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Jリーグ 観戦記|One Soul|2020年J2第42節 松本 vs 愛媛

 冬草の先に、山々がそびえる。鋭く、剛健な山肌には白布がかけられたかのように、薄く雪が降り積もっていた。この地に漂う、純度の高い空気。それはまるで、山で生まれたばかりの水に抱かれているような錯覚を僕に与える。

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 雄大な風景を背に、スタジアムの照明灯が佇む。緩やかな坂を上るにつれ、感情も高揚していく。待望の出会い。北アルプスに抱かれたスタジアム。瞳孔が、そして、五感が開いていくのを肉体が感じ取る。空が、いつも以上に青く見える。

 透明感のある、涼やかな空気は長野の気候のせいばかりではない。アルウィンは純粋な愛で満たされている。土地への愛。自然への愛。松本山雅への愛。そして、サッカーへの愛。それらの愛に濾過され、清らかな気配がスタジアムを支配する。

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 “One Soul”。打ち鳴らされる手拍子はスタジアムの熱を上げていく。魂の共鳴。この場の空気に熱を遮るものは何もない。山雅の脈動は身体に乗り移り、鳥肌が立ち続ける。

 拍手は鳴り止まない。両翼が敵陣深くに侵入し、クロスを供給する。それに呼応するように松本山雅の選手たちは走り、ゴール前に立ちはだかった。

 空にボールが舞う展開に苦味のようなものは感じなかった。アルウィンに響いた手拍子は大砲のごとく、遠くの山々に号砲を轟かせる。彼らは自然をも味方につけて、相手と対峙する。手足の先端は感覚を失った。冷気が服の間から入り込む。しかし、冬の寒気は僕の熱までも奪い去ることはできない。このスタジアムは愛であふれ、その愛は僕をも抱擁した。

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松本 2-0 愛媛


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