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【丸ごと文字起こし】美術鑑賞プログラム【ジャポニスム】

オンラインで鑑賞プログラムを、ほぼ丸ごと文字起こししてみました。
今回のテーマはジャポニスム。

プログラムの流れ

なかねこ8月.003

メンバー構成:
ファシリテーター:佐藤(Q)
参加者:小学生(1さん)・高校生(2さん)・1さんの親(3さん)
   *毎月1回鑑賞会を行ってきたメンバーです。

1:目を閉じ、呼吸を意識し、ボ〜ッとする 3〜5分


2:作品を鑑賞して、発見したことをメモする 3分

鑑賞作品:(作家名、作品名は知らせず)

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3:参加者は順番に感想を共有する 15分

1さん(小学生)の場合

Q(佐藤):1さんは、絵を見てどうでしたか?

1:フェルメールの牛乳を注ぐ女ってあるじゃないですか。その牛乳を注いでいる女の人みたいな格好してる人が何人もいるなって・・

Q:どこらへんが格好としては同じようなところだと思いましたか?

1:上の部分の袖の形とか被ってるターバン?みたいなやつとか、結構そういう服装がなんか似てるなって思いました。

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それでなんか背景がなんか赤いじゃないですか。それがなんか何で赤にしたんだろうなって思ったり、後は右上の方に青い服を着てる人が、深緑?の服を着ている人・・なんか襲われている?それでなんかそれを見て、背景の赤が血に見えちゃって・・

奥に狼みたいな何かのがいて、何ていうんだろう、闘技場みたいな・・女の人たちも拝んでいる感じがあって、何て言うんだろう・・殺し合いとかそういうのに見えちゃって・・

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最初見たときはそこまで抵抗をなかったんですけど、深く考えるとちょっと怖い作品だなって思いました。以上です。

Q:ちなみに襲われてるって言うのは、どっちがどっちを襲ってるんですか?

1:青い服の方が、緑の服の方を襲っているように見えます。それか骨を折ってるみたいな・・

Q:骨を折っているっていうのは、どこらへんからそう思ったんですか?

1:地面に回転させて押し付けるみたいな感じに見えたんです。その時に何か腕とかがやられそうだなって思っちゃって・・

Q: なるほどありがとうございます。

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2さん(高校生)の場合
Q:2さんはどうでしたか?

2:2人がこう・・青い服と緑の服の人が戦っているんですけど、よく古代ローマとかのあいうやつって何か周り・・観客の人も結構盛り上がって、わーって見てる人が多いと思うんですけど、何かその割には周りの人も何か・・祈ってる人が多くて、どういう場面なんだろうっていう風に思ったのと、

でもその周りがみんな結構目閉じて拝んでいる中、右から4番目の人?が、もしかしたら普通に祈っているのかもしれないんですけど、何となく目開けて普通に見てる感じにも見えました。

戦ってる人の内の青い服の人の方が、黄色い羽っぽいのが・・何でか分かんないんですけど生えてるなあと思ったのと、左の方に牛っぽい何かがいるんですけど、その戦ってるのと牛っていうところから、何か闘牛をやってるのかなと少し思ったんですけど・・何かあんまり牛はただ関係なさそうに突っ立ってるだけで、人は人で戦ってるから、あんまり闘牛って感じではないのかなって思いました。

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真ん中の木の・・真ん中の茶色いのが、木みたいに見えて、だけどその木の上の方が何か枝にしては不自然な感じに茶色く輪っかになってて、不思議だなって思ったのと・・

あと女の人がみんな同じような服装をしていて、何か修道女みたいって思ったのと、あと最後に1さんが言ってた背景が赤っていうのが、戦っているからかなって思って・・それこそ古代ローマみたいに情熱的にわ〜って戦っているところからすると、背景が赤も似合う気がしたんですけど、でも何か周りの人が祈ってるから、なんかそんな戦って、オーッていう感じとはまた別だから、そうするとなんで背景が赤なんだろうなってちょっと疑問に思いました。以上です。

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Q:なるほど、ありがとうございます。見方って言うかね目線として、2さんは今回はすごく「違和感」みたいなものに注目してもらって見てるのがすごくいいなっていう風に思いました。言われると「なるほど」とそう思いますよね。

こう何かスポーツとかだとしたら、この前オリンピック見てたかな?祈ってる人も・・まあ中にはいるかもしれないけど、見ててもっと盛り上がるっていうイメージがありますよね。でもこの絵はそうじゃないので、ちょっとどうなんだろうなととか、

