松田祐輔(ピアノ)

埼玉県大宮区在住。血液型AB型。東京藝術大学ピアノ科卒業。第54回全日本学生音楽コンク…

松田祐輔(ピアノ)

埼玉県大宮区在住。血液型AB型。東京藝術大学ピアノ科卒業。第54回全日本学生音楽コンクール全国大会第一位。 ブログ https://ameblo.jp/blue-rhythm Twitter https://twitter.com/matsuda_piano?s=09

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  • 【解説】バッハ シンフォニア全15曲

    予め分析をしておかないと、演奏や指導をするのが難しいシンフォニア。 全15曲の解説ポイントを集約しました。 第9、10、12番には演奏を載せました。

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【楽譜】sasakure-uzumakinoharu

sasakureさんの「uzumakinoharu」というピアノ曲の耳コピをして、演奏しました。 耳コピをして採譜した楽譜はこちらです👇️

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    • バッハ シンフォニア第10番【解説】 BWV796(演奏動画付き)

      八分休符からシンコペーションで始まる主題は喜びの表情をもつ。少しずつ変化させた主題、転回技法を使った間奏で色合いが刻々と変わっていく。楽譜上、とてもシンプルなつくりをしているが、手の動きとしてはフーガを弾きこなす高度な技術が必要。 主題八分休符からシンコペーションで始まる主題は2小節間の喜びに満ちています。減増音程は出てきません。素直に音階が運ばれていきます。 左手は典型的な通奏低音の伴奏です。1度、4度、5度の和声の移り変わりを支えています。短く切ってしまうと、和声不在

      • バッハ シンフォニア第9番【解説】 BWV795(演奏動画付き)

        音楽修辞学(特定の情緒を表す音型、主に詞に音楽を付けるときに使われた。器楽曲にも応用。)が見られる。この曲においては、半音階下降バス、パルヘジア(誤った音程関係)等により苦しみ、悲しみ、恐れなどを表現している。 3つの主題主題a、主題b、主題cによって書かれています。 3つの主題が転回を繰り返す手法はバッハ シンフォニア第3番と同じです↓ 主題aは半音階で下降し、完全4度を形成するところで「受難の歩み」(Passus duriusculus)を表現しています。 主題b

        • バッハ シンフォニア第2番【解説】 BWV788

          減7の音程を含む厳しさを持つ主題。前半はバス+上2声によるトリオ・ソナタの形式に始まるが後半から主題は姿を消し、ゼクエンツ風の小さな4つの動機による即興の技法に切り替わる。とうとう主題は二度と現れることなく、全く新しい素材によって曲は締めくくられる。 主題この曲の主題は次の通りです。 減7度の非常に厳しい表情を忘れないように気をつけましょう。冒頭の左手は、典型的な通奏低音による伴奏になっています。 音階部分も含めて主題の後半部分はインベンションの4番の主題と全く重なります

        【楽譜】sasakure-uzumakinoharu

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        • 【解説】バッハ シンフォニア全15曲
          15本

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          バッハ シンフォニア第14番【解説】 BWV800

          シンフォニアの中で最もストレッタ技法(主題が終わりきる前に次の主題が現れること)が使われている。音階の下行進行が多いが、これは嘆きではなく、天から降り注ぐ光を表している。全体に祝福ムードに覆われた楽曲。 下行音階は天からの恩寵バッハにおいては、苦難や嘆きを表すことの多い下降音型ですが、この曲の場合は天からゆったりと降り注ぐ光のような印象を受けます。 下行音型が、何かが下り落ちているのではなく地平に光が広がっていくような感じです。 曲中に出てくる平行6度の響き等は、同時に

          バッハ シンフォニア第14番【解説】 BWV800

          バッハ シンフォニア第13番【解説】 BWV799

          8分の3で書かれた舞曲風を感じさせる曲。しかし、半音階による下行がみられることや、イ短調の音階によって受難の性格もある。3度6度10度の並行的な美しい響きが生まれるが、転回対位法というものを駆使していることを忘れてはいけない。 主題は柔らかな弧を描く虹がかかったように、音型が弧を描いています。主題と、そのあとに続く16分音符。 この性格は序盤を支配しています。第二提示部と間奏、第三提示部では跳躍を伴う旋律が出てきて、エネルギーは曲の後半にかけて増していきます。 ハーモニ

          バッハ シンフォニア第13番【解説】 BWV799

          バッハ シンフォニア第8番【解説】 BWV794

          フーガ技法の教科書的な厳格さで書かれている。主題、応答主題、8度の模倣等のネットワークが複雑に計算されている。へ長調のもつ幸せな、春の訪れを思わせる響き。リズムから生まれるアーティキレーションも楽しみたい。 主題冒頭3小節は、主題(赤)ー応答主題(黄)ー主題(赤)という模範的なつくりで始まる。 主題のアーティキレーションはとても重要です。 ストレッタ主題がまだ終わらないうちに次の主題が出てくることをストレッタといいます。他のシンフォニアの中にも何回も出てきますが、この曲

          バッハ シンフォニア第8番【解説】 BWV794

          バッハ シンフォニア第4番【解説】 BWV790

          元々シンフォニアの前身、ファンタジアでは2番の位置付けだった。シンフォニア1番が全音階的旋律が使われていたのに対し、この曲は半音階的旋律が随所に使われている。ニ短調のもつ、厳しさ、深刻な性格が半音進行と不協和音も相まって、色濃く表れている。 半音階的書法半音階で下行進行する形が所々に出てきますが、代表的な箇所は12、13小節目と最後の22、23小節目です。 半音階で下行することで、苦しみを表現しています。 主題は上昇したがっているが・・半音階による下行が特徴的な曲ですが

