見出し画像

これからもっと増えるはず。 トミージョン手術に変わる新たな手術とリハビリ 2

2020年も後わずか。今年はいかがでしたか?来年はどういった年にしていきたいですか?

さっそく前回の続きですが、今回はUCL repair with internal brace術後のリハビリのフェーズについてのまとめと翻訳で、リファレンスは前回と同じ文献です。

まずは簡単にですが、この文献に記載されているフェーズは以下のようになっています。

Phase 1: 〜7日間
Phase 2: 術後2週目〜5週目
Phase 3: 術後6週目〜8週目
Phase 4: 術後9週目〜14週目
Phase 5: 術後15週目〜


Phase1: Immediate postoperative phase


手術後の最初の7日間は、可動域調整可能なブレースを使い、UCLを保護するために肘は90°屈曲で固定される。 肘や前腕の可動運動は行わない。 ただし、手首と手の動きは許可されている。

痛みおよび炎症の軽減が目的でクライオセラピーやハイボルトを使う。また、組織の亜酸化窒素レベルを上げ、治癒を早める目的として切開部にクラスIV深部組織レーザーも使用する。

ちょっとタイムアウトです。文献には亜酸化窒素(Nitrous Oxide)と記載されてるんですが、Nitric Oxideの間違いじゃないのかな?と思いました。Nitrous oxide laser tissue healingって調べてもNitric Oxideが出てくるんですよね。過去に取ったあるコースではNitric Oxideは血管拡張作用があると習いました。そのため、血流がよくなり治癒を促すと。

では続きます。

リハビリテーションの初期段階では、筋萎縮を最小限に抑えるための筋肉の自発的活性化にも焦点を当てており、すべてのエクササイズは肘ブレースが90°屈曲でロックされた状態で行われる。

痛みを伴わないsubmaximalの等尺性運動は、最初に肘の屈筋と伸筋、および手首の屈筋、伸筋、回内筋、回外筋のグループに対して行う。肩の外旋、内旋、屈曲、伸展、外転にも行う。その場合はUCLへの負荷が最低限になるよう肩を内転、回旋はニュートラルな状態で行う。痛みを伴う場合は、外旋および内旋の運動を避けるように注意する必要がある。

肩の外旋/内旋と屈曲/伸展、および肘の屈曲、伸展、回外、回内を交互に行うrhythmic stabilizationをして、上肢の固有受容感覚と神経筋制御の再確立を開始する。さらに、患者の肩甲骨の位置と姿勢を改善するために、座位での肩甲骨の徒手抵抗と姿勢エクササイズ、姿勢ストレッチが一緒に導入される。

術後の適切なfascial slingの治癒を確実にするための最初の7日間の固定期間を経て、体幹、骨盤帯、および下肢の運動をリハビリテーションプログラムに組み込むことができる。

このフェーズでは術後の急性期の処置と早い段階からの肘と肩のアイソメトリックスと肩甲骨近辺のエクササイズをしていくということですね。

Phase 2: controlled mobility phase


このフェーズは術後2週目の初めから始まり、5週目後に終了する。

術後8日目に、肘ブレースの可動域は、30°ー110°屈曲で肘を動かすことができるよう設定される。 3週目の初めには10°ー125°まで動くように再度調整される。最後に、4週目の初めには、完全な肘の可動域(0°ー145°)を許可するように設定が進められる。 ブレースはcontrolled mobility phaseからintermediate phaseへの移行する6週目までに外すことができる。

このフェーズでは、関節内の栄養を促進し、コラーゲン組織の合成、整列、および組織化を援助するために、リハビリテーションスペシャリストによる肘と前腕のパッシブROM運動が実行される。 アクティブアシスト、アクティブ、およびパッシブROMエクササイズは、肘、前腕、および手首に対して行われ、肘の屈曲と伸展、前腕の回外と回内、および手首の可動域を回復し、瘢痕組織と癒着の形成を防ぐ。