この牛がどういう風に関係あるんだろうとか、まあ牛かわかんないけどね。1さんは狼って言ってたけれども・・木の不自然なところとか、同じ服着てるのも何か不自然かもしれないし・・

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なんか違和感とか、普通じゃないところって言うのは、作者が何かを表してるところかもしれないし、単純に僕らと文化が違うところかもしれないし・・いろんな理由があると思うんだけど、そこら辺に注目していくのがすごくいいなという風に思いました。

そういう意味でいうと、1さんのフェルメールの洋服と「似ている」っていう観点も良いと思いますね。違和感とか違いを考えていくのと逆に、あれと「似ている」ってところで引きつけて考えて行くのも、これどっちも大事なんで、そこら辺が二人ともなんかポイントとして面白かったなという風に思いました。

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3さん(1さんの親)の場合
Q:3さんはどうですか?

3:一番最初に目がいったのが、やっぱり女の人・・か天使かわからないけれど、男の人を抱えている?で、その周りで手を合わせてる人がいるから、なんかこの男の人っていうか、緑の服着てる人が死んじゃった人なのかなって・・でもなんか天使が・・もし死んじゃったらもっと優しく連れてってくれそうなのに、この人は何か捕らえられてるとか、懲らしめられているみたいな感じがあって、もし死んでるとしたら、なんか穏やかな死に方をしなかったのかなって・・でも、周りの人は何かそれを穏やかな顔で見ているのが、何かよくわかんないな〜って。

あと天使の人と男の人が、女の人達と、あと神父さん?牧師さん?わからないけれど、一番右にいる人に囲まれていて、それが最初は空中を見ている感じなのかなって思ったんです。天使とか牛が空の方にいて見ているのかなって思ったんだけど、もしかしたら見方だけど、赤い地面?でこの二人は戦っていて、それを上から眺めているのかなっていうふうにも見えてきて・・だけど具体的に椅子とか何かがあるわけじゃないから、空間の何だろう・・感覚っていうのが、この絵からだとどっちがどうなのかっていうのが・・ちょっとごちゃごちゃしてわからない・・感じがしました。

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あとこれが、もし死ぬっていうことがテーマに描かれてる絵だったら、すごく不謹慎だなって思うんだけど、やっぱりなんかレスリングを見ている観客の人たちみたいにも見えて、何か・・ちょっと中世のシュールなオリンピックみたいな(笑)。何かちょっと嫌な感じもするけど、ちょっと面白いみたいなところもあって・・

あと牛が、最後牛が・・周りに神父さんみたいな人もいるし、羽のある生えた天使みたいな人もいるし、何か地面が真っ赤?地面っていうかその背景が真っ赤だから、何か血とかのイメージもあって、生贄じゃないけれど、なんか牛も嫌なことを背負っているって言うか・・何かハッピーな牛じゃなくて、悲壮感があるというか、恐怖の所にいる印象がありました。
以上です。

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Q:はいありがとうございます。えっと、他の二人の視点とちょっと違うのは、違和感・・変だな、おかしいなっていうところに目をつけてもらったってのは同じなんだけど、そっから視点の編集が入っている感じで、自分の想像を膨らませて、こうだったらどうだったんだろう?っていうことを考えるというのはすごく面白いですよね。

この人たちが別の空間・・足元見えないですからね、ここがもしかしたらそのコロッセオみたいに、ドーム球場の観客席みたいになっているんだろうかとか、もしくはこれが天使だとしたらそういう世界観で、この人達浮いてるかもしれないし・・まあ単純に丘の上から見てるのかもしれないし・・っていう、自分でこう視点を編集しちゃう、画面の外の事、描かれてない部分も考えてしまうっていうのは、すごいいいなっていうふうに思いました。

ちなみに、この抱え込んでいるどちらか女性って言われましたか?どっちが女性ですかね?

3:ぱっと見が、あの青い服着ている人が女性に見えたんですけど、でもこの抱え方がちょっと女の人ではない抱え方な気がして、性別不詳みたいな・・

Q:分かりましたありがとうございます 。

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4:絵の解説をする 10分

では今日の絵ですけれども、ゴーギャンっていう人が描いた「説教の後の幻影」という絵になります。

ゴーギャンはフランスの画家です。タイトルの「説教」は、「お説教」って言うと、なんか怒られるみたいなイメージが日本の言葉だと強いんだけども、「教えを説く」って書いて、教会で教えを受ける、お話を聞くっていう意味で、「幻影」は「まぼろし」っていう意味です。

登場している人達の洋服の事を、1さんが言ってくれましたが、これはフランスのブルターニュ地方の民族衣装らしいです。伝統的な服ということですね。で、このブルターニュ地方の田舎の町では、習慣として日曜日になったら女の人はこの伝統的な服を着て、教会へ行って説教=お話を聞いたり、あと御札をもらったりするっていう決まりになっていたらしいです。

だからこの絵の場面は日曜日ですね。みんながこの服を着てる。僕たちで言ったら、日曜日になったら着物を着て、お寺や神社へ行って、神主さんやお坊さんにお話を聞いたり、お守りをいただくとか、そういうイメージかな?

