人生は旅で、旅は人生である
こんなにも幸せな気持ちがまだあったのか、と驚いた。
3月11日、結婚式を挙げた。半年ほど前、できるだけたくさんの人を呼んで、やりたいことをすべてやって、感謝で溢れる時間をつくろう、と夫と決めた。家族、友達、会社の人、みんながひとつの場所に集まって、笑って、食べて、飲んで、声を出して、抱き合って、泣いた。
人が集まるということが許されなかった長い時間をみんな知っているからこそ。誰かと食事をするとか、肩を抱き合うとか、握手をするとか、そんな些細なことが出来なかった時間があったからこそ、初めましてのひとも久しぶりの人もその再会を嚙み締めたのだと思う。
高砂から見る景色は、どこまでも輝いていて、愛おしい時間だった。一番遠い席で、涙を拭う母の姿。歯を食いしばって、じっと私を見つめる父の姿。こんなにも両親を抱きしめたいと思う気持ちは初めてのことだった。
冒頭にも書いたように、結婚式にはできるだけたくさんのひとを呼びたかった。その理由のひとつに、両親にわたしの大切な人たちを会わせたかったということがある。
わたしは18歳で家を出た。今だから言えることだけれど(両親にはまだ言えない)、筑波大学への進学を選んだのは、学びたいことがあったということももちろんあるけれど、一番の理由はひとり暮らしをしたかったから。家から通うにはちょっと遠くて、でもいつでも実家に帰れる場所。それで、大学を決めた。
なんてくだらない理由だと思うかもしれないけれど、あの頃のわたしは早く大人になりたくて、早く自立をしたくて仕方がなかった。でも結局、離れて暮らしていただけで、生活のすべては家族が守ってくれていたことを、今になりやっと理解している。
離れている間、本当にふたりはわたしのことを心配していた。本当はちゃんと分かっていた。でも、それが分かれば分かるほど、むきになって、自分でできるふりをした。それで、実家には、ほとんど帰らなかった。だから、離れている間にわたしが誰に支えてもらって、愛してもらってきたのか、ということをちゃんと教えてあげたかった。
それで準備した結婚式だった。
もう2度とない、そんな日を過ごした。人生最良の日とは、こんな日のことを言うのかと生まれて初めての感覚が胸をいっぱいにさせてくれた。
そして、この人と、一生生きていくのだ、ということが入籍して初めて、やっと実感に変わったような気がする。
隣で笑う夫と、夫を囲んで笑う彼の友達と家族。わたしの守りたいものが増えたように思う。家族になるってどういうことなのか、まだ分からないけれど、そういうことなのかな、と思ったりもした。
二十数年間、まったく違う道を歩いていたふたりが、いつしか同じ道を歩くようになった。道が太くなったようで、でもまるで道がふたつになってそのどちらをも味わうことができるようで、なんだか嬉しい。ひとりよりふたり。わたしにとってはその生き方がしっくりくる。
人生はまるで旅だし、旅はまるで人生だ。旅好きな彼と、いつまでもいつまでも旅をしたい。うん、いつまでも、いつまでも。
ちなみに両親へは、4人にもぜひ旅をしてほしいという想いを込めてバックパックをあげた。それぞれの産まれた時の体重米を入れて。
思い出はいつでも心のお守りになる。集まってくれたみんなの笑顔が、まぶたを閉じるとよみがえる。またひとつ、わたしの道しるべが増えた。人生最良の日に、心から感謝をしている。
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次回の旅日記は、そんな夫とお付き合いして初めて行った旅のことを書こうと思う。心地のよい南風に吹かれた大切な大切な記憶である。
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