初期のROM運動の主な目標は、肘の屈曲拘縮の発生を最小限に抑え、肘の完全伸展または損傷前の伸展可動域を実現することです。 したがって、術前の肘の可動域を評価し記録する必要がある。 過去2〜3年で肘が完全に伸展したかどうかを尋ねる必要もある。 特にスローイングアスリートのUCL repairの場合、術後の可動域は、術前の可動域に関連していることがよくある。

ROMエクササイズに加えて、関節拘縮の発生を最小限に抑えるために、肘、肩、および/または手首に可動性評価によって示された関節モビライゼーションを行う。
もし患者がROM運動および関節モビライゼーションを使用して完全伸展の獲得が引き続き困難な場合は、低負荷で長時間のストレッチ(collagen creepとも呼ばれる)を行い、コラーゲン組織の変形またはクリープを生じさせ、組織の伸長をもたらすことがある。 

可動域の回復に加えて、3週目の初めに、肩と肘の短縮性運動を開始する。 肘の動的関節安定性は、関節を横切る筋肉、特に屈筋-回内筋の内側の筋肉群によって生産される圧縮力によって生まれる。 UCL上にある解剖学的走行に基づいて、これらの筋肉は肘内側の外反ストレスを安定させるのに役立つ。 これらの筋肉は、UCL欠損の投手で筋電図のシグナル強度が大幅に低下していることでも示されており、リハビリテーションの必要性を示している。

Throwers Ten Programは、患者の進行と徴候および症状に基づいて、3週目または4週目の初めに開始される。

このフェーズではROMエクササイズ(パッシブ、アクティブアシスト、アクティブ)を通して可動域の回復と、中盤あたりから肩と肘の短縮性運動を始めていき、Throwers Ten Programを開始していくわけですね。体幹、骨盤帯、下肢のトレーニングはこのフェーズから足していけるようです。

Phase 3: intermediate phase


このフェーズは6週目から8週目にわたり進みます。

このフェーズでの重点は、肘と上肢の可動性の維持(または、まだ制限がある場合は完全に回復)、筋力と持久力の改善、elbow complexの神経筋制御の再確立、および運動の機能的プログレッションの継続を含む。 必要に応じて、肘、前腕、手首の完全可動域を維持するために、ストレッチを続ける。 必要に応じて、モビライゼーションテクニックを進行し、残りの関節包またはaccessory motionの制限に対処する必要がある。

このフェーズでは、手首の屈筋と伸筋、および前腕の回内筋と回外筋に焦点を当て、柔軟性を向上していく。 肘の伸展と前腕の回内の柔軟性は、スローイングアスリートが効率よくにプレーできるように特に強調されている。 オーバーヘッドアスリートの肩の柔軟性を最適に保つことも重要です。 肩の90°外転位での外旋がわずかに失われただけでも、投球動作中に肘内側の構造にかかる負担が大きくなる可能性がある。 90°外転、屈曲、および水平内転で最適な肩の内旋可動域を達成および維持するためのストレッチも、熱心に実行する必要がある。 オーバーヘッドアスリートでは、肩の回旋可動域(外旋と内旋の合計)を評価し、対側の四肢への動きを正規化することが重要です。

Shoulder and elbow complexの神経筋制御運動は、運動活動中(athletic activities)に肘関節をコントロールする筋の能力を向上するために、このフェーズで進められます。

強化エクササイズは、6〜8週目に、以前に公開されたAdvanced Throwers Ten exercise programに進む。

上肢の両手プライオメトリックプログラムの開始は6週目から、片手プライオメトリックプログラムは8週目から開始される。プライオメトリックエクササイズは、Phase 3の後の方の段階でメディシンボールを使用し、高レベルのストレスを発生または耐えるよう肩と肘をトレーニングする。 両手プライオメトリックエクササイズには、チェストパス、side-to-sideスロー、オーバーヘッドサッカースローが含まれる。 これらは、ウォールドリブル、ウォール90°/ 90°スロー、外転0°での外旋および内旋スロー、リバウンダースローなどの片手でのプライオメトリックスに進む。

このフェーズでは、肘や上肢のROMとモビリティーの維持・向上、筋力と持久力、neuromuscular controlの再確立、Advanced Throwers Ten exercise program、プライオメトリックスを開始・継続していくようです。