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で、お話=説教が終わった後の幻影ということなので、実はこの取っ組み合っている二人は幻影=幻なんですね。この戦いは旧約聖書に出てくるある有名なシーンで、そのシーンをみんなで見ちゃった、みんなで幻を見てしまったっていう場面の絵なんですね。

この戦いがどんな話なのかっていうと、これやっつけられている方、襲われてる方ですね、この人が「ヤコブ」さんという男性です。で、上から抱え込んでる方が「天使」です。この「ヤコブと天使の戦い」っていうのがすごく有名なモチーフとして、世界中のみんなが知っているお話、名シーンとして知られているそうなんです。

ユダヤ教の旧約聖書に出てくるこのヤコブさんは、まあ、いろいろと大変な人生を送るんですが、その旅の途中で天使が出てきて襲われたんですね。俺と力比べ・・と言うか、レスリングがそこで始まったって書かれ方もしているし、これは相撲の起源なんじゃないかって説もあったりして・・まあとにかく2人は戦いを始めたと。

で、もうずっと一晩中、一日中戦って・・・でもなかなかヤコブは参ったを言わなくて、1さんは骨が折られているかもって言ってましたが、実際も天使は太ももを狙って攻撃して、ヤコブの腿が外れたみたいな話もあって、それでも参ったって言わなかったので、天使はついに諦めて、ヤコブにイスラエルっていう名前をあげますってなって、それが今のイスラエルっていう国だったり、民族のルーツになったっていう・・結構大事な話だそうです。

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なのでこの「ヤコブVS天使」ってうのは色んな人が絵にしてるんですね。例えばレンブラントさんとか、ドラクロワさんとか、モローさんとかいろんな人がこの戦いを描いてます。この他にも、たくさんこの場面をイメージした作品があるそうなので、皆さんも特に外国の絵とかで、天使と相撲取ってるような人を見たら、これヤコブじゃないかな?って思ってもらってもいいかもしれません。

あと今日ちょっと詳しくは後で説明するんですが、実はこの絵っていうのはみなさんが気づいてくれたように、不自然な描写がいろいろとあって、実は日本の影響をとても受けていると言われています。

このゴーギャンさんが生きていた時代に、日本のものがヨーロッパにたくさん入ってきたんです。例えば浮世絵とかなんですけど、その日本の描きかたってすごく独特なので、ヨーロッパの人たちはとてもびっくりしたんですね。そして後に日本の表現を勉強して、いいところを取り入れようとして描かれた中の、代表的な作品がこのゴーギャンの「説教の後の幻影」です。

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皆さんが一番注目したのは、この地面の色ですかね?これはやっぱりおかしいですよね、普通地面がこんなに赤いのは・・でも、例えば日本の浮世絵、赤富士で有名ですけど、この葛飾北斎『富嶽三十六景 凱風快晴』では、こんな大胆な色使いがあるんですよね。

あと、色だけじゃなくてもっと言うと・・ぺったんこなんですね。日本の表現って奥行きが全然ない絵なので、この富士山なんかもそうだけど、本当の富士山ってもっとこう下のほうが、麓が僕らの近くにあって、上の方がどんどん遠くなって行くから、もっと遠近がありそうだけれど、この浮世絵はもう壁に描かれたみたいにぺったんこに見えませんか?

これにもヨーロッパの人たちは影響を受けて、今日特に3さんが言ってくれてましたけど、この赤の部分の空間がよく分からないってのは、地面の遠近感が無いからですよね。だからこそふわふわしてるって言うか、変な空間になって、もしかしたらそれは天使がいるような世界観、幻想の世界っていう感覚ともしかしたらつなげたかったからかもしれません。

あと、この2人の戦いが相撲のルーツかもっていうことを言いましたが、葛飾北斎の漫画の絵で相撲の取り組みの絵があるんですけど、ここら辺から参考にしたんじゃないかなって言われていたりします。