          バッハ シンフォニア第4番【解説】 BWV790

          バッハ シンフォニア第12番【解説】 BWV798(演奏動画付き)

          長めに響くスタッカートや、オルゲルプンクト(保属音)、最後に出てくるバスのソロによってオルガン的な要素が多くなっている。3声で書かれているが、実質4声を想定しているつくりが随所に表れている。イ長調のもつ明るい響きとリズムの躍動感によって喜びを表現。 オルガン的要素この曲には、オルガンを想わせる特徴が3つあります。 ①8分音符と8分休符によるオルガン・スタッカート風の伴奏 ②各終結句の前に出てくる長大なオルゲルプンクト(保属音) ③最後に出てくるバス・ソロ 擬似4声構造間

          バッハ シンフォニア第12番【解説】 BWV798(演奏動画付き)

          バッハ シンフォニア第6番【解説】 BWV792

          ホ長調の音階による主題は柔和な印象を受けるが、その背景に8分の9拍子のジグ調のリズムを持つ。ゼクエンツやヘミオラ(3拍子の曲で2小節をひとつにして大きな3拍子をつくること)を織り交ぜながらジグ特有のテンポ感をつくりだしている。 主題に続くヘミオラ主題と応答主題による、このような形で始まります。 その後、ヘミオラという二小節を三つに分けた拍節法が使われます。 分かりやすく色分けにしましたが、これまで一小節単位で進んでいた和音進行が加速されるので、駆け抜けます。 ちなみにこ

          バッハ シンフォニア第6番【解説】 BWV792

          バッハ シンフォニア第1番【解説】 BWV787

          ・音階の幅を広げることで、冒頭からインベンションとの難易度の差が明確になっている。 ・主題の上行ラインは喜びに溢れた明るさを持つ。一方、掛留音(けいりゅうおん)を使用した下行ラインが美しく形成されている。 ・旋法的な終止形が多く、完全終止形は最後に出てくるのみなので、曲中の段落形成が少し曖昧になっている。 主題から伺える難易度の高さインベンション第1番とシンフォニア第1番はどちらも同じハ長調で書かれており、音階で始まっています。 しかし、主題を比べてみますと使われてる音階の

          バッハ シンフォニア第1番【解説】 BWV787

          【楽譜】ビゼー=ホロヴィッツ カルメン幻想曲

          高校生の時から大ファンだったピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツの編曲した「カルメン幻想曲」を僕もしばらく演奏会で弾いていました。 こちらが僕の自宅での演奏です↓ 楽譜はインターネット上で耳コピされたものがたくさん出回っていますが、採譜した人によってあまりにも音符に差異があり、信憑性は薄いものばかりでした。 その中で、一番ホロヴィッツの録音に近いものをダウンロードして、さらに自分で弾いてみて明らかに間違っているところは修正し、演奏不可能と思われるところは現実的に直し

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          【楽譜】ビゼー=ホロヴィッツ カルメン幻想曲

          バッハ シンフォニア第7番【解説】 BWV793

          臨時記号による♯や♮を使って苦しみの音を表現している。イエスの苦しみを歌う、受難カンタータのような性格を持ち、最後はチェンバロ最高音のc音を減七の不協和音と共に響かせた後、ピカルディ終止(短調の曲が長調の和音で終わること)により、この上ない安らぎを感じさせる。 一つの主題と、変化し続ける対旋律この曲の主題は冒頭の以下の旋律です。 対して対旋律は左手のこの部分です。 青色で塗った箇所の中でも赤丸をした音符が原型となり、後の対旋律の形をつくっていきます。(ちなみに主題の後半

          バッハ シンフォニア第7番【解説】 BWV793

          バッハ シンフォニア第3番【解説】 BWV789

          主題と2つの対位主題が織りなすフーガ3声の習作。旋律が3声に渡って同時に流れている為、音価(音の長さ)を厳格に守り、注意深く音を聴く必要がある。また、3度や6度のハーモニーが魅せる、明るく美しい響きは印象的。躍動感をもつ音型にも注目。 三つの主題主題は冒頭の右手の部分、2小節半に渡る旋律です。 主題に続いて、対位旋律(=対旋律)が2つ出てきます。 赤色で示したものが主題、黄色が対位主題1、青色が対位主題2です。(念のため青色はソ♯からスタートです) 基本的にはこの3つの

          バッハ シンフォニア第3番【解説】 BWV789

          バッハ シンフォニア第15番【解説】 BWV801

          Bachの最後の文字「h」にちなんだh-moll(ロ短調)で書かれており、暗にシンフォニア集の巻末を示している。(ちなみにインベンションの第15曲目もロ短調で書かれている。)シンフォニア集の中で、様々な作曲技法を披露してきたが、まるでその厳格さに縛られているだけではいけないとばかりに、どのように発展するか読めない自由な発想、逸脱を繰り出している。 奇想曲のようなつくりほぼ全体が2声で書かれており、なかなか掴めないウナギのように奇抜な展開も相まって、奇想曲のようなつくりになっ

          バッハ シンフォニア第15番【解説】 BWV801

          バッハ シンフォニア第5番【解説】 BWV791

          琴線に触れるような美しい装飾音が施されたサラバンド風の楽曲。リュート伴奏にのせた、二本のヴァイオリン、またはフルートによるトリオでの演奏を想起させる作りをしている。フランス風序曲を思わせる装飾の美しさに隠れがちだが、4度下に現れる模倣(カノン)、転回(声部交換)等が駆使された労作。 カノンこの曲では模倣(カノン)が4度下、4度上、5度下、2度上に出てきます。 よく主題が出てきたら強調するようにと、バッハの2声や3声の曲では助言を受ける事がありますが、シンフォニア第5番をフ

          バッハ シンフォニア第5番【解説】 BWV791