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地すべりをもっと詳しく!【災害から身を守るvol.7】

※まず冒頭で令和2年7月豪雨に被災して亡くなられた方々に心より御冥福をお祈りするとともに、被災した全ての方々にお見舞い申し上げます。

今回は地すべりについて少し深掘りします。
地すべりは、色々な意味でキングオブ・土砂災害なんですよ!

※トップ画像は奈良県の亀の瀬地すべり:国交省より

地すべりは土砂災害の親玉?!

そうなんです。親玉なんですよ。
ザックリ解説では「動きが遅い」と言いましたよね。
年間数cm動いてれば、速い方です。
もちろん、年間1mとか動く地すべりもありますが、それでも、人間が体感できる速度ではないので、あまりピンと来ないかもしれません。

でも地すべりの場合は、広い範囲で、何年もかけて着実に動くというのが恐ろしいことなのです。
例え年間数cm、数mmレベルでも家などの建物は着実に歪み、ヒビが入って行きます。
そして同様に、岩盤もジワジワと歪み、ヒビが入り脆くなっていきます。

地すべり図_福岡県県土整備部砂防課

地すべりの模式図:福岡県ホームページより

地すべりでは色々なことが起こる

上のイラストのように、地すべりはある一定以上の広さで動きます。
何年、何十年、何百年、何千年もかけてジワジワ動くうちに地盤がボロボロになり、ある時急にドンドン動き始めると恐ろしいです。

そして上のイラストのように、上の方(頭部)では崖ができ、そこががけ崩れを起こす場合があります。
また先端部分では川を堰き止め、それが原因で土石流になったりします。
つまり、地すべりがおおもとの原因になり、落石・がけ崩れ・崩壊や土石流が起こる場合があります。

落石やがけ崩れが起きて調査してみたら、実は背後に大きな地すべりが隠れていたという事例は良くあります。

地すべり地形とは??

何百年も何千年もジワジワ動き続ける地すべりですから、その痕跡を着実に大地に刻み込みます。そうして出来るのが地すべり地形です。
これを判別できれば、事前に危ない地形をチェックできます。
では地すべり地形とは、どんなカタチ??

地すべり地形_佐藤2017

地すべり地形:佐藤(2017)より

こんな感じのカタチです。
上の方はができます。つまり急斜面ですね。丸っぽい、馬蹄形地形と呼ばれるU字型の急斜面(上から見て)ができます。
そして崖の下の部分は、割とゆるやかな斜面になります。
場合によっては、ここは陥没帯とよばれる凹地形の場合もあります。
そしてここには水が溜まりやすく、湿地帯だったりします。

ちなみに底面には「すべり面」と書いてありますが、この面はツルツルの粘土でできています。だから地すべりは滑るんですね。
で、先端部分は、地すべりではない場所に進んでいくので、普通の地面に乗り上げます。
普通の地面には粘土はないので進みにくくなる。でも後ろから地すべりが押してくる。だから盛り上がります。

以上が、地すべり地形の特徴です。

地震でも地すべりは動く!!

さっきまで話していたのは大雨雪解け水など、地下水が悪影響を及ぼして動く地すべりでした。
でも地震でも大きな地すべりが動くことが分かってきました。
中越地震岩手宮城内陸地震で大きな地すべりが起こったのです!

荒砥沢_国交省

荒砥沢地すべり:国土交通省より

地下水の影響で動く地すべりは、すべり面の角度はゆるくても5度とか、角度があります。
でも地震地すべりの場合は、巨大地震による振動の力により、何と角度がなく、水平でも動くことが分かりました。

これまでハッキリした地すべり地形なのに、全く動いていない
しかも地質調査から予想されるすべり面が水平に近いという謎の地すべり地形があったのですが、それは直下型の巨大地震で動く地震地すべりだったということです。

荒砥沢末端写真_林野庁

荒砥沢地すべりの動きで大きく変形・破損した道路:林野庁より

加えて、地震地すべりも地震によるがけ崩れ・崩壊と同じように、動きはあっという間です。普通の地すべりよりも動きは断然速いです。
ただ地震地すべりの場合、地形で見抜くことができます。
地震地すべりだと疑われる場所の近くを避けて、家やその他の施設を建てることになると思います。


以上、地すべりについて少し深掘りしてお話ししました。
土石流にせよ、がけ崩れにせよ、地すべりにせよ、色々なパターンがあり、少し説明したとしても、なかなかピンと来ないと思います。
これからは、たまに実例をお示ししたいと思いますので、少しでも、皆さんの土砂災害への理解が深まれば嬉しいです。

お読みいただきありがとうございました。

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