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また歌川広重の「亀戸梅屋敷」って作品があるんですが、木の切り取り方がすごく大胆なんですね。一番前の梅の枝ががっつり切り取られてて、もう全体がどんな木なのかわからないくらい。こういう描き方ってのは西洋にそれまであんまり無くて、基本は描くものがなにか分かるように画面からはみ出さないようにしていたんですが、2さんが言ってくれたように、「説教の後の幻影」では、凄く大胆に画面の真ん中に木や枝が切り取られています。おそらくこれも浮世絵などの影響なんじゃないかって言われています。

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という風に、色んな所で日本の影響を受けているのがこの作品です。詳しくは後で色々話すので、全部を言ってませんが、もしよかったら次鑑賞する時にそういうものとして見てみると、何か発見があるのかなと思います。

ゴーギャンがこの作品から、今までの描き方を変えて行ったのでは?といわれているので、その辺の違和感というか、メッセージと言うかね、こんなふうにしたいんだよって事を、皆さんはもしかしたら今日は最初の鑑賞で受け取ってくれたのかなっていう風に思いました。

5:目を閉じ、呼吸を意識し、ボ〜ッとする 3〜5分


6:再び作品を鑑賞して、発見したことをメモする 5分


7:自由に3人で対話して感想を共有する 約10分


3:今2回目の鑑賞みたいな時間をとって、さっきの鑑賞した時と違う感じ方をした部分ってありますか?

2:なんか周りの女の人たちが、聖書に書いてあったのを実際に幻だけど見れたっていうのを考えると、少しその女の人たちのは嬉しいのかなって思って。そういう目で見てみると、右から5番目の人とかちょっと「ありがたい」って感じで拝んでるようにも見えたりして、なんかただ沈んで拝んでいるっていうよりかは、少しありがたい感じが出てるのかなっていう風に変わりました。

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3:なんで「ありがたい」って思ってるって思いますか?私はなんか全然そこを感じなかったから、どうして「ありがたい」って思ったのかなーって思って・・

2:何かこう聖書について色々学んだりしてる人って、何となく勝手な私の偏見で・・その聖書内の出来事は・・なんかなんだろう、なんか神聖な感じでちょっと崇めてるような気がするので・・そうすると何かそれを実際に見たり、聖書に関わることが起きると、「ありがたい」って感じになるのかなって思いました。

3:なるほど、そうか・・他に何かありました?その感じたことの違いみたいなので。

1:はい。まず何か他の人の戦ってる絵(ヤコブと天使)を見てみると、すごく戦ってるところをメインにしてみんな描いてるけど、この人(ゴーギャン)はそれを見てる女の人をメインに描いてる・・だからどうしてそうしたんだろって・・みんなその戦ってるところをメインで描いてるのに、なんか女の人達をなんかメインにしてて、それで戦ってるところはなんかめっちゃちっちゃいみたいな・・なんでそう描いたんだろうって思いました。

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3:なんか私は戦ってる人が今もメインに見えてきちゃって・・どうしてもこの二人に目がいっちゃうんだけど、どうして1さんは女の人がメインだって感じるんですか?

1:まず人数が多いし、あと何て言うんだろ・・全体に広がっている女の人が面積みたいなので強調されている感じがして、赤の中にあの白のやつ(衣装)を被って・・それでなんか白が目立って余計強調されてると思いました。

3:あーなるほど。そっかそういう見方があるんだ。何で女の人をメインに描こうかなって思ってるのかなっていう、答えまでは出てない感じですか?

1:うん。なんか想像はなんとなく浮かぶんだけど・・うまく整理ができない(笑)。

3:わかりました(笑)。

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2:なんとなく、その女の人と戦ってるところの間の・・この真ん中の木が、なんかその女の人たちがメインで描かれてるんじゃないかっていうところで見ると・・なんとなくこの木が・・何て言うんだろう、なんかその木とかが茂っているその中から覗いてる女の人たち側から絵を描いてて・・あるとなんとなく木の奥の戦ってる人たちの方が、奥まってる所にあって・・なんとなくこの木が、なんかそのメインを分けてるのかなっていう風にちょっと今1さんの意見で見えてきました。

3:そうかも。なんかそんなに私深く考えてなくって、なんかこのゴーギャンは日本の絵に影響を受けたっていうか、何か無理やり入れてきたようにこの木が(笑)、なんか変な木・・って思って見てたんだけど、そういう効果もあるかもしれないですね。

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2:私は今の5分間のこの2回目の鑑賞では、今この自分のメモにも、右から4番目の人がこの戦ってるのを見てる方向的に木があるように見えて・・ただ日本のアレを無駄に入れてるように思って。メモにもそう書いてるんですけど・・何となくメインがどっちかって考えると、なんかそういう意味もあるように見えてきちゃったなーって思いました。

3:言われてみると、見てる側と戦ってる側がそこではっきり分かれてる・・世界が違うみたいな風にも私も見えてくるかもしれない。1さんは何かありますか?

