盆地のようで盆地じゃない?:岩手県南東部中山間地域【都道府県シリーズvol.8岩手県part1】
岩手県のプロローグでは、地形的な特徴をもとに29か所に区分しました(私個人の見解です)。
今回は岩手県南東部の中山間地域についてお話ししていきたいと思います!
下図の「28」になります。
気になる長丸地形
地形区分をするために地形図とにらめっこするうちに、どうにも気になる地域がありました。場所は岩手県南の一関市東部地域。
こんな感じの南北に細長い長丸の地域です。
地形だけにして見てみましょう。
どうですか?上の図と比べてみて下さい。
もう少しアップにしました。
コレです。
赤点線沿いに尾根が連なっていて、その内側の区域が低くなっています。
でも全体的に平坦な地形と言う訳ではなく、ですので〇〇盆地とは呼ばれていません。
まさに盆地のようで盆地じゃない・・という地域です。
あ、こんな感じの場所、他でも見ましたよね?
これはもしかして、カルデラじゃないですかね?(※カルデラ関係の記事)
地質図を見る
そうそう、こういう気になる地形は、たいがい地質が関係してますからね。
なんと赤点線で囲った区域と地質図のピンク色が綺麗に一致しました。
このピンク色の地質は中生代白亜紀中期(約1億2500万年前~1億50万年前)のトーナル岩です。(※年代は産業総合研究所:シームレス地質図V2から参照)
トーナル岩はかなり専門的ですので、ザックリですが「花崗岩や閃緑岩みたいなもの」と考えていただければ良いと思います。
つまりマグマの成分が中間~ドロドロのマグマが地下深部でゆっくり冷えて固まった岩石です。
また真ん中より少し東寄りに見える赤っぽい地質は、トーナル岩より少し新しい時代のひん岩です。
また新しい名前ですね・・。
ひん岩とは半深成岩と呼ばれ、陸上ではないけど、深成岩よりは浅い場所で、マグマが「まぁまぁゆっくり目」に冷えて固まった岩石です。
マグマの成分は安山岩と同じで中性。
つまり、マグマの冷え方の速度が、安山岩と閃緑岩の中間ということです。
薄黄色は新第三紀中新世(約700万年~500万年前)に堆積した礫岩、砂岩、凝灰岩などです。
盆地のようになった理由
この地域の南半分が入っている5万分の1地質図幅「千厩(せんまや)」の解説書を読んでみました。
すると地形についても触れてあり、「なるほど!」と思いました。
トーナル岩(花崗岩の仲間)は深成岩であり、もともとあった古い地質の中に後から入ってきたマグマです。
ですので周囲の地層は焼かれて変成し、硬い岩石になりました。
陶器はもともと粘土ですが、焼いて硬くなりますよね。あれと同じようなものです。
そして以前、花崗岩はもともと硬い岩石ですが、地上に出たあとは風化が進むスピードがはやいと、以前お話ししましたね。
つまり、マグマに焼かれて硬くなった周囲の岩石は浸食に強いので山として残り、逆に焼いた張本人(トーナル岩)は風化で脆くなり、浸食されて低くなった。ということのようです。
確かに、この地域の地形を詳しく見てみると、鳥取県南東部の花崗岩地帯のように、起伏の少ない山地が続いています。
それについては、次回以降で詳しくお話ししましょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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参考文献
竹内 誠・鹿野和彦・御子柴(氏家)真澄・中川 充・駒澤正夫(2005)20 万分の 1 地質図幅「一関」、産総研地質調査総合センター.
竹内 誠・御子柴(氏家)真澄(2002)千厩地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)産総研地質調査総合センター,76p.
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