書評 #68|ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝
アメリカの女子サッカー選手、ミーガン・ラピノーの物語。本作を手に取る前から、卓越した技術とそれに勝るとも劣らない人としての存在感が印象に残っていた。
ピッチ上はもちろんのこと、同性愛者として、社会における少数派の権利を守るために彼女は生きる。それはまさに戦いだ。ラピノーは公平であることを重んじている。とてもシンプルな論理。強烈な反骨精神と勝利への執着を紡がれた文字の一つ一つに感じた。冒頭で触れた人としての存在感は意志の強さと同義であろう。
そんな彼女をして、同性愛者であることを自覚する前の状況を「暗中模索」「宙ぶらりん」と評していたことも記憶に残る。そして、世界との隔たりが消えた後の猪突猛進ぶりは自我に向き合うこと、理解することの重要性を示唆しているように思う。
また、同じ競技でありながら、男女間におけるサッカーを取り巻く状況の違いも印象的だ。平等賃金を阻むものは歴史か、市場規模か、固定観念か、主観的にならざるを得ないエンターテインメント性によるものか。正解はなく、人によってその答えの濃淡も異なるだろう。しかし、そのテーマについて考えることに火をつける力強さを感じてやまない。
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