1:なんかの戦ってる天使とか戦ってる二人とかもそうだし、普通なら他の人が描いた戦ってる絵も、なんか天使にみんな羽はついてるじゃないですか。それでみんな白とかで描いてるんですけど、この人は黄色で描いてて、服の色とかも(他の人の絵では)白とかそういう薄めの色なのに、ちょっとなんか濁ってるような緑となんかちょっと渋い感じの青とか、背景も赤・・Qさんが言ってくれたように、日本の柄を取り入れたていうやつで、その真ん中の木もなんか、松の木のなのかなーって思ったり・・あとは黄色とか、天使の羽が黄色で、それで深緑とかちょっとなんか青とかそういう色は、何か日本の絵の真似をしてそういう色を取り入れたのかなって思いました。

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3:なんか私も色のことは気になっていて、なんかこの絵って、ゴーギャンの絵って何かこういう色彩の感じがどの作品にもある感じがして。なんか力強い色なんだけど、どこか濁ってるっていうか、ちょっと黒っぽい色だなって思っていて・・でも、なんかこの人が日本の絵に影響を受けてこの赤とか大胆に使ったのかって、もともとこの人はこういう色の、ゴーギャンって何となくこの赤のあるイメージってあるから、どっちが先かわからないけれど、もともとこういう色を使っていて、この絵に関しては別に日本の影響を受けてこうなったってわけじゃなくて、元々のこの人の使い方でこうなったのか、もしくはその日本に影響を受けてこの色にしたのかってのは・・どっちが先かわからないけれど、なんか色はなんかゴーギャンぽい色だなっていうのは感じてました。

2:私は他のゴーギャンの絵が、パって言われると思いつかないので、そういう他の絵の感じは思わないんですけど、確かに色の違和感は感じて・・なんかやっぱり天使とかそういう聖書系のを描く時って、他の画家の方とかは結構なんだろう・・淡い色じゃないけど、そういう神秘的な感じで描くことを考えると、確かになんとなく彩度がないと言うか、濁った感じがして変だなっていうのは思いました。

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3:あとなんかゴーギャンって、何かタヒチの人の絵を描くっていうイメージが私はすごいあって、それしか知らないんだけど・・なんかでも色がちょっと濁ってて、楽しげな絵ばかりじゃなくて、ちょっと辛い苦悩みたいなのも感じるって言うのも思っていたけど、こういうタヒチの絵を描いていたような人が、何でこういう宗教画みたいな絵を描こうと思ったのかなって言うのもなんか気になって・・なんか2回目の鑑賞は、前の絵と比べてどうというよりも、ゴーギャンがどうしてこういう風なことを描いたのかなとか、結構描いた人の背景っていうか、そこがすごく気になるようになりました。

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Q:皆さんすごかったです。あの〜そうなんですよ。この木で空間が分かれてるってのは、よくこの絵の解説で言われてることなんですよね。左側が現実の世界で、右側が空想・イメージの世界っていうところで、この木によってそれが別れているんじゃないかっていうところで、絵の中に二つの世界があって、それを共存させているというか、同じ中に描いているっているのが特徴の絵です。空間がちょっとおかしくなっているって言うのは、そういう2つの世界の合体からきているのかもしれません。
その事に3人がバトンを渡すように考え方が受け継がれていって、そこにたどり着いて行ったのは、すごく流れとしてよかったんじゃないですかね。女の人たちがメインじゃないかってところと、その間の木が気になるのと、これは世界が違うんじゃないかっていう風に、3人がこのバトンを渡して、絵の構造に気づいていったのがすごいと思いました。

8:「ジャポニスム」解説

Q:ちょっとあの今日は、「ジャポニスム」という日本の影響ということについて、お話したいと思います。

まずこの画像を見てください。今日のゴーギャンのが一番右側にあって、そのルーツとしては浮世絵が一番左にあります。その真ん中にのゴッホの「タンギー爺」さんって絵があるんだけども、見たことありますか?

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この絵も、実はよく見ると日本要素が入ってるのわかるかな・・分かるよね?これ浮世絵ですね、後ろの背景に壁に張ってあるの。

浮世絵と言うとね、これは江戸時代に生まれた版画ですね。1さんとか小学校でやったことありますかね?木を彫って、スタンプみたいにして行く・・これだけ色があるのはいっぱい版を作って、何回も重ねてスタンプしていくと・・それが綺麗にこんな風になるというものですね。風景画であったりとか、あとはこの一番右側みたいな歌舞伎の役者さん絵とかがありますね。今ならアイドルとかのポスターみたいな感じですかね?

