビールが進む。
パンやフルーツも全て平らげ
ふうっと一呼吸。
そこそこお腹いっぱいだ。
とにかく私は残すのが嫌なのだ。

程なくして食べ終えた容器を回収にくる
CAさん。本当に良く働くなぁ。
感心しながらお盆ごと返し
ご馳走様でした、と伝えると、
一瞬ニコッと笑顔を見せ
すぐに次の人の容器を回収している。
某ハンバーガー屋さんに昔あった
スマイル¥0の事を思い出したが、
このスマイルは¥0以上の労力が必要なんだろうな
と想像するばかりだ。

食後の余韻を楽しんでいたら
シートベルト着用サインがついた。
アナウンスによると
もう到着するようだ。
やはり近い。
この近さで機内食サービスまであるのだ
物凄い忙しさなんだろうな。
と思っていたら
飛行機が緩やかに下降を始めた。

ドンッと着地しブレーキが掛かり
グッと重力を感じる。
少しずつスピードが緩まっていき
機体はピタッと止まった。

シートベルト着用サインが消え
次々と立ち上がる乗客。
私は窓の外を眺めていた。
慌てる必要などどこにもないのだ。

われ先に、と動く乗客の波を横目に
ゆっくりと立ち上がり
荷棚からバックパックを取り出す。
機内にはもう殆ど誰もいない。
ゆっくりと歩きCAさんにお礼を伝え
外に出る。

到着だ。
動く歩道を長距離歩き
入国審査の列に並ぶ。
この間に機内モードから現地のeSIMに切り替えておこう。これは本当に便利だ。
ポケットWi-Fiが懐かしく感じる。

無事に入国審査を終え
手荷物受取所に着いた。
グルグルまわるコンベアーを見ながら
欠伸をひとつ。
時間を確認するとまだ昼前だ。

出てきたスーツケースを受け取り
外に出る。
煙草でも吸いたいなと思い見渡すが
以前あったはずの喫煙所が
なくなっていた。
時代の流れだな。まあ着くまで我慢するか。

事前に調べておいたバス乗り場へ向かい
チケットを買う。
最近は色んな端末で日本語を選択出来るので
非常に助かる。

着いたバスの乗務員に荷物を預け
バスに乗り込む。
韓国の、こういった空港に繋がるバスは
座席が大きくてとてもいい。
背もたれを倒しベルトをして
車内の広告をゆっくりと読んでいたら
バスが出発した。

仁川空港からソウル市街までは約1時間くらいだろう。
ぼやーっと窓の外の景色を眺める。
空港のまわりは割と穏やかな景色が多い。
ああ、なんだか良いなあ
と思っていたらいつの間にか眠っていた。
フカフカの広い座席とバスの振動は
とても心地が良かった。

バスが到着し伸びをしてから立ち上がり
外に出て荷物を受け取る。
辺りを見渡すとハングルだらけだ。
ついに来たな…。
そう、私が降り立った地は明洞。
なんだかんだ便利なのだ。

スーツケースを引き摺り
ホテルを目指す。
だがホテルはバス乗り場から見える程に
目の前なのだ。
狙って取ったではあるが
これは本当に楽でいいな。

そんな事を思いながら
自動ドアを潜りフロントロビーへと
足を踏み入れる。

さて、どうしようかな?
まずは何をしよう?
とりあえず飯かな?
腹減ってないけど…。

と、はやる気持ちを抑え
フロントへ向かうのであった。

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