地震地すべりかどうかを見抜くには?:巨大地すべり×ダム=大惨事?!:仙台市泉区七北田ダム周辺地域part2【御当地ハザードマップvol.1】
前回は宮城県仙台市の七北田ダムに面している地すべりを見ました。
この地すべり、地震地すべりの荒砥沢地すべりと形状が似ていますが、果たして??
地震地すべりの特徴
いくつか文献(木下ほか2010、阿部ほか2011)を読んでみたのですが、まず地すべりという用語の定義が曖昧なため、多種多様な"山崩れ現象"を地震地すべりとして扱っていました。
ですので「これが地震地すべりの特徴だ!」とは一概には言えなそうです。
斜面災害対策の技術が進歩した近年で、リアルタイムで「地震地すべり」が認識されたのは新潟県中越地震(2004年:平成16年)や岩手・宮城内陸地震(2008年:平成20年)からです。
まだまだ研究の歴史が浅いということで、定義が曖昧なのは仕方ないのかもしれません。
ちなみに文献(阿部ほか2011)では過去の地震地すべり事例も検討して荒砥沢地すべりのような地震地すべりを「岩盤並進すべり」というタイプに区分しています。
つまり荒砥沢地すべりは、地震地すべりのいくつかあるタイプのうちの1タイプの典型事例とも言えますね。
と、言うことで、ここでは七北田ダム地すべり(筆者が勝手に命名)の地形が荒砥沢地すべりに似ていることから、まず荒砥沢地すべりの特徴を参考にして考えてみます。
荒砥沢地すべりとの比較①:平面形状
荒砥沢地すべりの平面的な特徴を見てみましょう。
これが荒砥沢地すべりです(図の左が北方向)。
点線で囲ったように、もともと尾根だった部分が地すべりで動き、離れ小島のようになっています。
左の方の2か所では細長い分離小丘状(専門用語でリッジと言われる)で、右の方にはある程度の塊で動いている区域があります。
そして、それらの間の区域は低く、陥没状の地形です。
これが七北田ダム地すべり。
同じように、細長い離れ小島のような尾根が4か所に見られ、間は低くなっていますね。
これ・・少なくとも私の目には「スゴイ似てる」と見えます。
そして大きさと言う点で考えると恐ろしいのですが・・。
〇荒砥沢地すべり
・斜面の長さ:約1.5km
・幅:約1km
〇七北田ダム地すべり
・斜面の長さ:2km超
・幅:約1.5km超
七北田ダム地すべりの方が、1まわり・・イヤ、2まわりくらい大きい。
荒砥沢地すべりは、現在リアルタイムで確認された地震地すべりの中で日本最大と言われています。
その荒砥沢地すべりよりも大きいとなると、けっこう怖いですね・・。
荒砥沢地すべりとの比較②:断面形状
私が思う荒砥沢地すべりの一番の特徴は、すべり面(地すべりの底面)がほぼ水平なことです。
日常生活から想像してみましょう。
人間が住む家の床は「水平」ですよね。その床の上に置いてあるテーブルや椅子が勝手に動くことは、まずないですよね(ある!と言う人は、どこかに相談に行きましょう笑)。
地すべりも同じです。
すべり面とは、言わば地すべりにとっての床みたいなもの。
水平なら、普通は動きません。
でもテーブル、大地震の時には動きます。
荒砥沢地すべりも、同じです。
床(すべり面)がほぼ水平だったので、普段は動きません。でも直下型の巨大地震が起こったので、動きました。
すごいですね。
大きい地すべりなので、西からA・B・C・D・Eと5つの測線(調査の基準になる線)で断面図がつくられています。
それぞれ赤線が引いてありますよね。これがすべり面です。
この底面はほぼ水平ですよね。
こんなのが300mも動いたとは、にわかには信じられません。
でも、ボーリング調査(地中を掘る調査)もして確認されているので間違いないでしょう。
う~ん・・。長くなってしまいました。
次回へ続きます!
お読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
木下篤彦・山口真司・平野吉彦・藤ノ木幸夫・村田宏治・吉松弘行(2010)地震で発生した「崩壊性地すべり」の地形・地質的特徴に関する考察.日本地すべり学会誌,Vol.47, No.1, pp.34-41.
阿部真郎・林 一成(2011)近年の大規模地震に伴う地震地すべりの運動形態と地形・地質的発生の場.日本地すべり学会誌,Vol.48, No.1, pp.52-61.
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