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値段もすごく安かったらしくて、その頃のおそば一杯分とかって言われてたらしいので、今で言えば500円〜1,000円ぐらいのイメージだと思います。

この浮世絵が、ちょっとずつヨーロッパの方に入っていって、「めっちゃかっこいい!」ってなって、「タンギー爺さん」に描かれているように、部屋の壁に貼ったりして飾り立てるっていうのが流行ったりしました。

はいじゃあその流れを・・ここからちょっと歴史の勉強になっちゃいますけども・・はい時代は今から200年前のヨーロッパ中心の話です。イギリスって分かるかな?この国から話を始めます。

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イギリスは・・今もそうですが、紅茶が大好きです。なので当時中国から紅茶の葉を輸入しまくっていました。どうしてイギリスにそんなに紅茶が必要だったかと言うと、イギリスのお水ってな飲めないんですね、水道水。だから代わりにビールとかをめっちゃ飲んでました。水代わりに。

でもそれだと仕事できないじゃないですか酔っぱらっちゃって・・紅茶ならお茶を沸かして入れたらまず美味しく飲めるし、頭はシャキッとするし、砂糖を入れたら元気もでるし・・ってことで、特にその時代は産業革命が起こって、工場がいっぱい建った時代で、みんながそこでバリバリに働きだした頃で、その働く人の飲み物として紅茶が必要だったんです。

で、中国には良い紅茶の葉があるってことで、紅茶葉をめちゃくちゃ買いまくってたんですね。それと一緒に中国の文化も入ってきて、中国文化ブームがまず起こりました。工芸品、美術品も入ってきて、中国の文化すごい!かっこいい!見たことない!いいね!ってなってました。

ただ、当時イギリスはこの紅茶を買うのに銀で払ってたんですね。今は100円が何ドルって、お金を同じ価値で世界中で交換できることができるんですけど、当時はそういうシステムはまだなかったので、物々交換だったんです。それで銀で支払っていた。

ただ、これマズいのは、銀って山から取ってくわけだから限りがある。取り尽くしちゃうとそれ以上銀ってすぐ生まれてこない。だけど、お茶は植物だから栽培すればいくらでもできるわけ。だからこの取引を続けてくと、イギリスからどんどん銀が失われていって、どんどん貧乏になっちゃうんだよね。これをどうにかしないとなって、イギリスはこんなことをします・・

インドという国があります。知ってますか?インドは綿が取れるので、織物の材料になる綿をイギリスに輸入して、それを工場で加工してインドに綿布として売ります。

で、さらにインドはアヘンという麻薬がたくさん取れました。アヘン・・これは麻薬で良くないもので、体に入れすぎると死んでしまったり、中毒になってしまう危険なものです。けれども、当時はタバコやお酒みたいなものとして楽しんでる人が世界中にいて、今のように厳しく取り締まられていなかったようで、イギリスはこのアヘンをインドから中国にこっそり輸入させます。で、その代わりに中国から紅茶を輸入するようにして、自分の国の銀を使わずに紅茶をたくさん手に入れることに成功します。

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図のように三角の関係で行う貿易なので、これを「三角貿易」といいます。
その結果、中国では麻薬の中毒になって死んじゃう人がいっぱい出てきたり、あと単純に中国自身の手で麻薬は管理したかったっていう中国側の理由もあったりして、イギリスと中国で「アヘン戦争」という戦争が起きてしまいます。で、中国はイギリスに負けちゃいます。イギリスはやっぱり当時工場もたくさんあって、兵器も最先端の物が作れたので、ボッコボコに中国をやっつけてしまいました。

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そうすると、今まで中国の文化をいっぱい輸入してた他のヨーロッパの国も、戦争状態だから中国から工芸品や美術品をこれ以上輸入できないなっていう状況になっちゃうんですね。そんなところで目を付けられたのが日本でした。中国がブームになってる時とかにも、なんか隣にも似たような小さい島国があって、そこも結構いい陶磁器とか、おもしろい文化があるよっていうので、その前からちょこちょこ日本のものはヨーロッパに入ってきてたんですね。

で、中国からの輸入ができないから、日本を中国の代わりにしようかなっていう気分がどんどんヨーロッパの中で高まってきます。ただ、その頃日本は江戸時代で「鎖国」と言って、国を閉じて、他の国と貿易をしませんっていう状態でした。

