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【今でしょ!note#112】「優しさ」はクールな戦略

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

マッキンゼーのレポートで「It's cool to be kind : The value of empathy at work」という記事が先日公開されていました。

職場において、共感・優しさへの投資は、チームのパフォーマンスを最大化するための戦略である。そしてそれはスキルなので育むことが可能で、決してフワフワとした曖昧なものではない、という趣旨のレポートです。

私自身も大変共感する部分も多かったですし、最新のグローバル大企業でのマネジメントの議論・研究はここまで来ているのか、と大変関心したところなので、今日はこの記事の内容に沿いながら、私の気付きなどを解説していきます。

仕事において共感が必要な理由

一言で「共感」と言っても、大きく3種類あります。

動揺している友人と一緒に過ごしているときの対応例が紹介されていますが、1つは「自分自身が相手の動揺を感じ、相手の感情を身をもって受け止めること」。
2つ目は「友人が何を感じているのか、なぜ感じているのかを理解しようとすること」。
3つ目は、「その友人が経験していることを気にかけ、より良い気分になってほしいと願うこと」です。

私たちの生活や職場において、それぞれ異なる用途を持っていますが、この3つが合わさることで、人間の共感力が構成されています。

共感とは「経験」であり、「優しさ」は行動です。

優しさとは、私たちが他人のためにすることですが、純粋に相手のことを気遣って何かを手伝うとき、「共感」が「優しさ」につながります。
人は、ほんの一瞬でも「共感」を覚えると、身近な人、あるいは見知らぬ人であっても、人を支援するというさまざまな研究証拠があります。

そして「共感的リーダーシップ」について語ることは最近の流行のように思いがちが、共感力が職場のスーパーパワーであることを示す証拠も以前から多く存在します。

共感的な傾向にある従業員は、ストレスに関連した病気で病欠を申し出たり、燃え尽き症候群になる報告が少ないです。
精神的な健康と士気が向上し、その組織にとどまる意向が高まり、共感されていると感じる人は、より革新的で創造的なリスクを取る傾向があることも分かっています。

マネージャーのアプローチ

「共感力」と相反する概念と捉えられがちなのは、「効率化」です。
効率的であることは、感情を遮断し、人との関係を断ち切ることであり、そうすることでよりメンバーをハードに働かせることができると考えるのは根本的に間違っています

人は、同僚やリーダーとのつながりを感じるとき、より懸命に、より速く、より創造的に働くのです。

マネージャーが共感能力を高めるためにまずやることは、マネージャーがメンバーと対話する時間を増やすことに尽きます

これは非常に重要なことですが、見落とされがちです。表面的な効率性を追求するあまり、より深いレベルで効率的であることが無視されがちだからです。

また、多くの人は、共感力は先天的で固定的な特性だと考えていますが、最近の研究によると、他の能力と同じように、後天的に磨くことができるスキルであることが判明しています

自身の経験上も、職場の価値観を形成している部分において、マネージャーのスタンスはかなり大きいです。

そのため、より共感的なマネージャーがいるチームでは、心理的安全性が高く、人々がアイデアを出しやすくなります。
一方で、メンバーが心理的に安全でないと感じると、共感を表しにくくなり、お互いに共感しにくくなるという悪循環に陥ります。

メンバーが「このチームで大切にされている価値観は何だろう?」と探る時には、マネージャーの一挙手一投足に注目が集まります
そのため、マネージャー自身がスキルと戦略を以て率先して「自らが高い共感力で思いやりを示す」ことで、組織文化を築いていくのが重要です。

共感の文化を創造する

マネージャーが職場で共感的な行動を常態化させるためには、小さく取り組んで持続できるということが大切です。

記事から、私は次の2つがポイントと理解しました。

一つ目は「イベントではなく平時に取り組むこと」です。
共感には習慣的な練習が必要なので、普段の何気ない会話の中に、共感を浸透させる声かけ・スタンスを示していくことが大切です。

二つ目は「会話の中で、何を評価するのか示すこと」です。
分かりやすい評価対象は、個人のパフォーマンスですが、誰かが思いやりや共感を持って行動しているのを見かけたときに、それを取り上げて評価し、そのような行動が普通になるよう働きかけることも重要です。

また、"Good Samaritan Study"と呼ばれる有名な研究を引用して「人は急いでいないと70%の人が他人を手助けするが、急いでいて時間的なプレッシャーが高いと、10%に下がる」ということが分かっています。

マネージャーは基本的に忙しいですから、時間的プレッシャーにより、共感力向上の取組が疎かにならないよう意識的に時間配分の優先度を見直すのが大切です。

適切な量と質で共感する

当記事で触れられている注意点として、全員が常に可能な限り共感すべきと言っているわけではない、と指摘されています。

チームメンバーとの共感そのものに疲れてしまったりするほど自分を犠牲にするのは、有害な社会規範です。

他人のために優しさを以て行うことは、まずは自分自身のためにならなければならないです。そうでないと、持続可能な方法で他の人に寄り添うことはできません。

また、他人の感情を引き受ける「感情的共感」ではなく、相手の感情を感じずに人を思いやる「共感的配慮」に集中することが大切です。

人の痛みまで引き受けることなく寄り添い、心理的な境界線を保つことが継続できる優しさの手法です。

誰かが暴言を吐いているとき、報復する代わりに好奇心を持つことが実にパワフルであること。

私たちが嫌だと思うような行動をとる人は、たいてい不安などの何らかの痛みを内面で感じているためです。
「これまで過ごした時間から、あなたは本当に良い人だと思っているが、いま、それに矛盾した行動を取っている。自分が知っているあなたの美徳と、どう折り合いを付ければよいのか?」と好奇心をもって接することは、非常に効果的であると解説されています。

自分の感情と行動を区分ける必要があるので難易度が高いですが、このあたりも自分の中で言語化・意識的に気持ちと行動を分離させるという高等スキルになります。
でも、スキルなので、誰でもトレーニングすれば習得できるはずです。

チームに信頼と共感を築くこと

「仕事は厳しいもの」という世界観に「優しさ」の話を持ち出すと一見ふにゃふにゃした甘いものと捉えられそうです。

しかし、私が大切と思うのは、「共感は、仕事で高い成果を出すために、メンバーのパフォーマンス最大化を促すもの。共感により優しい行動が生まれるから、効率化のアイデアや現状改善の行動が増える」ということです。

だから、マネジメントスキルとして、信頼感と共感に満ちたチームを作る。
難題ではありますが、次世代リーダーの必須スキルとして、日々の管理職奮闘の中で磨いていきます。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
今日もお読みいただき、ありがとうございました!

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