Phase 4: Advanced strengthening phase


リハビリテーションの第4フェーズでは、アスリートが高レベルのストレス状況やスポーツに参加できるように準備するための活動を進める。

このフェーズは9週目から14週目までです。目標は、筋力、パワー、持久力、および神経筋制御を徐々に高めて、徐々に徐々にスポーツに戻る準備をすることです。 このフェーズを開始する前に、次の基準を満たす必要がある。
- 痛みのない完全な可動域
- 触診の痛みまたは圧痛の欠如
- 痛みや弛緩のない満足のいく臨床検査(特に外反ストレスおよびmilking maneuverだけでなく、その他肘の病理に関するスペシャルテストを伴ったもの)
- 以前のフェーズを問題なく完了
- 投げる基準を満たす筋力

このフェーズでは、伸張性収縮やプライオメトリックを伴う積極的なエクササイズが続けられる。 高度な強化運動として、ハイスピード、伸張性収縮、およびプライオメトリックエクササイズを強調する。 肘の屈曲運動は、伸張性コントロールを強調するために進められる。

ウェイトマシンで実行される積極的な強化エクササイズも、このフェーズの10週目に組み込まれる。最も一般的に、Advanced Throwers Ten exercise programに加えて、シーテッドチェストプレス、シーテッドローイング、およびフロントラットプルダウンが行われる。

インターバルヒッティングプログラムは10週目に許可され、オーバーヘッドアスリートのインターバルスローイングプログラムは、準備ができている場合は12週目に許可される。

ほとんどの場合、投手はインターバルスローイングプログラムの開始から約8週間後にマウンドから投球に進む。 一般的に、ピッチャーは50%のperceived intensity(選手の感じる強度)で開始され、75%、90%、および100%まで徐々に進行する。 スローイングプログラムの実際の進行速度は、各アスリートに合わせて個別化し、症状、メカニクス(投球動作)、および目標に基づいて調整する必要がある。

このフェーズでは、伸張性収縮やプライオメトリックスの継続、ウェイトトレーニングを開始、Advanced Throwers Ten exercise programの継続、中盤から打撃のプログレッション、後半からスローイングプログレッションを始められるようです。

選手の感じる強度とありますが、上記のnoteの文献でもあったように、選手の投げる球速は選手の感じる強度と比例して下がりません。例えば、50%の強度だと最大球速の50%とはならないようです。つまり、50%の強度で投げてね、と伝えても肘への負荷が50%とならないのです。ですので、できればスピードガンで球速をちゃんと測り、同時にmotusスリーブを使いリアルタイムの肘への負荷を測り、一定の強度を保つようにしましょう。

Phase 5: Return to activity phase


最後は、競技への復帰フェーズです。 このフェーズでは、適切な動的ウォームアップが強化され、エクササイズプログレッションが継続される。これにより、アスリートは、投球、テニス、ゴルフ、水泳、バレーボールなどのインターバルアスレティックプログラムを完了した後、徐々に完全な競技活動や投球に戻ることができる。

これまでの経験では、この手順に従って競技に戻るまでの一般的なタイムフレームは、手術後約5か月でした。

このフェーズに入ると競技復帰に向けたプログレッションを継続していくようですね。投手であれば、スローイングプログレッションの計画に沿って、距離、強度、ボリュームをコントロールし、次のようなステップを踏んでいきます。

フラットグラウンド→ショートボックス(距離の短いブルペン)→ブルペン→ライブ打撃→試合

試合に復帰して、”良かったー、無事復帰できたー!”と終わりではありません。試合復帰後も、リハビリでしてきた負荷→リカバリー→アダプテーションのサイクルをリスペクトしないといけないので、イニング数・球数の制限とプログレッションが必要になってきます。

まとめ

整形外科医のプロトコルでもリハビリのタイムフレームは変わるでしょうから、こちらのnoteでは、なんとなくの流れが分かればいいと思います!これからもっとUCL repair with internal branceに関しての文献とケースが出てくるでしょう。

それでは良いお年をお過ごしください!2021年はいい年あることを願います。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?