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江戸時代は徳川家康さんとかね、徳川一族が日本をやっと治めた時代なので、それまで日本は戦国時代の信長とか秀吉がみんな戦争しまくってた中を、やっとひとつに収めたんですよ。だからここにまた海外のキリスト教とか他の考え方が入ってくと、また反抗する人だ出てきて面倒臭くなるって言うのがわかっていたので、もう入れないということで国を閉じていました。

ただ、さすがに全部入れないと世界に置いてかれるので、長崎の出島など限られた場所で、オランダとか限られた国とだけ、少し貿易を行っていました。そんな感じで、ちょっとずつは日本の浮世絵とかいろんなものがヨーロッパに入って、徐々にブームになり始めそうな感じでした。中国の代わりの日本もなかなかいいじゃんってなってたんですが、その流れがさらに大きくなったのがペリーの黒船来航です。

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知ってるかな?ペリーという人が黒船という戦う大きな船に乗って日本にやってきました。そして日本を開けなさい!世界と貿易を始めなさい!って言ってきました。日本は驚いちゃって、もうこのまま国を閉じておくことはできないということで、国を開けることにしました。そして、いろんな国との貿易を始めます。ヨーロッパだけじゃなくてアメリカとも始めます。

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ということで、ここで一気に日本の物がヨーロッパに入ってきます。陶磁器とか、漆器とか、浮世絵、それから屏風、あと扇子と団扇とか。扇子や団扇は安いし小さいので、もうものすごい大量に輸入されて、開店記念のおまけとかでたくさん配られたりしたみたいです。

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さらに、「万国博覧会」って言うイベントがあって、ヨーロッパ(アメリカも)では、世界中の物を集めて展覧会しますよ、世界にはこんな素晴らしいものがいっぱいありますよって展覧会が定期的に開かれてたんですが、ここでも日本のものがたくさん展示されて大人気になりました。(ただ、当時その様子を見た日本のお侍さんは、ガラクタばかりで恥ずかしいって思ってたそうです。)

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その人気の結果、フランスを中心に空前の日本ブームが起こります。もうみんな着物着てコスプレしたり、とか「タンギー爺さん」みたいに浮世絵を壁に貼りまくったりとかして、とにかく日本のものを部屋の中に飾るのがイケてるみたいな、そんなブームがフランスを中心に起こって、いろんなヨーロッパの他の国にも広がっていきます。

そんな中で生まれたのが、この「ジャポネズリー」という、「ジャポニスム」の一個前の動向です。とにかく日本の物を詰め込んだ画面を作った、一目見て分かりやすく日本の物があるのが「ジャポネズリー」です。

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「タンギー爺さん」にも、これでもかっていうくらい、壁に浮世絵が貼ってあるし、こちらはモネさんの「ラ・ジャポネーズ」って作品なんですけど、これも分かりますか?後ろの壁に貼ってある団扇・・床にも散らしてありますね。で、扇子を持って、着物を着て、髪の毛を結ってるのかもしれません。右はマネさんのエミール・ゾラって人を描いた絵なんですけど、これもよーく見ると後ろにちょっと浮世絵が飾ってあったりとか、左側の屏風の端っこが描いてあったりします。こんな風に、ほらこれが日本ですよ!って分かりやすく表すのが「ジャポネズリー」です。「日本風」「日本趣味」とも言って、日本リスペクト!というよりは、珍しいもの見たさで、ただただ日本を取り入れているだけとも言われています。


ただ、そこから、やっぱりこれはちゃんと日本の事を勉強した方がいいんじゃないかっていう意見も出てきます。日本のものを飾って喜んでるだけじゃなくて、何が自分たちと違うのかを学ぼう!っていうので、日本の絵を真似する人たちが出てきます。

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一番左が北斎の波の絵ですけど、真ん中はドビュッシーという作曲家の人が「海」っていう曲を作った時の譜面、楽譜の表紙に描かれた絵です。そっくりですよね。右はクローデルっていう作家さんが作った立体作品ですが、これも北斎の波と似てますね。

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あと、一番有名なのはゴッホのこの絵ですね。もうそっくりに描きました。ゴッホは漢字とか足してますけどね。よく見るとそっくりではあるんですが、ゴッホっぽいタッチが模写には見えますよね。描きながら、自分だったらこうするんだけどなーとかと思ったのかもしれませんね。

