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スタートアップにとって優秀な人材の採用は4点の価値がある

4点の価値とは?

本エントリーでは、スタートアップやベンチャー企業が欲しい人材を採用できないことのリスクと、採用において最も大切にすべきことについて、私自身の体験も踏まえて書きたいと思います。

私も前職のベンチャーで新たな収益の柱を模索すべくいくつかの新規事業に取り組みました。そのうちのひとつがソーシャルゲーム事業。既に先行して成功している企業がいくつも出ていたタイミングでした。私たちも市場の成長余地の大きさから事業機会を感じ、伸びが鈍化し始めていた既存事業からエンジニアのリソースをこの新規事業にシフトし参入する判断をしました。

滑り出しは悪くなく、数値上は順調に立ち上がったかに見えていたのですが、中心となって動いてくれていたエンジニアが某メディアに取材され名前が表に出たことでヘッドハンターから声を掛けられ、結果として別の企業(実はいまの親会社…)に彼を引き抜かれるという事態が起きました。

結果として、その後に同事業は工数的にも運用を続けるのも厳しくなり、終息を迎える事になります(その詳細はまた別の機会に)。

何が言いたいかというと、私の立場でいえば事業の中心人物を失ったことで、事業そのものを失ったことになるのですが、一方で彼を引き抜いた某サ○バーエージェントの立場になって考えると、1人の貴重な戦力を得ることができ、しかも間接的にですが潜在的な競合(?)の力を弱めることすらできたということです。

つまり、スラムダンク風にいえば、優秀な人材を採用するということは、(競合する)他社の事業成長の機会を奪う(ー2点を防ぐ)と同時に、自社の事業を伸ばすために必要なリソースを獲得する(+2点)ことになるので、実は人ひとりを採用することには4点分の価値があるということです。

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繰り返しになりますが、絶えず競争環境にさらされるなかで、ベンチャーやスタートアップの採用において最大のリスクは、欲しい人材を採用できないということなんじゃないかと思います。スタートアップが成長するということは人材獲得競争を勝ち抜くこととも言えます。ですから私は投資先の支援において、資金調達(カネ)と同様に採用(ヒト)にこだわって支援しています。

欲しい人材が採用できない理由

ではスタートアップやベンチャー企業において欲しい人材がなかなか採用できないのは何故なのでしょうか? 私の経験や投資先で採用が上手くいっている企業の事例も踏まえて少し整理してみました。

1.候補者に会社が知られていない

2.候補者に会社が知られているが会社や事業が魅力的に映っていない

3.候補者に会社が知られていて会社や事業も魅力的に映っているが、競合がいる

4.候補者に会社が知られていて会社や事業も魅力的に映っていて競合もいないが、条件が合わない

私が思うに採用が上手くいかないときに、この4つの理由があるかと思います。

1.候補者に会社が知られていない

これは認知の問題なのでSEO、PR、ソーシャルネットワークの活用のほか資金があれば求人メディアや人材紹介サービスでカバーできるかなと思います。多くのお金と労力がこの課題解決に割かれている印象はありますが(このあたりの手法の話は弊社でも投資先向けに勉強会をやっています)。

2.候補者に会社が知られているが会社や事業が魅力的に映っていない

実はこれがいちばん性質が悪くて、経営課題として認識して根本的な会社や事業のあり方、打ち出し方を考えなければいけない。もしかすると会社名や事業ドメインの見直しなど検討が必要かもしれない。社員の離職が続く場合も結局はこの課題に起因することが多いです。

3.候補者に会社が知られていて会社や事業も魅力的に映っているが、競合がいる

採用上の競合の分析も重要になります。そこに対して入社後の活躍の余地を示すのか、給与含めた待遇で競争しにいくのか、候補者にとって魅力的と思われる同僚に口説いてもらうのか、など打ち手はあるように思います。

4.候補者に会社が知られていて会社や事業も魅力的に映っていて競合もいないが、条件が合わない

これは顕在化していない候補者独自の理由がある可能性があります(例えば家族の意向や通勤時間や系列に対しての印象やプライベートの時間の使い方など)。スタートアップであれば、起業家自ら腹を割って話をする機会(私なら食事とかにしますが)を持つのが有効だと思います。私も前職にジョインしたときは幹部の方全員との会食の機会をお願いしていただきまして決断しましたし、CAVに入った時も最後は社長とのサシ呑みで決断をしました。

上記の課題解決の難易度としては

2>4>3>1

というのが私の肌感です。

世の中の議論としては1の話が多いですが、ここはシンプルにROIの問題。リソースと相談して最適解を見つけるだけ。逆に言うと魔法の杖はない。2の候補者は決して求人メディアでその企業の求人情報を見ても、紹介会社から紹介されても応募しようとはしません。3・4は打ち手が言語化しうるかそうでないかという違いなので、施策としてはやりようがあります(経営者自身の魅力に頼り過ぎなケースもありますが)。3はリサーチ力の問題、4は洞察力の問題。言語化しにくい分4のほうが難しいですが。以上のことから私は2にまずはフォーカスすべきだと考えています。

チャレンジャーであり続けるということ

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本質的に解決すべき課題は、

候補者に会社が知られているが会社や事業が魅力的に映っていない

のをどうするか、じゃないかと思います。

私が前職で犯したミスもこれでした。これが解決されなければ既存の戦力すら失ってしまうのです。

つまり、伸びるマーケットにアドレスするということに満足してしまったこと、自社がその事業に取り組むことが、ユーザーだけでなく、働くひとにとっても意義深く、かつ魅力的なのかという視点を欠いたことにあります。

いくら伸びるマーケットだったとしても、参入障壁が低く雨後の筍のように競合が増えることが予想される場合や、自分たち以外に活用できるリソースを持っていて先行している企業が多く存在する場合、単純に事業としての競争環境が厳しくなる以外に人材採用・維持においても苦戦を強いられるのは想像に難くありません。

自分のこの経験があって、社員にとってもスタートアップはフォロワーではなくチャレンジャーであることを求められるていることを忘れてはいけないと痛感しました。

私の担当先で言えばカブクおかんBECも比較的採用は上手くいっているほうだと思いますが(まだまだ積極採用中です)、彼らがものすごく奇をてらった採用手法を用いているかというと決してそうではありません。

カブク(rinkak)であれば金型からデータに変わるものづくりの世界でグローバルなプラットフォームを目指していたり、おかん(オフィスおかん)であればすべての働く人を食事を通して健康にしようとしていたり、BEC(Gozal)はバックオフィスの負担をゼロにしてチャレンジする会社をもっと増やそうとしています。

私は彼らは企業としてユニークな価値を提供できていたり、魅力的な世界観を提示できているから自然と優秀な人材が集まってきているのではないかと思っています。

シンプルに、採用は競争であり、勝ち抜くには独自の魅力を持たねばならない、ということ。それがスタートアップにおいてはチャレンジし続けることにほかならないと。

まとめると割と当たり前な結論になってしまいましたが(笑)、あらためて採用の成否は、企業としての在り方そのものに拠るという思いを最近強くしています。

これから起業する方や事業のピボットを考えている方はターゲットとするマーケットやそれをどう獲るかという事業戦略の視点以外に、自分たちやユーザーだけでなく一緒に働くメンバーがワクワクする事業か、という視点を持ち続けていただけると良いんじゃないかと思います。

ということで、ベンチャー/スタートアップ界隈の皆さま、未踏の領域にチャレンジすることに人生を賭ける価値があると理解していて一歩踏み出せていないひとをもっとダークサイドに引き込んでいきましょう(笑)。

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