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俳句ほか

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古典文学に見る季語の源流 第四回「朧月」「朧月夜」

古典文学に見る季語の源流 第四回「朧月」「朧月夜」

春爛漫の四月号(注:本コラムは結社誌四月号に掲載)である。今回は「朧月(おぼろづき)」を見てみよう。

現存最古の歌集、『万葉集』にはこの語は登場しない。春の月を詠んだ和歌も、

春霞たなびく今日の夕月夜
清く照るらむ高松の野に

(巻十、読人しらず)

と照り輝く月を詠んでいる。唯一、

うちなびく春を近みか
ぬばたまの今夜の月夜霞みたるらむ

(巻二十、甘南備伊香(かんなびのいかご))

とい

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俳の森-俳論風エッセイ第17週

俳の森-俳論風エッセイ第17週

百十三、舌頭に千転の効用四十九話で、舌頭に千転する効用は、表現を練り、普遍性を獲得することではないかと述べました。実際は、普遍的な句が簡単にできるわけではありませんが、ここでは、もう一つの効用について述べてみたいと思います。

それは、何度も読み返すことで変わるのは、作者のこころの状態ではないかということです。特に自信作が出来た場合などは、有頂天になっているはずです。それはいわば興奮状態。そこから

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俳句『桜にまみれて』

俳句『桜にまみれて』



あぜ道のてんとう虫湧くところ

駆け込み乗車退避スペースの春

車窓より均一の若葉一瞬

青空に散った桜返り咲く

木の芽時新入生の列長く

春眠か肩の温かみ振りほどき