こんな風に、日本のことを真似しながら学ぶっていうことをやり始めた人たちがいました。そんな中でできたのが、今日紹介する「ジャポニスム」です。

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これは「ジャポネズリー」から発展した運動で、だからもうパッと見は日本の影響が作品からわかんない。「説教の後の幻影」だって、最初見た時に日本の関わりを感じる人っているのは、ほとんどいないでしょうね。

日本のことを学んで、良いところを自分たちの表現と合体させて、混ぜちゃってるからね。「ジャポネズリー」はパッと見て日本のものがわかりやすくあるけど、「ジャポニスム」っていうのは、もう一眼見ただけではその影響はなかなかわからない。という特徴があります。

じゃあ、「ジャポニスム」の作家たちは、日本のどんなところを真似したのか。それをざっと紹介しますね。日本美術の特徴ってのは、まず大胆な構図と色使い。これはまあこの赤富士とかの話でしましたよね。こっちにちょっと西洋の代表作ということでミレーの「落穂拾い」を見せてますけど、やっぱり枠の中に収まるっていうのが大事だし、あと色使いも「こういう風景あるよね」っていうのを大事にしてるので、浮世絵みたいな特徴的な赤とか青とかは使ってないです。

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影や奥行きがないってのも日本の特徴で、「説教の後の幻影」も地面が赤一色だし、影がないですよね。本当はたぶんヤコブや天使の下に影ができてもいいはずなのに、ないから空間がよりぺったんこに見えます。

あと輪郭線があるというのも日本の特徴です。アニメみたいな感じで、浮世絵を拡大すると輪郭線があって線で区切られて描いてある。これが日本の普通の描き方だったんだけど、西洋ではそういうのはおかしいんですよ。なんでかって言うと、輪郭線なんて現実にはないから。僕らの身体とかに書いてあったら大変じゃん。

本当に線が書いてるわけじゃなくて、ものが盛り上がったりへこんだり、その境目が線みたいに見えてるだけで、本当に線はないよね、線なんかで区切って描いちゃリアルにならないよね。っていうのが西洋の考え方なので、「落穂拾い」を拡大しても基本的に線は描いてないです。でも、「説教の後の幻影」は拡大すると、いっぱい黒い線で輪郭線がバチバチに入ってますね。こういうのは元々ステンドグラスとかからヒントを得たっていうのもあるんですけど、日本の影響だと言われています。

後は、西洋の絵は人間中心なんですね。人間がまずいるってのが基本なんだけど、日本は人間が画面にいなかったり、すごく小さく描かれてるのがたくさんある。この梅の木の絵もね、実は奥の方で見てる人間がちょこちょこっているんですけど・・分かるかな?


でも西洋では、まず人間がいて、その人が何考えてるんだろうかとか、どういうシーンなのかなっていうのが大事なんだけども、日本は自然とか虫とか・・「花鳥風月」って言うけど、鳥とか動物とかがメインで描かれて、人間がいない表現っていっぱいあるんだよね。

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今日は「亀戸梅屋敷」を例に出しましたが、この梅の木の切り取り方が特徴的ですよね。全部画面に入れないで、こんなに大胆に切り取っちゃう。この影響は大きかったらしくて、今日のゴーギャンもそうですし、ゴッホの「種まく人」という絵でも、ゴーギャンのとそっくりな木の切り取り方をしています。あと、モネのオルセー美術館にある「水蓮」の朝の絵なんですけど、これもただ黒い帯みたいな感じで、ざっくり大胆に木が切り取ってあって、影響があったんじゃないかって言われています。

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じゃあ最後にまとめです。まずは浮世絵をはじめとした様々な日本文化がヨーロッパに入ってきて、日本ブームが起きました。そこで、とにかく絵の中に日本の物を入れましょうという風に「ジャポネズリー」「日本風」ってのが生まれてきました。でもそれだけじゃまだまだ足りないだろっていうので、日本のことを真似したり、勉強したりして、どうやったら自分たちがやってきたものと、日本の良いところを混ぜてもっと良いもの作れるだろうか?って生まれたのが「ジャポニスム」「日本主義」です。

よく「タンギー爺さん」や「ラ・ジャポネーズ」が「ジャポニスム」の作品と紹介されたりしますが、多分それは絵のぱっと見ですごく日本の影響が分かりやすいからであって、細かいことを言えば、それらはどっちかっていうと「ジャポネズリー」って感じだねって言われたりもします。

ただ、この「ジャポネズリー」「ジャポニスム」の違いってはっきり別れているわけでもないので、「ジャポネズリー」の中に「ジャポニスム」を含んでいる部分もあって、違いは曖昧なところもあるんですが、まぁ一応こういう区分けがあるということで知っておいてももらえばと思います。

以上



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